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【短編選集】‡3 電脳病毒 #124_303

「わたしの家、その路線です」劉は辿々しく言う。
「そうか・・・。家賃安いからな。でも、地盤は湾岸より少しは安全だ」
「安全?」
「外国の人だよね」老人は話を繋ぐ。
「ええ」
「どの国の出なのか。誰も問いはしない。ここはそんな街だ」
「そう、誰も無関心です」
「教えてくれる奴がいないなら、ひとつ言っておく。水道払わないと、すぐ止められる。独立してから、水道代が相当上がった」
「なぜ?」
「都市計画の甘さだ。熟して腐りかけた街に、大挙して隣国人が押し寄せてきた。どういう問題が生じるか、予想できたはずだが」
「どんな問題です?」
「災害だ。甚大な被害を受ける最悪な場所はどこか?」