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Dead Head #15_112

 俄《にわ》か荷役は一人ずつ船に渡る戸板を踏む。船には、痩せぎすの東南アジア人。浅黒い顔の船員は品定めするように窪んだ目を向ける。男は船倉に空いた降り口を黙って指す。俺達三人はその中へぞろぞろ降りる。
「なんか辛気臭い」と、先に入った禿頭が呟く。
 薄暗い裸電球に照らされ、船倉には積み上げられた木箱の山。その横に別の船員が腕を組んで立っている。男は木箱を指さし、運び出すように手を振る。木箱の側面には特徴的な赤いラベルが貼られている。二頭の獅子が玉を支え、意味不明の簡体字が象られ。
 俺達は一人づつ木箱を担ぐ。右肩にずっしりとした重み。木箱の中身はかわからない。重い粉体を詰め込んだような感覚。とでもいうのか。
 木箱を担ぎ甲板に出る。歩くたびに湾曲する戸板を注意深く渡り、トラックに積み込む。それを飽きるくらい何度も繰り返す。