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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #123_302

 アパートのドアチェーンを、劉は勢いよく蹴破る。慌てた様子もなく、女劉を一瞥する。魔術師のように腕を捲ると、両掌を開く。パントマイムのように、見えない壁を作るように。
「老人を軽んじてはいけない。おまえをすぐに消滅させることも・・・」
「消えて!あなたが」
 駅前。謎のダンスチームが踊っている。人流は減少している。市の独立に伴い、市を通過する交通手段すべてに通行税が課せられた。それを回避すべく、鉄道の南行は鶴見大船間、北行は蒲田大宮間でそれぞれ折り返しとなった。
「南武線とか、支線に棲むのは貧乏人」ダンスを眺めている老人が呟く。