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Dead Head #5_102

 怖くなった。自分もその内、こいつになるのか?
両手を手拭いで丁寧に拭いながら、裏門へ。もう朝七時近い。だが、手配師らしき姿はない。仕事に飢えた浮浪者が集うのみ。今日の仕事は溢れか。
 公園の錆びた鉄柵に座り、路地の向こうを何気なく眺めていた。救急車がサイレンを鳴らし、古びたマンションの前に。煙はなく
、火事ではない。急病人か。
「ちょっと、兄さん」
 こちらの遠目の視線を、その男がいきなり塞ぐ。男は両手をズボンのポケットに突っ込み、薄笑いを浮かべる。粋がってはいるが、使い走りでしかない。
「仕事、やる?」
 黙って頷く。男も頷くと、耳に空けたピアスが揺れる。ズボンから右手を引き抜き、ざらついた中指一本。突き立てたそれは日当なのだ。頷き、鉄柵から腰を浮かせる。