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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #95_286

 劉は咄嗟に思う。新政府の敵対国が、何らかの攻撃を仕掛けたと。劉は立ち上がろうとする。だが、意識を失い崩れ落ちる。

十四 故事《ストーリー》 
 誰かが揺すっている。うつ伏せになった劉の肩を。劉は目を覚ます。目の前に顕示器《ディスプレイ》。虚な目で劉はそれを見る。消えている。あの忌まわしい炎が。顕示器《ディスプレイ》には電子郵件の本文、それと・・・。劉は振り向く。背後の人影を見上げる。
「徐、おまえ!」劉は立ち上がりかけるが、目眩。
「気に入ったか?俺の創った故事《ストーリー》」
「何を言ってる?」
 劉は見回す。研究室はいつもと同じ。学生もいつもの成員だ。火災が発生した様子はない。
「なぜだ?」