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Dead Head #16_113

 作業が一通り終わる。船は岸壁からそっと離れて行く。俺達は乗ってきたバンに引き返す。
「終わったか?」ドアにもたれ、手配師が立っていた。皆、頷く。
「日当だ」手配師はしわくちゃの裸の札を手渡す。「今のは忘れろ。じゃあ、解散」と付け加える。
「解散って?連れ戻してくれるんじゃ?」俺は、わざと気弱そうな声を出してみせる。
「勝手に帰れよ」手配師は意地悪そうに口を歪める。エンジンを掛けると、手配師はバンをバックさせ路地を出ていく。俺達は唖然とそれを眺めている。
「ひでえな。こんな所で夜明かしかよ。やばいやつ、運んでやったのに」禿頭が言う。
「やばいって?」茶髪が言った。
「ヘロインだろう。箱に貼ってあったラベル」
「赤いラベルか?なんて書いてあった?」