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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #100_290

 周りでは怪我を負わなかった者、軽傷者は身繕いを始めている。ここを立ち去るつもりなのだろう。だが、多くの者は傷を負い横たわっている。両者とも、これから遠い道程が続くことだろう。
 焼け残った食糧備蓄倉庫を覗く。当然、中は空になっている。倉庫の外、略奪された食糧が物々交換されている。劉は腕時計を外し、何日分かの食糧と水を手に入れる。立ち去る側になるために。