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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #90_281

 留置所に閉じ込められ数日。灌水で捕まった若者達、一人ずつ連れ出され姿を消す。その後、どうなったか知る由はない。劉と薫陶は、房に残され背中を丸める。
「その二人、出ろ」房の施錠が開き、黒い軍服を着た兵士ががなり立てる。
「お呼びだ」
 劉は薫陶を横目で見る。薫陶は嬉々として立ち上がる。うんざりしていたのだろう。退屈な留置所生活に。
 施錠された扉を、いくつも通り抜ける。長い廊下を歩き、劉と薫陶は施設の外へ。そこには軍用トラックが止まっている。二人は乗るように促され、荷台に乗り拘束具で自由を奪われる。周りを四人の兵士が取り囲む。今回は、逃げられそうもない。劉は覚悟する。
 トラックは走り出す。荷台に俯せになるよう、劉と薫陶は命じられる。逃走を防止するための措置なのだろう。