見出し画像

Dead Head #12_109

 その頃、言葉の意味は知らず。その言葉が何故か引っかかった。DEADHEAD、流転禁止。今では何でもない鉄道用語の一つが。
 擦り減った線路の表面が、一瞬ぎらついた。車輪が軋る金属音。何か挽き潰される鈍い音。見ると、列車はホーム途中で急停車した。
 駆け寄る。ホームの下を見る。赤く染まった砂利。車輪に潰された日傘。車輪の下には捲れた着物の裾。向こうのホーム。こちらを見つめる群衆の目。青いビニールシート。好奇な目が緞帳で遮られる。
 いつの間に寝てしまった。脂汗の嫌な臭い。亀虫を潰したような自分の臭い。それがいつも不愉快。
 植え込みの間を、幾分涼しくなった風が抜けた。夕方近い。立ち上がり、待ち合わせ場所へ。