見出し画像

【短編選集 ‡3】電脳病毒 #120_300

 ポットから茶を注ぐ手が止まる。幼いころ行った黄河の大逆流。その記憶。薫陶は思いだす。川岸に立つ見物人達を大波がなぎ倒し進む。大波はうねりながら上流に駆けのぼる。幼かった薫陶は兄の手をきつく握り締める。足が恐怖で震えている。薫陶を支えていた兄。彼はもういない。以来、大逆流は見ていない。
 学校の昼休み。同級生に引っ張られ、薫陶は運動場へ。自分の番が来たのだ。