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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #88_279

「立て。通信攪乱罪で逮捕する」
 扉から入ってきた黒い軍服姿の男達。薫陶は引き立てられる。鉄扉の下の蘭。鉄扉を背負うように、蘭は両手両足を突き出している。拳銃を掴んだままの蘭の右手。ぴくりとも動かない。
 
 破った窓から、劉は工場の外へ。その瞬間、サーチライトが劉の姿を照らす。
「動くな。通信攪乱罪で逮捕する」
 眩しい。劉は立ち止まり、指の隙間から目を細める。軍用トラックが止まり、黒い軍服の兵士が隊列を整え銃先を向けている。
 留置所の壁を背中に、薫陶は両足を抱え座り込んでいる。周りには捕らえられた数人。重犯罪を犯したという雰囲気ではない。網絡に上網した者達なのか。薫陶と同じように。