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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #91_282

 トラックは走り続ける。何時間も止まることなく。俯せにさせらたまま、車の振動で劉は眠ることもできない。劉は思い起こす。あの電脳電影学院の事件から今までの出来事を。微かな寝息。隣に横たわる薫陶は身じろぎもしない。
 やがて、トラックは止まる。劉と薫陶は荷台から下ろされる。拘束具を付けたまま、その建物へ。簡素な小部屋に連れ込まれる。机と丸椅子だけだ。二人、丸椅子に座るように促される。二人の背後には、兵士が銃を持ち身構える。
 何かを待つ。一時間近く経っただろうか。扉が開き兵士が入ってくる。背後に背広を着た男。
「暫くだな」徐は机を隔て向かい合う。
「謁見か?大臣閣下の」劉は口を歪める。薫陶は無表情に徐を見つめる。
「二人の処遇をどうしようかと。まんざら知らない仲でもない」