Dead Head #32_129
「そうだよ・・・」ヒロシは何か言いかける。
「登録してあった?かあの電話」
「電話なんか・・・。できないよ」
「どうして?」
「聞こえない」ヒロシは片耳を押さえる。
「そうなのか・・・」
札入れをもう一度改める。レシートの束をパラパラやる。つるっとした薄紙が畳まれて挟んである。それを取って拡げる。
「離婚届の切れっぱし?」と呟く。書いた覚えはある。配偶者欄の薄れた文字。かろうじて読める。そこには『幸』という名と、住所の一部。
「名は?かあの」ヒロシに問う。
「さちお」
「ど