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「おかあさんの怒りはひとつ残して僕が食べた。」

寝る前に息子が不思議なことを言った。

「お父さんは100個怒るけどお母さんは1個しか怒らない」


私は何度も何度も怒ってしまっているというのに。

自粛期間の在宅保育。

夫に久しぶりに仕事が入ったこの2週間、私はワンオペで仕事の割合を減らしながら昼間は子供たちを優先して過ごしていた。

それまで、夫の仕事がコロナの影響でなくなったのをいいことに(?)夫に日中の保育を任せきりにして私はこれまで通り自宅で仕事をしていた。

夫は平常通りで、子供たちの喧嘩や、おもちゃを片付けようとしない様子、食事を残す具合に少し怒って聞かせるくらい。

(声の様子から夫のストレスが溜まっているな、という空気が感じられたら仕事を中断して割って入って夫に外出してもらっている。)

別室で仕事をしている私には夫の怒りのほとんどは理不尽ではなく普通の対応の範囲にしか感じられなかった。

それに対して私がひとりで日中の保育を担っている間はひどい。

子供たちがバラバラの意見(お昼ご飯を庭で食べたい、部屋で食べたい等)でそれぞれが「兄と妹どっちの意見をとるかでどちらを可愛がっているかを見極める!」と対決を始めたらもうすぐイライラする。

子供の相手をしながら仕事の対応をしているときに、かまってほしい子供に蹴られたら怒って立ち上がって逃げる。

食事を残して遊びに去る子供たちに悲しんで見せたり。。

散歩に出る前のリュックや帽子の取り合いからの喧嘩で辛くなって「もういやだ〜!」と泣く子供と一緒に座り込んだりする。

全然よい親で居られない。

それなのに息子は

「お父さんは100個怒るけどお母さんは1個しか怒らない」

と不思議なことを言う。

「なんで?お母さんもめっちゃ怒るやん。1個なん?」

と尋ねると

「お父さんが怒るのはこわいねん。」と言う。

「お母さんが怒るんはこわくないん?お母さんも怒ったら怖い声になるやん。」

「うーん、お母さんも怒るけど『怒りたくない』って言ってくれるから。

やから、お母さんが怒ったやつは僕が1つ残して全部食べてん。

だからお母さんも100個あったけど1個になってん。

お父さんは『怒りたくない』って言わへんからお父さんが怒るのは食べられへん。」

と絵本みたいな言葉が返ってきた。

『怒りたくない』は私が子供にも、夫にも怒るたびに使う言葉だ。

「私は楽しく過ごしたい。怒りたくない。でもこんなことをされたらつらくて、それを普通に言っても伝わらないなら、気持ちを伝えるために怒る。」

と辛い内容と共に『怒り』を使った理由を伝える。

本当は怒りたくない。

楽しく過ごしたい。

けれど、つらいことをされたらつらい。

子供たちがバラバラの意見で母の愛情を試そうとするのはつらい。

帽子の取り合いでお散歩に行く気分が台無しになるのがきつい。

せっかく作った食事を気軽に乱暴に残されるのが悲しい。

「ああ!お母さん怒りたくない!いやだ、怒りたくない。いやな気持ちになりたくない。怖い声を出したくない。お願い、もうひとつ別の帽子を出すからその帽子を取り合うのはもうやめて。楽しく散歩に行きたい!怒りたくないよー」

ひとりで子供をみているとすぐ余裕がなくなってしまう。

そして、怒りの化け物に支配されそうになりながら必死で「怒りたくない、楽しく過ごしたい」と悶えて足掻く。


「怒りたくない」

“お母さんが怒ってしまうようなことをしないでほしい。”

自分が未熟でよい親になれないから、よい子であってくれともっと未熟な子供に無理な要求を伝えているだけだ。

本当は、もっと勉強して感情をコントロールして子供との関わりを学んで子供に悪影響のない対応をしなければならないのに。

子供には自由でいてほしいのに。

ありのままを受け入れたいのに。

それが難しくてまだ習得できていないから、せめて頭ごなしに怒鳴りつけることだけを必死で避けている。

それでも、怒ってしまったあとは『さっきは怖い声出してごめん』と謝罪で取り繕おうとする。

怒りの恐怖で子供を言いなりにさせようとだけはしたくない。

「お母さんは『怒りたくない』って言ってくれる。」

私のわがままな要求をそう受け止めてくれるのか。(そう受け止めさせてしまったのか。)

子供は弱者で、世話をする大人がいないと生きていけない。

今は圧倒的にこちらの立場が強いから、幼く弱い子供はまだ抵抗できないだけだ。

子供が大人になったとき、私が与えた理不尽な怒りに絶望して見放されるかもしれない。

私が母に対してそうしたように。

今はまだ飲み込んでくれていても、大きくなって対等な立場になったとき子供にどう思われてしまうのか。

そんなことに怯えながら、ある意味覚悟をしながら、自分の感情と戦っている。

なるべく怒りに左右されず、子供の成長を邪魔しない関わりをしていきたいという気持ちだけを抱えたまま。

「だからお母さんの怒りは僕が1つを残して食べた。」

息子の食べ残した怒りの正体が気になる。

(あと夫に「お父さんは100個怒ってる」って言われてる話もしておこう)



子供との関わり、感情のコントロールの迷走についてはブログでも記事にしています。


夫には「父親の怒りは母親の怒りと種類が違う」って話をしてみたり。

この話をしたおかげか、夫は子供に怒るときは表現や声をかなり気をつけています。(それでも体が大きい男の人が怒るのは怖いわな…)


さらに最近こんな絵本を見つけて、子供たちと「怒った気持ちは自分で追い出すことができる(かもしれない)」と勉強しています。

私は大人になってから知ったけれど「感情はコントロールができるものだ」と子供のうちに知っておくと、きっと良いのだろうなと思ったりしています。

(できるかどうかは別として)

知っておく、ことで私みたいに苦労せずにすむといいなー。。


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