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3月24日

桜が咲いていた。週に1度のペースで選ぶ散歩コースにある池の周りをぐるりと囲むように並ぶ、まだ三分咲きの桜の木々の下で、花見を楽しむ新1年生を連れたグループと中学生、彼らに塾の案内を配る人々と、この冬1番の賑わいを見せていた。かくいう私も犬の散歩とはいえ普通に生活をしてしまっている1人なのだが、コロナ騒ぎなんて嘘みたいだ。桜を見ると心が踊り、暗いニュースも厳しい状況も全て悪い夢のように感じる。
今日は朝から病院に行き薬をもらい、一旦家に帰って犬を連れて散歩がてらホームセンターに行った。電子レンジを見るためだ。今私の家にある電子レンジは前の住民が置いていったもので、特に不都合は無かったので有難く使わせて貰っていたのだが、2週間前、その電子レンジを使ってぼやを起こしてしまった。今の電子レンジは温度調節ができないのだが、オートミールクッキーを作ろうと思いつき適当に加熱していたら煙が上がり警報機が反応してしまった。もちろんクッキーは黒炭に。実家では頻繁にお菓子作りをしていて失敗したことはほとんど無かったのでかなりショックを受けた。
そんなことがあって、それからもまあ普通に加熱する分には使えるのだが、焼け焦げた匂いが染み付いて取れず、またこれは最初からだが本体の損傷も気になってきたので買い換えることにしたのだ。次は安心してお菓子作りをできるものにしようと思う。

アンジェラ・カーターの「血染めの部屋」を読んでいて、主人公が小部屋の鍵を血溜まりに落とすシーンで、「青ひげ」の話と展開が全く同じじゃないか!と思ったら、この短編集は童話を現代風にしたものなんですね。「青ひげ」は「狼と駈ける女たち-「野生の女」元型の神話と物語」の中で紹介されていて読んだくらいだが、カーター版の母親のキャラクターがとても好きだ。アンジェラ・カーターはフェミニストとしても知られているが、約2年間の日本滞在時にフェミニストとして目覚めたらしい。彼女が日本に滞在したのは1969年からの2年間らしいが、日本では「本当の女性性の表現が否認され、女性は一般に、奴隷か玩具になるかを選ぶしかない。この直観的な啓示のあとしばらくしてから、私は闘いの前線にいたのである」と「哀れな蝶」で語っている。いささか激しい表現に見えるかもしれないが、この実態は今なお完全に否定できるものではないと思う。

そういえば無料ブックで宮沢賢治の「フランドン農学校の豚」を読んだのだが、読みやすいし面白くて驚いた。というのも、私は高校時代いわゆる文豪と呼ばれる小説家の作品を読むのが好きで、片っ端から読んでいたのだが宮沢賢治はどうにも苦手で、教科書に載っている部分しか読み切ったことは無かったのだ。「銀河鉄道の夜」も何度かトライしてみたのだが、どうにも文章のリズムが掴めなくて途中で挫折した記憶がある。「やまなし」の不思議な雰囲気も相まって独特な作家という印象でここ数年は遠ざけていた。ところがどっこい、この「フランドン農学校の豚」、内容は皮肉たっぷりで物悲しくも面白い上に、文章は声に出したくなるほどリズムがいい。一文を抜き出すと、「それは脂肪のためだろう、けれど豚にも骨はある。それから肉もあるんだから、たぶん比重は一ぐらいだ。」という具合に会話が進む。これは面白いとほかの作品も見てみることにする。読みたい本がどんどん増えていく。早く市立図書館が再開するといいのだが。

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