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頑張れ、オータニさん!


オータニさんと言っても、あの本場メジャーのファンを

OH!OTANISAN!!!

と震撼させている2刀流のオータニショ-ヘイのことではありません。

ましてや僕の会社のパイセンで、大谷翔平とは単に名字が同じだけなのに、彼の活躍をまるで自分の手柄のように誇っている50代ミドルのオータニさんのことでもありません。

僕が今、声援を送っているは東京のど真ん中、紀尾井町の約2万坪の敷地に建つホテルニュー「オータニさん」のことです。


そのオータニさんが今、苦しんでいます。

本人から聞いたわけではありませんが、きっと苦しんでいるはずです。

だって彼のこんな姿を僕は毎日のように目にしているからです。

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これはとある金曜日、午後6時のホテルニューオータニ ガーデンタワー。

客室の明かりがほとんどありません。

僕は通勤途中に散策しながらよくこの前を通るのですが、客室数1479、日本有数の規模を誇るオータニさんが、しばらく前からずっとこんな状況に置かれています。

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もちろんその原因は新型コロナウィルスによる緊急事態宣言。ビジネス客も観光客もインバウンド客もすべて利用者が激減しているのでしょう。


僕は会社に入ったころ、オータニさんと一緒に仕事をしていました。

入って2年目の頃から僕がやっていたイベントは毎年1000人以上のお客さんが会議、宴会、宿泊を行う、というもので当時の東京にはその規模のお客さんがいっぺんに収容できるホテルが数えるほどしかなかったのです。

まだ若くて生意気だった僕を、オータニさんのセールスマンはちゃんと一人前に扱ってくれました。僕はその頃、いくつかのホテルで同じような仕事をし、若さゆえか他のホテルのセールスマンからは最初、値踏みするような態度を取られたりしましたが、オータニさんは誰もがみなジェントルでした。

東京の老舗ホテル御三家と言われた残りの2つ、帝国ホテル、ホテルオークラとも仕事をしましたが、オータニさんが一番心地よく仕事ができました。黙っていても満室になりそうな日でも、毎年必ず利用してくれるお客様だから、と言ってオータニさんは500室以上の客室を快く提供してくれました。

1000人以上が同時に正餐でディナーをとれるメインバンケット「鶴」、10でも20でも分科会ができる会議室、重厚なザ・メインの客室とカジュアルなガーデンタワーの客室。約1万坪の日本庭園を眺めながらお茶ができるガーデンラウンジ、館内に数えきれないくらいあるレストラン。

仕事での想い出もたくさんあるのですが、プライベートでもときどき泊まったり、スイートルームを借りて会社の同期のメンバーでパジャマパーティーをしたり、いろんな思い出が詰まっています(写真はイメージです)。

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最近は仕事で来ることはめったにありませんが、通勤途中に庭園を散歩したり、クリスマスの時期はイルミネーションを、春は桜をと、オータニさんは今でも僕の身近な存在です。

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そのオータニさんが苦しんでいます。正直言って、この状況で1479の客室と39軒のレストラン、30以上の宴会場を維持するのは想像を絶するほど大変なことだと思います。

もちろん苦しんでいるのはオータニさんだけではありません。今や日本中のほとんどのホテル・旅館、そして観光施設、その周辺業界はみなかつてない苦境に陥っています。

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オータニさんの誇る1479の客室に明かりが灯らない夜、僕はそれを見上げて思います。

頑張れ、オータニさん!そして頑張れ、日本の観光業!と。

新型コロナウィルスが終息し、誰もが自由に移動できる日がいつ来るかはまだわかりません。緊急事態宣言で不要不急の移動が制限されている限り、この状況は大きくは好転しないでしょう。

でも明けない夜はない。僕はこのオータニさんのすべての窓が明るく灯り、その中で人々が笑顔で過ごす姿を想像するのです。

自由が戻れば、みんな死ぬほど旅をするはずです。僕だって死ぬほど旅したい。会えなかった人と死ぬほど会いたい。

そしてもちろんオータニさんのところにもたくさん行きたい。客室もずいぶん新しくなったので「エグゼクティブハウス 禅」にも泊まってみたいし、ガーデンラウンジのアフタヌーンティーもいい。誰かが僕に会いに東京に来てくれるなら、喜んでオータニさんのお部屋を用意します。

でもあんまり満室になりすぎちゃって泊まれないのも困るから、そのときは昔のなじみで僕のぶん1室くらい開けておいてね、オータニさん!

<了>



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