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祝宴


大きな扉が軽やかに開く。

瞬間網膜に映り込んだのは

緊張と決意に満ちた若きオベロンと

歓喜に満ちた涙を浮かべる若きティターニア

何処までも続く透き通るような青い空に

色を添えるのは薄緑のドレスと黄金色の髪

無骨に見える焦茶のタキシードは

大樹のようにどっしりと立つ

今日は祝宴。契り誓う日


街中に佇む小さなチャペル

そこに集まった多くの天使達は

今か、今かと二人の降臨を静かに待つ

そしてかの二人の姿が衆目の前に現れた時

一斉に祝福の声が上がった

今日は祝宴。喜びの日

そうして宴は幕を開けた

色とりどりのドリンクと共に

手元に出されたるは豊かな料理

ささやかであるが極上のそれは

真心と共に舌の上で溶けて消えた

今日は祝宴。味わいの日

この祝宴に至るまでの道は

決して楽な道ではなかっただろう

果たされなかった約束や願いは

一つや二つどころではないだろう

だからこそ今日流される涙は

静かに、そして確実に心に染みるだろう

今日は祝宴。ねぎらいの日

幾時代も、いつの時代も

変わり映えのない、かけがえのない日々

交わらなかった二人の生が

今日、一本の糸となった

この先の未来や将来がどうなるか

それは誰にもわからないが

今日は、今日だけは

全てを忘れて幸せに浸ろう

今日は祝宴。報われる日

空にチャペルの鐘が響く

二人の若き妖精を祝福するように

天使の手から放たれた風船が

二人の行く先を示すように飛んでいく


今日は祝宴。幸せになる日


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