第88回フィルムさんぽ(初心者回)に参加してきた件
結構久しぶりのフィルムさんぽ記事である。
先日の募集で、
「基礎からやる初心者向けの回をやります」
という告知があり、まあ言ってしまうと初心者向けの回に私が参加して枠を使うのもどうかなあ、と思い特段参加表明することはなかった。
ところがどうも詳細を確認すると、セコニックさんから露出計を借りて、講評というよりも露出や構図の解説を1から行ってくれる勉強回に近い企画とのことであった。
実は私。勿論フィルムさんぽで色々教えて貰っては来たが、露出や構図に関しては殆ど自己流でなんとなく流れで撮影しているだけである。
特に明暗差を活かした撮影というものが不得手だ。スポット測光出来る器具や露出計を持っていない為、余程強い明暗差のある環境でないと狙って明暗撮影をすることが出来ない。
折角の機会であるし、基礎から一度教えて貰おう、と思い無理を言って参加した形である。
さて、先述のとおり私はスポット測光を出来る機械を持っていな「かった」。過去形である。
先日(ルメールとレーンと武史に買ってもらった)CONTAX AXというカメラがある。
普段は競馬用に使っているこのカメラはフィルムカメラ時代の末期に作られたカメラのため、まあ色々な機能が付いている。当然スポット測光も可能だ。
インナーボディ側によるAF機能持ちなので物理的に取り付けられさえすれば、M42その他の古い世代のマニュアルレンズでもオートフォーカスで使える。これも面白い。
明暗差の勉強をするため、晴れならイルフォードのXP2を、曇りならメトロポリスを使う予定であったが、この時期の快晴だとISO400辺りの高感度フィルムを扱うにはシャッタースピードにも余裕が必要だ。
これら全ての条件を備えているAXを選んだ。珍しく電池で動くハイテクカメラの持ち込みだ。普段はソ連とか東ドイツとかの古いマニュアルカメラばかり使っている。
そして、さんぽ当日。
私はAXにM42マウントアダプターとM37リングを併用してアサヒフレックス用のレンズでオートフォーカスという訳の判らないことをすることにした。
一応、測光方式をスポット測光にし、使いたい絞りまで絞り込んでからAEロックモードにする。
その後絞りを開いてAFを合わせた上でプリセット絞りを合わせて絞ってシャッター、という手順で問題なく明暗差撮影が可能である。
文章にするとややこしく感じるが、プリセット絞りのレンズだしシャッタースピードにかなり余裕がある(最速1/6000)ので、絞ってー、露出ロックしてー、絞り開いてー、AFしてー、絞ってシャッター、という意外と簡単な流れで撮影が出来る。
天気も見事晴れてくれた上に湿度が低く日陰に入るとかなり涼しい、という理想的な環境であったため、イルフォードのXP2をセットした。
さて、さんぽ開始数分。まずは教材として使うハイライトとシャドウにそれぞれ露出を合わせた写真を参加者全員で撮影することとなった。
先述の測光方法で数枚撮影し、折角なので疑似マクロ機能(AXに付いている特殊能力)を使ってモデルさんのポートレートを撮ろうとしたときだった。
ガチャン。
「あれ?ミラーアップしちゃった?」
レバーを操作したり空シャッターを切って復旧し、気を取り直してもう一度。
ガシャン。
またもやファインダーがブラックアウトしてしまう。
あ……もしかして……
レンズを取り外して確認した私の目に飛び込んで来たのは
CONTAX名物 ミラーずれ病。
これ、簡単に説明するとレフミラーが両面テープのようなもので接着されており、経年劣化や熱でこの接着面が溶け出してしまうことによりミラーがミラーベースからズレてしまい撮影不能になる症状。
CONTAXのカメラは割と後期までミラーがこういう作りのため時折起きる持病でもある。この状態で無理に弄るとミラー割れやレンズ破損などが起きることがある病気だ。
このカメラ、競馬撮影用なので先日宝塚記念の観戦にも持ち出しており、炎天下の中で丸一日出していた。その為粘着部分が溶けてしまっていたのかもしれない。
結論から言うとミラーを両面テープなどで貼り直すまで一切使うことができない。
いやあ、困ったなあ。
私がフィルムさんぽに参加すると晴れる確率が異常に上がるのだが、何らかの機材トラブルもそこそこ出るんだよなあ。
とりあえずカメスズの部長さんに報告して急遽PENTAX MEをお借りすることに。
予備のメトロポリスを詰めて仕切り直しであった。
さてこのカメラ、基本的には自動撮影用のカメラである為、スポット測光による明暗差撮影はやりづらい。
しかし、別に出来ないことはない。
種明かしをすると確かに絞り優先オート露出専用ボディだが、非常用の機械シャッターが1/100のみ付いている。
自動露出をハイライトに合わせた後、1/125のシャッタースピードを示すところまでレンズを絞り、マニュアルシャッターに切り替えて、シャドウ部分を構図に入れて撮影すればいいだけだったりする。
ね?難しくないでしょ?
私はPENTAXだとMXやKXなどを使っており、ME、というか自動露出専用カメラは持っていないのだが、実際かなり扱いやすいカメラだと感じた。
小さくて軽いし、自動露出さえ生きていればとてもいい選択肢だと感じる。
で、東京タワー周辺をレンタル機で撮影しながら、途中のコンビニで両面テープとカッターナイフを買い、撮影解散中にAXをささっと直してしまう。
別に難しいことはなく、ズレたミラーを受けから剥がし、接着用の両面テープ跡をナイフとアルコール
(コンビニ入店時のアレをティッシュに含ませた)で綺麗に剥がし取り、両面テープで再固定するだけの応急処置である。
直った。
まあ、完全に改善したわけではなくあくまで応急処置ではあるが問題なくオートフォーカスも動くようにはなった。
しかし終盤で直したため、撮り切ることは時間的に厳しかったためこちらのフィルムは提出できず、MEとメトロポリスで撮った方を提出することにした。
まあこのフィルムは無機物に強い。ISO320くらいに設定してややアンダー気味に撮ると特にそういう味が強くなる。
一方、色合い的にはかなり彩度が落ちる。たまたま参加者の女性が赤、青、黄色のスカートだったため非常にわかりやすい彩度の変化材料として撮影したのがこちら。
わかる人にはわかるが、なんというかアマゾンズだ。
ただしこの彩度落としはISOの設定によっても変わってくるため、ISO200付近からややオーバー目に撮るとそこまでアマゾンズしない。
さて講評だが、今回は講評というよりかは勉強回のため普段と違い解説が非常に充実している。
私もしっかり聞いていた。紹興酒のボトルを空けながら。
露出絡みで多重露光の解説だったり、
ハイライト/シャドウ合わせの結果の違い
フィルムの銘柄による色合いの違いなど、おおよそフィルム撮影の基本となるところを徹底的にレクチャーして頂いた。
中にはフィルムカメラを触るのが初めての方などもいたが、最初からこの講座を受けておくと全然違うと思う。
トラブルに見舞われたものの、いつもやらないような撮影も出来てとても充実した内容であった。
また、他にも今回は1つ大きな発見もすることが出来た。
それは、紹興酒のロックはシェリー酒に近い味がしてシェリー酒大好きの私にとってこれ以上ないほど好みの味だということである。
kaz