見出し画像

kazのこんなカメラ⑬Zenit-ET


 ソ連の一眼レフシリーズで最も有名どころはZenitだと言ってもいい。
 1952年から2004年くらいまでシリーズが生産されていた。

 最近、ライカMPの仕様変更品としてZENIT-Mというデジタルレンジファインダーも発売されたが、
(少なくとも日本ではインプレや所有者を見たことがない)
 元々Zenitブランドは一眼レフカメラの老舗ブランドだったのだ。

 手持ちのZenitシリーズの一部を時系列で並べたもの。

 Zenit-C

 ・Zenitの歴史

 そもそもZenitはクラスノゴルスク機械工場で作っていたライカコピーのゾルキーにミラーボックスを載せて一眼レフ化したものだ。
 マウントもバルナック同径の39mmスクリューマウント(フランジバックは全く異なる)を採用していた。

 このM39ゼニットマウントは、初代Zenit、Zenit-C、Zenit-3、Kristall、Zenit-3Mと来て1960年代末のZenit-B、Zenit-Eの初期型まで使われていた。

 M39仕様Zenit-B

 1970年頃、セレン式露出計の付いたZenit-Eと露出計なしモデルのZenit-Bは途中からM42スクリューマウントを採用することとなる。


 これがめちゃくちゃ作られた。


 日本のカメラでスマッシュヒットした、といえばPENTAX SP辺りが思い浮かぶだろう。


 国内で180万台ほどが売れたと言われている。輸出仕様も含めればもっとだ。

 Zenit-Eはどれくらい売れたのか。

 約3,500,000台。
 倍近い。

 因みに露出計なしのBや細かいバリエーションモデルは含んでいない。
 多分SPの生産台数にもSLやSPFは含んでないでしょ。

 それだけ売れたのでモスクワのクラスノゴルスク機械工場だけではなく、他の工場にも製造設備を作った。
 当時ソ連のベラルーシ・ミンスク機械工場である。

 Zenit-EのバリエーションとしてEM型、ET型などがあるが、今回は主にベラルーシで作られたZenit-ETについて見ていきたい。



 ・ベラルーシのトホホカメラ

 上記のような経緯で、ベラルーシにはZenitとHeliosレンズを作るノウハウがあった。
 その後細々と独自開発のゼニット亜種やヘリオス亜種を作っていたりする。
(Helios44-3はこのベラルーシ製になるが良く写る)

 ソ連が崩壊してベラルーシが独立することになった後もZenitの生産を続けていた。
 このカメラは1991年に作られたものである。

 細かく言うとMMZは1971年に他工場と合併し、ベラルーシ光学機械合同(BelOMO)と名前を変えている。

 第一印象としては、もうベラボーに安っぽい。

 同じZenit-E系でも軍事兵器も作るモスクワ一の工場・KMZとは比べ物にならない出来の悪さだ。

 そもそも外装はプラスチック製だし、プラのバリはバリバリ出ているし、シャッターの感触もはっきり言って玩具より悪い。
 プラモ用のニッパーでバリを切り取った箇所もある。

 性能だって1960年代のカメラを30年近く後に、しかもこの質で出しているのだ。

 は?ってレベルである。

 オリーブドラブの外見が目を引くかもしれないが、この世代は基本的にこの色らしい。

 プラ外装なので軽いのは利点なのだが、シャッターがめちゃくちゃチャチで割とよくジャムる。
 どうも精度の関係で押し下げたシャッターボタンが内部で引っ掛かって上がらなくなってしまうこともあるのだ。

 そうした場合、一度シャッター根元の巻き戻しスイッチを入れて空シャッターを切ると回復するが、勿論1~2コマは無駄になってしまう。

 ちなみに状態はほぼ新品である。


 ・神経質な人お断り

 さて、なんか雑なのは造りだけではない。

 私は自他共に認める相当ズボラな性格だが、そんな私でもこのZenit-ETに関しては頭を抱えたくなるほど雑だ。

 先程このカメラの源流に当たるZenit-Eは露出計なしのZenit-Bというモデルがあって、という話は書いた。
 自動絞りに対応したZenit-EM、BMというものもある。

 ご多分に漏れずこのZenit-ETにも露出計なしのモデルがある。
 それどころかTTL式のモデルも、自動絞りが付いているものいないものだってちゃんとある。

 それらはどういう名前になるのか。

 Zenit-ETだ。

 おわかりだろうか。

 露出計が付いてようがいなかろうが、TTLだろうがセレン外光だろうが、自動絞りだろうが手動絞りだろうが。

 全てZenit-ET。

 まったくもうお前らはよ、と思わず愚痴りたくなる。


 外観から判別できないものもあるし、もうしっちゃかめっちゃかだ。


 私の手元にあるのはセレン式露出計、自動絞りがあるので本家KMZ風に分類するとZenit-EMと同じタイプだ。

・トホホカメラの写り

 実はこのカメラ、動いてさえしまえば普通のM42ゼニットなのでまあ悪いもんじゃない。
 普通のM42カメラではなく、普通のM42ゼニットというところがミソ。


 使う時には毎回、
「今日はちゃんと動きますように」
と願掛けをしてから使っている。

 動きさえすればロシアレンズの写りは良いのでそこそこ見られる写真を出してくれる。

 Industar-61 L/Zを使うことが多いが、ベラルーシ揃えでHelios44-3というのも悪くなかったりする。


 ・戦いは数だよ兄貴!

 先程、Zenit-Eはソ連でめちゃくちゃ作られて350万台くらいはある、と書いた。

 じゃあ、このZenit-ETはどうか。

 モスクワのKMZから約6万台。
 ベラルーシのBeLOMOからは1982年からのおよそ9年間で、約300万台以上。

 バカみたいに作っている。

 ただし、KMZと比べて先述のとおり、各仕様違いもごっちゃ混ぜだ。
 同じようにKMZのZenit-B、EM、BM、TTLを合計すると700万台を越える。

 恐るべしソ連の技術力。

 またこのカメラの雑っぷりは文章だけでも伝わるかと思うが、そういう感じなので300万台という数字に信憑性があるかもわからない。

 とにかくやたら沢山作られた、というのは間違いはないだろう。

 民主主義では、数こそが力なのだ。


 あそこ民主主義じゃなかったわ。





kaz

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?