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予防接種後副反応(AEFI)の因果関係評価 WHO分類改訂第2版ユーザーマニュアル(日本語版)

WHOのCausality assessment of an adverse event following immunization (AEFI): user manual for the revised WHO classification (Second edition)の日本語翻訳版をWHOの了承を得て作成しました。ワクチン接種との関係が疑われる健康被害が発生した場合に行うべき、記述的調査手法が述べられています。興味のある方は是非御覧ください。


予防接種後副反応(AEFI)の因果関係評価 WHO分類改訂第2版ユーザーマニュアル(日本語版)



以下、本書の「諸元及び根拠」からの引用です。
予防接種は最も成功しやすい費用効果の高い公衆衛生介入である。予防接種は世界の天然痘の根絶及び世界各地のポリオの駆逐をもたらした。現在、予防接種によって毎年全年齢群でジフテリア、破傷風、百日咳、及び麻疹による推定200~300 万人もの死亡が回避されている。これまでになく多くの人々が予防接種を受けられるようになった。2016年に、世界の乳児の約86% (1億1650万人) がジフテリア・破傷風・百日咳3種混合 (DTP3) ワクチン、小児の85%が2 歳までに麻疹ワクチン1 回、及び世界の乳児の85%が3回のポリオワクチンを受けている。
予防接種の安全性は、各国のワクチン予防可能疾患コントロールプログラムの有効性と同程度に重要になっている。一般大衆にとって、予防接種に対する期待度は通常の薬剤よりはるかに高く、ワクチン又は予防接種により生じる問題に対する許容度は低い。ワクチンは通常、乳児の全出生コホートなど莫大な数の健康な人々に接種される。ワクチンが接種される環境は、洗練された三次医療病院から、住みづらく近づきがたい辺鄙な地域の原始的な環境まで様々である。多くの国では、特定の予防接種は入学や海外旅行に必須になっている。ワクチンを含む生物学的製剤の評価、認可、管理及びサーベイランスは、着実に増加しつつある新規製剤、品質に関する複雑な懸念、及び急速な科学の進歩により生じる新たな技術的問題に直面している各国の規制当局にとって重大な課題である。
予防接種の有益性は、特に標的となる疾患の発生率が低い場合には目に見えないことが多い。対照的に、予防接種後の副作用は、特にワクチンを接種された人が接種の時点では一見健康であった場合には直ちに認識される。他の要因がその副作用に寄与していたり、完全に原因であったりする可能性もあるが、そうした要因は考慮や調査されないこともある。リアルであり、認識できるワクチン反応への恐怖から予防接種を思いとどまる人々は多く存在する。
ワクチン反応及び予防接種忌避の問題は、先進工業国における長年の問題であり、予防接種の利益の大部分が得られた後に起こることが多い。予防接種プログラムはここ数十年で低中所得国 (LMIC) にも拡大されているため、そうした国々でも同じ問題が発生している。
ワクチン/予防接種が副反応を引き起こすという主張には迅速かつ効果的に対処しなければならない。これに失敗すると、ワクチンに対する信頼が損なわれ、最終的には、副反応はワクチンが原因ではなかったという証拠が作成されてからかなり後の予防接種率や疾患発生率にまで多大な影響をもたらす可能性がある (例、自閉症とMMR、脳症と百日咳)。一方で、ワクチンは100%安全というわけではなく、予防接種の実施中の過誤から有害な影響が生じ
る可能性があることも忘れてはならない。このためワクチン関連副作用及び予防接種過誤関連事象は健康な人に影響を及ぼすと考えられ、事後の対応を検討するために直ちに特定する
必要がある。ワクチンの安全性の問題に対しては、適切な措置を執って迅速・効率的に、かつ科学的厳密さをもって対応しなければならない。これが個人及び集団全体の健康に対する副作用を最小限に抑え、ひいては予防接種プログラムの利益を最大限にするのに役立つ。そのため、AEFI リスクアセスメント、意思決定及び措置の開始には、AEFI の因果関係評価が重要な役割を果たしている。

目次は以下の通りです。

第2版及び更新内容
Glossary用語 
Acronyms頭字語 
I. 緒言及び根拠 
 予防接種後副反応-主な定義
  一般的定義
  原因特異的定義
II. AEFIの因果関係評価のための主な考慮事項
 因果関係評価の実際
III. AEFIの因果関係評価のレベル及びその科学的根拠
 1. 集団レベル 
 2. 個人レベル
 3. シグナルの調査
IV. AEFIの因果関係評価のための症例選択
 因果関係評価の必要条件
 誰が因果関係評価を行うか?
V. 個々のAEFI症例の因果関係評価のステップ
 ステップ1:適格性
 ステップ2:チェックリスト
  I. 他の原因を支持する強いエビデンスがあるか
  II. ワクチン又は予防接種との既知の因果関係があるか
   II (時間) . IIのいずれかの質問に「はい」であった場合、その期間内の
   当該事象のリスクは高かったか
  III. 因果関係を反証する強いエビデンスがあるか
  IV. 分類に必要な他の資格因子
 ステップ3:アルゴリズム
 ステップ4:分類
  I. 因果関係に関する結論に必要な情報が十分にある症例
  II. 因果関係の関する結論に必要な情報が十分にない症例
VI. AEFIの因果関係評価の論理の要約
VII. AEFI分類の基本的機構
 A. 一貫性のある予防接種との因果関係
  A1 及びA2. ワクチン製剤関連反応及びワクチン品質欠陥関連反応
  A3. 予防接種過誤関連反応
  A4. 予防接種不安関連反応 (予防接種に誘発されるストレス反応-ITSR)
 B. 未確定
  B1. 時間的関係に一貫性はあるが因果関係のエビデンスが不十分
  B2. 因果関係との一貫性について相反する傾向
 C. 一貫性のない予防接種との因果関係
  予防接種時の基礎疾患又は新規発症疾患
  外的因子への曝露により引き起こされる状態
VIII. 因果関係評価後に開始する措置
 A. 一貫性のある予防接種との因果関係
  A1. ワクチン製剤関連反応
  A2. ワクチン品質欠陥関連反応
  A3. 予防接種過誤関連反応
  A4. 予防接種不安関連反応 (予防接種により誘発されるストレス反応)
 B. 未確定 
  B1. 時間的関係に一貫性はあるが因果関係のエビデンスは不十分である 
  B2. 予防接種との因果関係の一貫性について相反する傾向がある
 C. 一貫性のない予防接種との因果関係 (偶発的)
 D 適格な症例及び分類不能な症例
IX. 結論

別紙1:AEFIの因果関係評価用ワークシート
別紙2:事例 
 事例1:髄膜炎菌結合型ワクチンと痙攣発作
 事例2:経口ポリオワクチン (OPV) と急性弛緩性麻痺 
 事例3:MMR ワクチン後のAEFI .


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