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CES 2022、リアル参加での見どころ5選

2年ぶりに年始の風物詩であるCESにリアル参加してきました。といっても、直前の年末年始でオミクロン株の米国流行が顕著になり、直前まで様子を注視し、移動・会場でも常に気を緩められずにいました。

会場はというと、Amazon・Meta・Googleといった大手企業等が出展/参加を直前で見送るなどもあり、割と閑散としてましたが、その反面快適であり、展示担当者ともプレッシャーなく話せる余裕がありました。

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ちなみに、大手の展示場所は、リリースすると来年以降優先権がなくなる等があるらしく、そのまま広い場所が空いてしまっているところや、LGのようUnityを用いたアプリとQRでバーチャルセルフガイドツアーにするといったクリエイティブなものもありました。

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そのような逆境の中での開催となりましたが、昨年そして今年のテクノロジーのトレンドがうまく反映されており、年始の良いスタートとなりました。私の観点から印象的であったポイントを以下取り上げたいと思います。

Abbott、ヘルスケア企業のキーノートデビュー

今日一番印象に残ったのはこちらでした。Day2でキーノートを飾り、ヘルスケア系では初の登壇。今回のCESでは、バッジピックアップ時に同社のCovidテストキットが無料配布され、会場入り前に各自検査することを推奨されてており、最初から強力な存在感でした。

今回の彼らのメッセージは「Future of Testing」。それを、de-centralizedとdemocratizedのアプローチで実現するということでした。医療において、問題を特定するためのテスト/検査に大きなペインポイントがあり、それを解決するというもの。例えば、United Airlines・eMedと共にUS再入国に必要なCovidテストを、わざわざ外国現地でのテストサイトを探したり・手法や結果レポート形式の基準が合うかの心配などもなく、ホテルの自室等でフリクションレス・オンライン・リモート・FDA認証基準でできる取り組みが紹介されてました。ヘルスケア・IT/クラウド・事業会社の興味深い連携です。

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彼らは元々、バイオマーカーの検出などを得意としており、グルコース量の検出などで糖尿病患者のモニタリングのツールを提供していたりしていました。近年はそれをIoT的にデータ化するソリューションを出し、よりリアルタイムでパーソナルな医療を実現させる、医療側・患者側双方の体験の質を向上させることを目指しています。ブースで話を聞きましたが、彼らは基礎研究も自社で行なっており、ツール化や治験に特化したものではない骨太のケイパを有しているようです。

実際にテストキットを私も試してみましたが、非常によくできていて、誰もが迷わず・間違えないようによくデザインされています。基礎研究やそれを応用する技術や治験だけでなく、ユーザー体験などのデザインなどまで、複合的なケイパが求められるものと感じました。

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EVの台頭(コンシューマ、産業向け)

車のEV化はこれまでのCESでも話題でした。しかし、今回ではこれまでのような未来的なEVコンセプトの展示ではなく、実用段階の話が主でした。コンシューマ向けと産業向けに分けて紹介します。

● コンシューマ向け

もしかしたら来年にはTesla(特にModel 3)はもう古いEVと言われることになってるかもしれません。その理由を以下説明します。

昨年から連続でDay1のキーノートを飾ったGMは、昨年の会社ロゴまで変更したEV転向表明からの進捗を紹介。EVで大きな部分となる車体下のバッテリーの基盤モジュールをコアに、幅広い車種へと展開。また、Software Defined Vechileのビジョンを実現するLinuxベースの自動車OS Ultifiに触れ、車種横断でEV時代の車内体験を実現させる基盤の開発状況を紹介しました。ここまでの幅広いセグメントに向けたポートフォリオは他社には出来ていないとい締めのメッセージで流石の貫禄。特に米国で個人・ビジネス共に使われボリュームゾーンのピックアップトラック系を拡充させてきている。

まずは以下リンク先は、GMのキーノートの中のSilveradoの説明のところで時間設定してるので、ぜひこの下の動画のリンクを見て下さい。これまで個人的にはピックアップトラックに全く興味がなかったのですが、この説明を聞くとちょっと良いかもと思ってしまいました。やはり、耐久性や居住性・機能性など、歴史ある自動車メーカーにはノウハウがあることが分かります。また、航続距離はオートパイロットもどんどんと進化しています。こういった車が来年には多く市場に出てきます。

個人的にはですが、Tesla Model 3などはユーザーを選ぶと思います。やはり全て画面での操作は、ワイパーやエアコン操作など使いにくいです。もはやLong Rangeモデルでも航続距離は今後短い扱いになるでしょう。既存自動車会社にできない割り切りや、オープンイノベーション的なコミュニティやハックは面白いが、あくまで限られた人向けではないでしょうか。

● 産業向け(物流、重機)

また、GMはEV車両のラストワンマイルの物流向け投入も、昨年のコンセプト表明から着実にパイロットを進めています。同取り組み/プロジェクトは、昨年の表明以降にGMから別ブランド「BrightDrop」として切り出し、物流ソリューション開発に専念し加速してきました。今回、Walmartのコマースにおける2時間以内の配送実現に利用することや、FedExとのCA州におけるEV車両EV600の大幅投入や、EコンテナEP1のパイロットをNYから今年中に10地域へ拡大することが表明されてました。

今回、大手自動車メーカーの出展が少なくなる傍ら、EVを乗用車ではなく重機系が相対的に存在感を示していました。下記では重機メーカーのBobcatがリモートで実際に遠く離れた地域の掘削機を操作するデモが行われてました。ラスベガスの掘削機のウインドウには、作業をしている現地の様子がVR的にリアルに示されており、尚且つ手慣れた実際のコントローラーで作業をすることができています。こうした重機系は、作業の音や大きなエンジンを使うが故のアイドリング時の無駄など、EVが解決できる問題は多いように感じました。

Samsung、出展のベストパッケージ

Samsungはキーノートとブース展示の組み合わせが秀逸でした。キーノートではパーパスやビジョンを全面に出しつつ、ブースはしっかりと家電屋としての各種プロダクトを展示するものでした。

● キーノート

まずキーノートでは「Everyday Sustainability」と銘打って、同社のサプライチェーン内での脱炭素の目標と取り組みや、プロダクトの消費者の手に渡ってからのe-waste問題についての取り組みを紹介しました。また、多くの記事でも話題になっていますが、アウトドア衣料のパタゴニアと共に、洗濯時にマイクロプラスティックを排水に出さずにフィルターする洗濯機の開発を行なっていることの紹介がありました。

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他にも、Future Generation Lab(Samsungの米国内のイノベーションラボ)による新たなプロダクト開発の進捗報告があり、室内をさまざまな空間に変えるプロジェクターFree Styleや、昨今のゲーム需要を狙ったSusung Gaming Hubの紹介がありました。

● ブース

一方でブースの方は「ザ・家電」で、キーノートと比べて非常に面白いコントラストでした。QLED 8Kやギャラクシーシリーズ、コンポーネントごとに色を帰られる冷蔵庫やコネクテッド基盤であるSmartThingsなど、しっかりと本業の各プロダクトを示していました。

また、もう一つ同社の展示で面白かったのは、入場制限の仕組みです。ブースのサイドに以下のようなキオスク端末が用意されており、自分のバッジをかざすとレジストされ、モバイルに待ち時間と準備できたアラートが送られてきます。これら全てタッチレスで、かつ非常にスムーズな体験でした。

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新たなカテゴリー:Crypto、NFT

今回のCESからは、初めてCryptoというカテゴリーが加えられ、仮想通貨やNFTなどに関する企業の出展やセッションが行われました。これらは、マーケティング・コミュニケーション系が集められるC SpaceというAriaにある会場で行われ、メインのLVCCやVenetianに行かれた方には馴染みが薄いかもしれません。流石にそうしたコンディションが合わさってか、ブースや人の入りは閑散としていました(冒頭の写真はまさにそれ)。

一方でセッションは、Cryptoに早くから関わってきたエキスパートによるトークンエコノミー創成期の話や、Fox・WWEといった大手メディア・興行主によるNFTとファンエンゲージメントへの取り組みの話は面白かったです。彼らもまだ取り組みとしては初期的であり、ユーザーのフィードバックを得つつ、タレントやメディアを起用したユーザー啓蒙・Utilityの充実等を今後目指すとのこと。

スポーツリーグにおけるNFTの試みはこちら米国でも色々と出てきています。私も年始に観に行った49ers vs Texansの試合で、NFL Virtual Commemorative Ticketsという観戦記念的なNFTを手に入れました。NFTなので、他者に譲渡したりのセカンダリーマーケットがあるはずですが、こういう観戦記念は譲渡したり入手したりのモチベーションがあまりイメージできませんよね。もっと他のシチュエーションでNFT化できると良いものがありそうです。あるいは、とある試合参加者にはこういう特典あるよといったUtility用途はあるのかもしれませんね。

壮大なデモ、Vegas Loop

最後はVegas Loopです。これは、TeslaのCEOであるイーロン・マスクが創業したThe Boring Companyが、同社の地下トンネルを掘りその中をEVが走ることで渋滞や環境の問題を解消するソリューションデモを、なんと 実際にラスベガスのコンベンションセンターの地下に作ったものです。

実際に体験してみると、「地下鉄の代替」「タクシーの延長」に感じました。長距離ハイスピードというより、こうして歩くには遠い都市部の移動として良いのではと。今回も歩くと15分ほどかかるLVCCのWestとCentralを1分ほどで結び、展示というより参加者の足として非常にスムーズに機能していたと思います。ガソリン車ではないので、地下トンネルでの空気や騒音なども気になりませんでした。逆に、これが高速での運行となると、少し怖いかもと感じました。走ってる様子はこんな感じです↓

他にも色々と書ききれない程色々とありますが、やはりリアルでの開催はパワフルだなと思いました。開催においては、ワクチン証明の必須化やテストキットの配布、握手OKか否かのシール配布など、対策がなされていました。また参加者も、現地に居ながらもオンラインとリアルを使い分けた人も、私もそうでしたが少なくはないと思います。

一方で、世界レベルの企業のエグゼクティブや各領域エキスパートの話を直接聞ける機会は、世の中の流れを把握でき、自身の視座を高められます。今回は感染対策で人との交流などはあまり行わなかったのですが、帰路のラスベガス空港にてAir Force Oneによる足止めをくらった際には他のCES参加者と一番交流できた機会になりました。リモート中心の仕事ではついつい内向きになってしまいがちなものですが、CESで以前のモメンタムを思い出す機会になった人は、私だけではないのではないでしょうか。


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