第6回/W杯 5人交代制から見えたもの

2022年カタールW杯はアルゼンチン代表の優勝で幕を閉じた。
日本代表の躍進、強豪国の早期敗退など今回も多くのトピックがあった。
また、史上類を見ない冬季開催・欧州リーグシーズン中ということもあり
そのような点でも興味深い大会であった。


実は筆者、今回W杯史上一番ライヴで観戦した大会であった。
過去の大会含めW杯の試合はあまり観ないのだが(海外・Jのクラブチームをよく観る傾向があるため)、
今回は比較的観やすい時間帯(GSは日本時間20時・22時キックオフの試合が多く設定されていた)に試合が多かったこともあり
半分近い試合をライヴ観戦した。


個別の試合についての感想や解説は多くの方やメディアによってなされている。
そのため、筆者が個人的に感じた点を記したい。


ずばり、今回の大会はどの試合も面白かった。
なぜ面白かったかというと、今大会から導入された「5人交代制」によるものが大きいと思う。
そのメリットについて考えていきたい。

途中交代で多くのチャンスを演出した堂安と三苫。
https://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2022/12/03/gazo/20221203s00002009056000p.html

①試合の「やり直し」が可能になった。(選手・監督視点)

今大会、日本代表は間違いなく「5人交代制」の恩恵を受けたチームの一つであった。
なぜか。
前半と後半でチームを作り替え、「試合のやり直し」ができたからである。
例え前半で劣勢になっても、交代人数が増えたことによって
躊躇いなく後半頭から選手・戦い方を代えることができた。

「仮に前半45分の内容がネガティブなものであっても、
 後半45分で挽回できる」

そんな戦い方ができるようになった。
今回の日本代表の戦い方で従来の3人までの交代であれば
残りのカードを大切にせざるを得ないため、
あのような大胆な戦い方は出来なかったと思う。

②試合が90分通じてテンションの落ちない見応えのあるものになった。(観客視点。一部監督・選手視点)

5人交代可能が意味することは
フィールドプレーヤー半分を交代することを意味する。
半分はフレッシュな選手に「取り替える」ことが可能ということだ。
このことで何人かの選手は「90分持たなくてよいから、60分間100%を出し切る」という役割を担うようになった(日本代表で言うと前田大然がその役割を担った)
その後フレッシュな選手が残り時間で100%を出し切る。
よってピッチ上には常にフレッシュな選手が存在し、
結果、試合のテンションが90分間通じて落ちなかった。
フットボールの試合でよくみられる
「後半途中の時間帯から体力・戦術的に様子をみる」
という静かな時間がこの大会では少なかったように思える。
これによって、観ている側にとって興味深い試合が増えたように感じた一因であると思う。


一部ジャーナリストからは
「今後、5人交代制でバルセロナのようなサッカーは苦しくなる」
という見方が出ている。
理由として、バルセロナのサッカーである
「パスを繋ぎ、揺さぶって、相手が疲れてきたところでトドメを刺す」
というのが、5人交代可能なことで「相手が疲れない」という現象が生まれてくるため、というものである。
なるほど、とても興味深い見解だ。
しかし一方、準優勝のフランス代表のように、
「少数精鋭(登録可能な26人の枠すら1枠余らせた)・メンバーをある程度固定、試合によっては5人の交代枠をフルに使わず勝ちあがった」チームも存在する。
必ずしも5人使い切ることが正解、という訳でもなさそうだ。


今後5人交代制をフルに活用したプレッシングフットボールが時代の潮流となるのか。
はたまたそれを掻い潜る新たなフットボールが出てくるのか。
興味深く見守っていきたい。






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