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恋した曲のレコーディングに参加するという巡り合わせについて。

もう18年位前になるだろうか。佐野篤さんに出会ったのは。

当時付き合い始めた女性に、佐野さんのバンドKING(現在は宇宙ステーションズ)のライブに誘われ、深夜の新宿CODEで初めてお会いした。

正直、その時の記憶はあまり残っていない。その日は酒を結構飲んでおり、すでに眠くなっていたからかもしれない。

それから度々ライブにお邪魔することになるのだが、ツインドラム、アフリカンパーカションを交えたセッションは私にとって新鮮だった。4ピースのギターで押し切るバンドのライブを観ることが多かったからだ。KINGは編成上、リズムに身をまかせ体を動かして感じるのが気持ちいい曲が多いのだが、しっとりと聴かせる曲もある。その中の一曲に僕は恋をした。

ライブの度にその曲が演奏されるのを待ち焦がれるようになったのだ。CD音源も彼女から借りて聴いていたのだが、ライブで聴く音の方が好きだった。どのバンドのライブも毎回インプロビゼーションと表現出来るのだろうが、特にKINGのライブは流動的。曲の構成、長さも毎回違う。全員がソロをやれるので見応えがある。僕が恋した一曲も毎回違う顔を見せてくれた。

しばらくして彼女から佐野さんのソロの作品レコーディングの話を聞かされる。KINGとしてではなく佐野さんの音源を作るということ、生楽器メインの全ての録音を、いわゆる宅録で処理するということ、そしてレコーディングエンジニアとして僕を名前が挙がっているという事を。

当時の僕は、録音ではなく録音機材のメンテナンスを主として動いていた。そんな中、彼女が僕をレコーディングエンジニアとして推してくれたのだ。地味に音楽制作を続けていたとはいえ急な話に驚き躊躇した。

Mixの仕事はぽつりぽつりとやらせていただいてはいたのだが、自宅録音で0からのスタートというスタイルも初めてだし、ライブで顔を合わせていたとはいえ佐野さんとセッションするのは勿論初めて。うまく事が進まなかったら佐野さんにも紹介してくれた彼女にも迷惑がかかるなと。少し考えた。少し考えたが、上手くいかなかったら申し訳ないがその場で辞退することも出来るし、ここでお断りしたら絶対後悔するなと思いこちらからお願いした。

セッションをやる事が決まってから色々と慌てて色々と用意を始めた。
スタジオを借りない前提のセッション。僕は持ち運べるMacを持っていなかったので録音に関しては佐野さんのMacBookとオーディオインターフェースを使用することに。二人ともメインで使っていたDAWのソフトはLogic Pro Xだったので、そこは問題なかった。マイク、ケーブル類は二人が持っているものを持ち寄って何とかしたのだが、個人的にマイクのバリエーションが欲しいと思ったので、予算が許すマイクを買い足したり、Mixで必要になると思われるプラグインを揃えたりと。
もっと機材に投資しておけばよかったと後悔した。

佐野さんが演奏したものを1トラックずつ録音していくというセッションが始まった。通常のバンドのレコーディングだと4リズム(Dr. Bass Gtr Key プラス仮歌だったり打ち込みのガイド等)を一斉に録ってしまう事が多い。楽曲全体の姿もこの時に見えてくる。今回は1トラックずつ。箱譜は頂いたのだが、最初は全体をイメージする事は難しい。自分なりの想像の中で1トラックを録音していく。1トラックずつ音が重なっていき、徐々に姿を見せる世界に納得したり、感じたり。
Mixは僕の自宅で二人でヘッドホンを被ってのセッション。
大きな音でモニターが鳴らせないので、仲良くヘッドホンセッション。
俯瞰で見たら変な状況だったに違いない。


二人のセッションは何とか無事に終了した。

僕は恋した曲に、このセッションでも出会う事ができた。
恋した曲のもう一つの姿の誕生に立ち会う。
なかなかないでしょ? こんな巡り合わせ。

「Blue Imelda」

この経験はいいきっかけになった。
価値観が少し変わったというか、元に戻ったというか。
音の構築に関しても、気がついたことがちらほら。

佐野さんとはその後もお声がけをしていただきセッションを重ねている。
教わることは多い。






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