【プロ野球】周東佑京選手(ソフトバンク)が前半戦をリーグ最多32盗塁で折り返すも・・・スピードのピークも折り返し地点か

2024年7月30日 05:59

1.はじめに

　日本のプロ野球界トップクラスの脚力で、チームの勝利に貢献し続けている周東佑京選手(ソフトバンク)。東農大二高(群馬)から東農大オホーツク(北海道)を経て、育成ドラフト2位指名でソフトバンクへ。入団2年目の2019年3月に1軍の試合に出場可能な支配下登録へ昇格し、その後は日本代表にも選出され続け、昨年はWBCで日本の優勝にもに大きく貢献。2020年と2023年には盗塁王のタイトルも手に入れた。入団7年目の今季も既に前半戦だけでリーグトップの32盗塁をマークし、3度目の盗塁王も視界に入ってきた。
　また、盗塁数はリーグ2位の小深田選手(22盗塁)に大差をつけ、昨年の周東選手自身の盗塁数(36盗塁)を上回るのは確実で、盗塁数だけを見ると順調そのものである。しかし、盗塁数が多ければ多いほどチームに貢献できるか、というと安易に肯定できる事ではない。盗塁数と隣り合わせの気になるデータもあり、指標やデータが選手の育成や成績アップに与える影響も考えた上で、周東選手が今後も同様の活躍ができるのか考えてみたい。

2.意味のない指標やデータは選手の育成にとって大敵

　昨今、日本でも多くの成績のデータやサイバーメトリクスが姿を現し、それらを用いて個々の選手を評価して、野球ファンの中には実際のプレー観戦と並行して興味をもつ人や楽しむ人が増えてきている。様々な角度から野球に興味を抱いてもらえるのは非常に嬉しい事だ。たが当然、評価する材料が多ければ多いほど、選手にとってネガティブなものも増えてくる。中には参考になるデータもあるが、「こんな種類の指標なんて必要ないだろう」と思うものも少なくない。必要だと思う人がいるから私の目にも入ってきたのであるし、選手やチームの成績を予想するなど野球を楽しむのであれば全く気にならない。
　以前、独立リーグの指導者として現場で携わらせてもらっていた頃、過去のデータや指標は数字として正しく出てくるため、壁を乗り越えられない選手にアドバイスをする際に、様々な観点から打開策を考える事を踏まえ、選手本人が客観的に自身の見る事のできるようなデータを中心に集めて対峙した。データや指標を織り交ぜて説明すると、強い説得力をもたらすので活用する事も少なくなかった。
　しかし、データや指標が選手にとって理解し難いものや、的外れのようなものであっても、指導者側がそれらを「用心棒」代わりとして、あたかも自分の意見が正しいかのように用い、選手やチームを都合の良いようにコントロールするために利用している組織もある。このような方法で一方的に伝えてしまうと選手は逃げ場がなくなり、実際にプレーすると数字ばかりが気になり肝心なパフォーマンスに結びつかず、逆に育成や成長の悪影響となる。単に指導者が自己満足感で喜んでいるだけで、選手からすると上からよく分からない数字を浴びせられ、フラストレーションが溜まるだけである。
　故に、選手の育成や成長を促すためにデータや指標を織り交ぜて自分の意見を主張する場合、そのデータや指標がその意見と本当に関連性があるのかという事も同時に明らかにして説明していく事がフェアな姿勢であり、選手も納得して指導者の意見を受け入れる事が可能なのである。

3.周東選手の「立派な盗塁成功数」と「心配な盗塁成功率」

　話を本題に戻すが、周東選手の今季の盗塁数は昨年を上回る勢いで成功させている。しかし、「成功率」に目を向けるとやや心配な数字が出てきた。今年で7シーズン目となるが、今季はここまで、入団以降のシーズンの中で成功率が最も低くなっている。また、脚力で稼ぐ事の多い「内野安打率」も今季が最も低い割合となっている。(【表1】参照)

　また、今月(7月)は盗塁の失敗が既に3度あり、これまで周東選手が月別に最も失敗した回数が3度(2023年9月、2024年6月の2回)で、先月に続いて2ヶ月連続で3度の失敗をしてしまっている。(【表2】参照)
　もし、30日と31日に予定されている楽天戦で盗塁を失敗してしまった場合、入団後初めて1ヶ月間で4度の盗塁失敗を記録する事になる。