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【プロ野球】日本ハムの「オールスター野手組」の不振が目立つ・・・要因の1つはオールスターの試合の中に

1.はじめに

 プロ野球はオールスターゲームを挟んで後半戦へ突入した。今年のオールスターゲームはエスコンフィールド北海道(エスコンF)と、神宮球場での開催のため、日本ハムの選手には多くの投票があり、計10選手が選出された(1名は辞退)。野手は6選手が本拠地のエスコンFを中心にプレーし、選出される実力があるかは別として、良い経験ができたのは間違いない。
 日本ハムは前半戦を3位で折り返し、首位のソフトバンクとは差が大きく、数年前から口に出して目指すとしている優勝は別として、Aクラス入りを争っているチームが総崩れするようだとプレーオフ進出の可能性も残されているため、下位に沈んでいるチームとの対戦が組まれている後半戦開始直後の本拠地での2カードは全て勝つ事を前提に準備していたに違いない。結果的に3勝1敗2分けの成績で、順位を追っているソフトバンクとロッテ(ともに5勝1敗)とは更に差が開いてしまった。
 この2カード6試合では、日本ハムの投手陣が西武・オリックスの低空飛行を続ける打線を、4試合で先発マスクを務めた伏見選手の好リードにも支えられ最小失点に防いでいた。打線が「普通に」得点を奪えていれば2つの引き分けは白星に変えられていた。しかし、力があるとされているオールスターゲームに出場した選手がブレーキ役となり、相手からリードを奪う事ができなかった。
 オールスターで打席に入った日本ハムの打者6名の後半戦開始直後の打撃成績は【表1】に記してある通りだ。なぜ、大事な後半戦に向けて状態が芳しくないのか、考えられる要因があるので説明していきたい。

2.オールスター戦出場による疲労が原因と考えるのは早計

【表1】オールスター組の打撃成績(個人の成績は7月30日現在のもの)

2.(A)多くの打者はシーズン中には見られないスイング

 オールスターに出場しない大部分のプロ野球選手は、後半戦に向けてチーム全体でやや強度を落とした練習を行う。そもそも、今季の前半戦と後半戦の試合が行われない期間は4日間のみ。オールスター出場選手にとっては、むしろ試合感覚を手放さなくていい状況とも言える。疲労が原因ならば、他球団の同出場選手も似たような影響を受けていてもおかしくないが、他球団の主な同出場選手の成績は【表2】で分かるように、日本ハムの選手のように総崩れしている訳ではない。したがって、疲れによってパフォーマンスが落ちているとは言い難い。

【表2】他球団のオールスター組の打撃成績(個人の成績は7月30日現在のもの)

 オールスターゲームは私が小学生だった頃、それぞれのリーグの素晴らしい個性的な能力をもった選手のプレーが見られる期待感から、試合前からテレビの前で始まるのを楽しみにしていた記憶がある。近年は、交流戦が組まれていたり、ネット投票が中心となり票が偏った選出がされているため、失礼だがプレーしている選手の表情を見ても「お遊び」的な催しにしか見えない。そんな感情を抱きながら中継を見ていると、両軍の多くの打者のスイングがシーズン中とは異なり非常に大きく、早い段階からスイングを始動しておりホームランしか狙っていないようなものだった。シーズンオフならともかく、今はシーズンの真っ只中で数日後には大事な試合が続く中で正直、「修正できるのかな?」と出場選手の後半戦のパフォーマンスが心配になるくらいだった。

2.(B)他球団と日本ハムの選手には大きな違いがある

 【表2】の他球団の打者で、オールスターゲームで打撃フォームが崩れてしまうかのようなスイングを披露しても、前半戦と比べて成績が低下していない選手には特徴が見られる。前半戦と同様以上のパフォーマンスを後半戦のスタートとともに出せている外崎選手・源田選手(西武)、栗原選手・山川選手(ソフトバンク)らは、全て今年で3回以上のオールスター出場経験がある。そのため、オールスターゲームでの自らのパフォーマンスを一時的に崩しても、後半戦が始まるまでにしっかり修正して臨めているのだ。
 日本ハムから選出された野手6名のオールスター出場回数は、マルティネス選手と万波選手の2回が最多で、他の4名は初めての選出だ。厳しい言い方をすれば、「短期間での活躍で選出されてしまった」とも捉える事ができ、まだ自分の打撃フォームが崩れても簡単に戻せるような高いレベルの選手ではないとも言える。そのような選手たちが、これまで何度もオールスターゲームに選出されてきた選手と同様に、特別な打撃フォームでシーズンを戦うグランドの上でプレーしてしまったら、後半戦のスタート時にこれまで苦労して築き上げてきた良い打撃フォームに戻す事は容易ではない。特に万波選手は、山崎投手(巨人)の繰り返し投球された緩いカーブに何度も崩された打撃フォームで大きなスイングをしてしまった。このようなスイングは、普段より早めにスイングの始動を始めてしまい、普段とは異なる筋肉を使ってスイングを強くしてしまうため、当然シーズン中で対戦するような投手の球には対応できない。打撃フォームを自分の良いものにするには多くの時間が必要だが、崩してしまうのは一瞬だ。

2.(C)もう過ぎた事を後悔するよりも本来のフォームを1日も早く取り戻す工夫を

 本来ならば選出されていないような選手が、エスコンFで開催されたためにオールスターに選ばれ、他チームの経験豊富な選手とともにファンを喜ばせる目的も兼ねて、本来の打撃フォームを崩してしまった日本ハムの野手勢。まさか、自軍内から「ホームランを狙ってこい」などの声を真剣に聞いた訳ではないと思うが、経験の浅い選手に対してチーム内から何かアドバイスがあれば、オールスターでのスイングも違っていたであろう。後半戦のスタートの大切さがチーム内に浸透していなかった事が、今回の後半戦の「無駄な引き分け試合」につながったと言っても過言ではないと感じる。
 だが、振り返っても仕方のない事で、打撃フォームを取り戻す事は反復練習や基礎練習を行う必要性があり、辛抱強く取り組まなくてはいけない。一部の選手は次第に状態も良くなっているように見られる。まだ暑い日が続く中だが、何もしないで本来の打撃フォームを取り戻せるほど甘くはない。疲れのある中、結果を残すために良いフォームを固める事は必要で、これを乗り越えてこそ何度もオールスターゲームに出場できる選手に成長できる。まだ活躍の期間が短い選手にとって難しい調整だったと思うが、1日も早くチームの勝利に貢献できるよう頑張ってもらいたい。

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