見出し画像

今見終わった感想 ーネタバレありー

「賛否両論が分かれる」、という前情報だけを持って観てきました。
小説版「君たちはどう生きるか?」の予習はしてませんでした。

もちろん他人の批評は一切見ていないまっさらな状態です。


①情報を完全に秘匿したことについて

色々理由はあったでしょうが、やはり「あらゆる先入観を捨てて自分の思うままに感じて欲しい」という想いが強かったのだと思います。

それを実行するとどういう事が起きるのか?

「自分にとって物語は映画を見る前から始まっていることになり、物語が見る人の世界と一体化する」ことになります。

つまり100%主観的な目線が働くという事です。

なぜそんな仕掛けが必要だったのか?

従来の「映画を観る」という固定観念の外に、テーマが潜んでいるからです。

正直、最初は全く意味が分かりませんでした。ナウシカのような緻密な世界設定がある訳でもなく、登場人物が好き勝手に意味深なセリフを連発したり、伏線は特に回収されず、大人になればなるほど混乱と混沌の世界に叩き込まれます。

「ああー-ーもう意味わかんない、外出ようかな?」と何回思ったことか(笑)

しかし、その事こそ狙いだったに違いないでしょう。

まさに夢の中にいるかのような理路整然としない世界に包み込まれます。

これは自宅ではとても体験できない感覚でしょう。映画館でしか体験できない感覚とよく言いますが、こういうアプローチはとても斬新でした。


②観客に何を感じて欲しかったのか?

それは、私が今まさにクリエイターとしての活動を始めているからこそ感じるものでした。

隔世された場所で、「世界のバランスを保っている大叔父さま」は、かつての宮崎監督の夢だったのかは確証できませんが、少なくとも私がシナリオ創作の世界に入った動機とまったく一致します。

そして主人公に自分の後を継がないか?と誘います。

悪意に満ちたつまらん俗人どもの世界で生きてなんになる?

悪意とはそもそも何なのか?どこから湧き出てくる?

その根幹を問いて、正していく事こそが重要であり、そうした世界と使命を君も引き継ぐのだ、――――と。


正直、「いまの自分に言っているのか?」と不思議な気持ちになりましたが、宮崎監督がかつて考えたテーゼであるならば、

「人間が人生そのものを懸けてやり通す価値のある仕事とは、こういう事だよ?」

という事に他ありません。

そして、主人公はその誘いを断り「友達を見つけます」とただ一言答えます。

つまり、この世界に生きている人々を愛し生きてゆくと宣言します。

頭に自分で傷をつけた悪意を認めたうえでそういいました。

(言うまでもないですが、主人公が自分で頭を傷つけたのは、相手を必要以上に悪人にでっちあげるためです。国交の世界でもよくある手口です。大昔に日本に酷い目に合わされた!賠償しろと!と叫ぶ隣国のように)

こうした世界に当たり前にはびこる人間の悪意を自分の中に認め、元の世界に戻る決意を行います。


他にもいろいろ感じるところはありましたが、

この2点が見た直後に強く心に残った所感です。


追記
たった今いろんな解説動画見ました。

見る人によって全然ポイントが違うんだな~と思いました。

誰もここに触れていませんでしたが、

主人公が自分の頭を傷つけた「悪意」はこの世界の悪意の象徴かと。

これが分からないとラストシーンの真意も殆どわからない。

母のいる病室を燃やしたのは戦争。それを起こしたのは人間の悪意です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?