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宮市亮にシャーレを!

横浜F・マリノス所属の宮市亮選手が、先のE-1サッカー選手権(東アジア選手権)の韓国戦にて、相手選手との接触プレーで右ヒザ前十字靭帯を断裂する重症を負いました。ケガをした後、「もう現役を終えようと思った」と自身のブログで綴るほど、ショックが大きかったことがうかがえます。

宮市選手は爆発的なスピードを武器に常に年代別代表に名を連ね、高校卒業後はJリーグを経由せずにイングランドの名門アーセナルに入団。就労ビザの関係でオランダのフェイエノールトにレンタル移籍し、日本史上最年少で欧州主要リーグデビューを飾ると、2012年には19歳で日本代表デビューを果たしています。 

誰もが明るい未来を期待するなか、その後は度重ねるケガに苦しめられてきました。2015年に左ヒザ前十字靭帯を断裂し、復帰も束の間、2017年には右ヒザの前十字靭帯を断裂。さらに2018年には右ヒザ前十字靭帯損傷と、復帰と離脱を繰り返し、ヨーロッパでのプレーを断念。昨夏から横浜F・マリノスに加入し、20代後半にしてJリーグデビューを果たしました。 

マリノスに加入した2021年シーズンは、試合勘の問題や戦術理解、初めて体験するJリーグのテンポに慣れず、輝きを放つことはできませんでした。ヨーロッパよりもレベルが落ちるJリーグで活躍できないことから「宮市は終わった」と揶揄されることもありましたが、マリノスサポーターは、彼の今シーズンに期待していた人も多いはずです。 

ここ数シーズン、マリノスは翌年を見据えた夏補強を積極的におこなってきました。昨年の得点王・前田大然選手をはじめ、畠中槙之輔選手、渡辺皓太選手らは、獲得直後はフィットできなくても、翌シーズンには活躍してきたこともあり、宮市選手もフィットすれば必ず大きな戦力になると思っていました。実際、過去のnoteでも二度にわたって書いているように、マリノスの戦術とスピードのあるサイドアタッカーである宮市選手の相性は抜群。確実にハマるという予感はありました。 

開幕当初は出番が限定的だったものの、チームにフィットすると本領を発揮。第22節消化時点で15試合に出場し、3得点3アシストと首位に立つチームに欠かせない戦力となり、10年ぶりに日本代表に復帰を果たします。マリノスサポーターのみならず、多くのサッカーファンがその復活に賞賛の声を送っていました。 

ところが……。度重なるケガを乗り越えて10年ぶりに代表復帰した舞台で、前十字靭帯断裂の悪夢。サッカーの神様がいるとしたら、あまりにも残酷すぎます。宮市選手は7月29日のブログにこう書き記しています。

「受傷直後『やってしまった』と同時に『もう現役を終えよう。』と思っていました。自分の職業はプロサッカー選手、プロアスリートです。これまでの怪我歴、稼働率、本当にプロアスリートとして褒められたものではありません。チームを離脱する期間も長く、その都度チームに迷惑も沢山かけてきました。多くの人に失望もさせました。だから辞めようと思いました」 

ケガをしたくてケガをする選手はいません。精一杯プレーした結果であって、それを責めることはできません。ただ、この言葉を読むと、どれだけ宮市選手が苦しい思いをしてきたかが伝わり、こちらも苦しい気持ちになりました。しかし、このブログには続きがあります。 

「けれど、皆さんから沢山連絡を頂き、待ってる、一緒に頑張ろう、と言ってくださいました。ファン、サポーターの方々からも、同様のメッセージがたくさん届きました。そのとき、そのメッセージを重荷に感じたわけではなく、心から嬉しかった。多分自分は、やっぱりサッカーがやりたいんだなと、その時思い知らされました。サッカーが大好きだと。だからまた、這いあがっていこうと思います。(中略)ラストチャンスと思ってそういう覚悟で頑張りたいです」

何度倒れても立ち上がる。プレーだけでなく、宮市選手の決して諦めないハートも最高です。12月で30歳になる彼にとって、リハビリ、復帰への道が簡単ではないことは容易に想像できます。それでも何度も立ち上がってきた宮市選手なら、きっとピッチに帰ってきてくれる。そう信じて復活を待ちたいと思います。

 ブログの最後に宮市選手は「マリノスに加入して本当に幸せです!」と綴っています。それはサポーター側も同じで、宮市選手が日本でプレーするチームとしてマリノスを選んでくれて本当に幸せです。だからこそ、過酷なリハビリ生活を送ることになる彼のためにも、シャーレを勝ち獲りたい。それは選手、スタッフはもちろん、サポーター、関係者、マリノスファミリーの総意でしょう。 

過密日程が続くなか、宮市選手を欠くことはチームにとって大きなダメージになりますが、復帰を目指して頑張る姿はチームに勇気を与えるはず。ピッチに立てなくても彼はマリノスの戦力です。シーズンが終わるとき、みんなでシャーレを掲げてて、その輪の中に笑顔の宮市選手にいてほしいと、心から思います。


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