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注目のアスリート紹介~森ひかる(トランポリン)

東京2020オリンピック・パラリンピックの開幕前に、私がこれまで取材してきた注目アスリートを紹介していこう……と考えていたのですが、仕事が忙しくなかなかnoteを書いている時間がありません( ̄▽ ̄;)

それでもせっかくなのでできる範囲でオリンピックに臨む選手を紹介したい! というわけで今回はトランポリンの森ひかる選手です。彼女は明日7月7日に誕生日を迎え、22歳になる若きトランポリンの女王。2019年12月1日、東京2020オリンピックの会場となる、有明体操競技場にておこなわれた世界選手権で見事に優勝を飾り、採点が出た瞬間の飛び跳ねながら喜ぶ姿を覚えている方も多いのではないでしょうか。

森選手の話の前に、まずはトランポリン競技を簡単に紹介しましょう。トランポリンは、2008年の北京オリンピックから正式種目として採用され、まだオリンピック種目としては歴史の浅い競技です。世界選手権などでは団体やシンクロナイズドといった種目もありますが、オリンピックでは男女ともにシングルスのみが採用されています。

縦4.28メートル(±6㎝)、横2.14メートル(±5㎝)のベッドと呼ばれる弾力性の強いシートをスプリングでフレームに固定し、反動によって高く跳躍することができます。この上でジャンプして空中でのアクロバティックな演技を10種目連続でおこない、美しさ、難易度、高さで得点を競います。飛び上がったときの高さは7~8メートルにもなると言います。遊園地などで誰もが遊び用のトランポリンは経験したことがあると思います。あれの何倍も高く飛び上がることを想像してみてください。空を飛ぶような感覚で選手は競技していることが想像できるでしょう。

さて、森選手の話に移りましょう。彼女の魅力はとにかく明るいこと。本人が自分の性格を「天真爛漫」と分析するように、トランポリンへの取り組み方も天真爛漫で、その純粋さ、自然さが強さにつながっています。

森選手は4歳からトランポリン教室に通いはじめ、小学3年生で全国大会初優勝。2020年大会の開催地が東京に決まった2013年には、14歳、史上最年少で全日本選手権を制覇しました。早くからトップで活躍していたものの、トランポリンは18歳以上という年齢制限があり、リオデジャネイロオリンピックへの出場は叶いませんでした。

経歴を見ると順風満帆に見えますが、笑顔の裏では苦しんだり、涙を流したりしたことも何度もあります。小学3年生で全国優勝した翌年、小学4年生のときには練習中のアクシデントでヒジを骨折。神経にも影響を及ぼすほどの重症で、恐怖心が大きくなって一度はトランポリンを辞めることを考えたと言います。

「あのケガをしたときはもう辞めようと思いました。でも、腕を吊ったままトランポリンの上を歩いたら、ここでしか味わえない感覚があって、気がついたら宙返りをしていました(笑)。トランポリンの上に立ったら怖さよりも楽しさのほうが大きかったんです」

トランポリンは楽しい。楽しいからもっとうまくなりたい。純粋な気持ちが彼女を支える原動力となっているのです。

高校進学時にも森選手は壁にぶち当たります。一度は地元の都立高校に入学したものの、オリンピックのために、よりトランポリンに集中できる環境を求めて、名門の金沢学院高校に転校。慣れない環境に身を置いて、辛い日々だったと振り返っています。

「初めて地元を離れての生活。普通に入学していたら同期のみんなと少しずつ慣れていく感じだと思うのですが、私は途中から入ったので、一人で環境に慣れていかなければならず、本当に毎日泣いていました。トランポリンを辞めて家に帰りたいと思うこともありました」

辛いときに支えになったのは、いつでも応援してくれる家族や友達の存在。そして、トランポリンの上に立つと、辛いことも忘れることができた。大ケガを乗り越えたときと同じように、トランポリンの上でしか味わえない感覚は、特別ものだったのでしょう。

人前ではいつも笑顔。その裏では一つひとつ課題を克服するべく、必死に戦っている。そして前述したように2019年の世界選手権では、超満員の観客の前で得意のトリフィス(前方3回宙返り、半ひねり)を決めるなど、55.860点をマークし、見事に日本人選手として初となる個人戦での優勝。とびきりの“ひかるスマイル”で人々を魅了してくれました。

進化を続ける森選手はオリンピックの前哨戦とも言える、6月5日にイタリアで開催されたワールドカップでも、高いジャンプからの安定した演技で優勝。この大会での女子個人の優勝も日本史上初の快挙でした。

「トランポリンをもっと広めていきたいし、結果を出さないと注目してもらえないので、結果を残していくことは大事だと思います。ただ、メダルを獲っても自分の演技ができなければ悔いが残る。だからオリンピックという最高の舞台で最高の演技をするというのが一番の目標です。最高の演技をすることでメダルはついてくると思っています」

世界選手権優勝。ワールドカップ優勝。日本女子史上初の快挙を立て続けに成し遂げてきた森選手の次なるターゲットはオリンピック優勝。彼女が言うように、大好きなトランポリンを楽しんで最高の演技ができれば、自ずと結果はついてくるはず。オリンピックの舞台で天真爛漫な“ひかるスマイル”を期待しています。

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