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カクテルブックができるまで③テキーラの話

9月29日に人気バーテンダーでユーチューバーとしても活躍するマスターイエツネさん著『神カクテル300』がKADOKAWAより発売されます。今回はお酒に関する「へぇ〜」となる話をお届けしましょう。

カクテルに使用されるお酒の代表格といえば、ジン、ウォッカ、ラム、テキーラの4大スピリッツです。スピリッツは蒸留酒の一種で、日本の酒税法では、清酒からウイスキー類までのいずれにも該当しない酒類で、エキス分が2度未満のものがスピリッツと分類されます。雑味が少なくクリアな味わいのため、数種類のお酒やジュース、炭酸などが混ざるカクテルに用いりやすいという特徴があります。

その中から今回はテキーラのお話をお届けします。テキーラはメキシコの国民的お酒であり、メキシコの誇り。ショットで一気に飲む、またはカクテルの割材として人気です。私はメキシコに4度行ったことがあり、その際には現地の美味しいテキーラをたくさん飲ませていただきました。

しかし、学生時代、居酒屋でテキーラショットをやったときは、「なんでこんなまずい酒を飲むんだ⁈」と思うくらい、まずかった記憶があります。かつての私と同じように、テキーラは「消毒液みたいで美味しくない」と感じている方もいるかもしれません。

そうなんです。居酒屋にあるテキーラはほとんどの場合、カクテルの割材として使用されるもので、ショットで飲むためのテキーラではないため、そのまま飲むとまずいのです。割材のテキーラと、激ウマのテキーラは何が違うのか、説明していきましょう。

そもそもテキーラには、「100% de Agave(デ・アガベ)」と「ミクスト」の2種類があります。原料はアガベ・テキラーナ・ウェベル・アスール(ブルーアガベ)と呼ばれる竜舌蘭(リュウゼツラン)です。

テキーラが「テキーラ」を名乗るためには、メキシコにあるテキーラ規制委員会が設けた手順、製造を踏んでいないと、テキーラとして認められないという規制があります。テキーラを名乗れるお酒は、選ばれし酒というわけです。

その規制とは、メキシコ国内で採れたアガベを51%以上使用していないといけないということ。そしてアルコール度数は35~55%であること。これを満たしていないのに「テキーラ」を名乗ると、法的措置がとられます。メキシコの人々のテキーラへの本気を感じますね。

この「アガベを51%以上使う」という規制から、前述した「100% de Agave(デ・アガベ)」と「ミクスト」の違いが生まれています。51%以上アガベを使用していればテキーラを名乗れるため、ミクストは、アガベは51%を少し超えるくらいで、他に砂糖やフレーバーを入れてつくられています。

一方、アガベを100パーセント使用しているものは、アガベ本来の甘みが感じられ、プレミアムテキーラとも呼ばれます。こちらは熟成年数によって呼び方が異なります。

できたものをそのまま出荷しているシルバー(ブランコ、プラタとも呼ばれる)は、無色透明です。これは熟成されていないため、ショットには適していません。シルバーをショットで飲んでしまうと、美味しくないので、もう二度と飲みたくないと思うかもしれません。シルバーはカクテルのベースに適したテキーラです(写真のもの)。

続いて60日から1年熟成したものがレポサド、1年以上熟成するとアネホ、3年以上熟成したものはエクストラアネホと分類されます。色がついているテキーラは、樽の色が移るくらい熟成期間が長いということです。長期熟成したテキーラは、ウイスキーのような味わいがあって、美味しいのです。

私がメキシコでいただいた美味しいテキーラは、ウイスキーのような色合い、味わいだったため、アネホ、もしくはエクストラアネホだったと思います(当時は違いがわからなかった)。本当に飲み口が良くて、ウルティモ・ドラゴン校長、メキシコ日航ホテルの社長さんらと3〜4人で3本開けたことが思い出されます。すごく酔っぱらいましたが、グイグイ飲めて、なおかつ二日酔いもなし! テキーラ最高だなと思いました。

シルバーをショットで飲んでしまった経験のある方は、「テキーラ=まずい」になってしまっているかもしれませんが、ぜひアネホ以上のテキーラを飲んで、そのイメージを一新してもらいたいなと思います。

ちなみにショットで飲むときは、塩→テキーラ→ライムの流れになります。なぜこうするかというと、塩をなめることによって唾液が分泌され、それによってノドのダメージを防いでくれるからです。そして最後にライムをかじることによって、後味をスッキリさせ、悪酔いを防ぎます。

お酒は、正しく、美味しく飲める方法で飲むのが一番なのです。テキーラショットは、それに適したテキーラでやりましょう。そして、アルコール度数が高いので、無理強いは止めましょう。

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