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ジーンとドライブ 縦かぶり男

若い頃、どういう人が好きなの?と聞かれてもよく分からなかった。
いい人がいい。そう思っても、いい人ってどんな人よ?ってなるし、価値観が同じな人。そう思っても、価値観が違ってる人だと視野が広がってそれはそれでいじゃない?ってなる。それに、好きなるって時、そんなにあれやこれやと考えていない。ある何かの瞬間、『あ。スキ。』と思ってる。後から思い出すと、いい人だけど自己中だとか、いい人だけど優柔不断で、価値観が合うのに、ここは外せない!と言うところが違ってた…とか、残念な結果になっている。それほど、条件なんてものは曖昧だし、好きだという気持ちだって空を掴むようなものだ。そんなことを自問自答しているうちに、訳が分からなくなって、
「サンドウィッチをタテにがぶりと食べる人。」
そう答えるようになってた。その姿を見てキュンッとした記憶があったからだ。可笑しいのは、それが誰だか覚えていない…ということだ。

三角でも四角でもいいけれど、特に、三角のサンドウィッチを食べる時、三角山をキッチリ立てたまま三角の頂点をかぶりつく豪快な様が男らしくて好きなのだ。意外とこれがいない。大体の人は平らにしてどこかの三角の頂点からパクっとお上品に食べる。
後から気づくこともあった。スキだな…と思っている人が、たまたまサンドウィッチを食べるところを見たら、縦にガブリとかぶりついて、「いやぁん。縦かぶりで食べるやん!」とますます好きなることもあった。
実は、ジーンも縦かぶり男だった。全く期待していなかったのに、いつだったかサンドウィッチを頬張る時、縦かぶりのその姿を見て、呆然としたのを覚えている。ところがここで、『キュンッ』となるはずなのに、ジーンの時に関しては『えっ…?まじか』と疑いの目を注ぐのみだったのは、それまで心奪われた人とは違って、ジーンが全くワイルドでもやんちゃでもなく、大人しめで、あまり冗談も言えない人だったからだ。つまり、ギャップがひどかったから。ますます好きに…と言うよりは、「この人を好きになるのか?おい、自分?」であった。
結局、紆余曲折…、その割にはものすごく早く結婚することを決めたけど、そこに、『サンドウィッチを縦にかぶりつくから。』というワードは無意識にどこかに置いていたかもしれない。…というのは大げさだけど、私にとってはポイントが高い様なのである。
ちょっとした行動にその人の本質は隠れている。それがどうだからこうだ!と言うのは分からないけど、なんか、気になるから見てしまう。

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