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【インタビュー】HIBIKI NAKAMINAMIデザイナー、中南響さんと対談。ブランドに込める想いとは。

デザイナーインタビュー企画、4人目となる今回は、新しいブランド「HIBIKI NAKAMINAMI」を開拓。デザイナーの中南響さんがインタビューに応じました。

今回は、アイテムの試着も含めてブランドのアトリエを訪問。対談形式で質問にお答えいただいております。

ブランドについては、以前に「ブランド紹介企画」にて取り上げております。ぜひ、そちらも合わせてご覧ください。

ブランド発足までの道のり

───ブランドを作るにあたって、何かきっかけみたいなものはありましたか?

中南 :
もともとデザイナーというになるという漠然とした思いがありました。本格的に服作りを学び始めた高校生のタイミングでブランドを持つという目標に代わり、大学卒業と同時にブランドをスタートしました。


───ブランドスタートまでの道のりを教えてください。

中南 :
卒業後は起業するという気持ちを持って大学(セントラル・セント・マーチンズ)に入学したこともあり、在学中から積極的に人と会ったり、資金準備、経営・会計の勉強などの準備を進めていました。卒業後、先輩や友人からアドバイスを頂きながら半年程度で最初のコレクションを発表することができました。

デビューコレクションの2021年秋冬コレクション
引用元 : https://www.fashion-press.net/collections/brand/5520

───いつ頃からお洋服に興味を抱いていたのでしょうか?

中南 :
中学生の頃です。
その頃から海外に出たいという気持ちがあり、デザイナーになりたいという気持ちも芽生えていました。


───ちなみに、海外に行く前から英語はお得意で?

中南 :
いえ、得意ではありませんでした。
海外には合計で5年くらい居ましたが、はじめの2年はほとんど話せなくて。勢いで進学してしまいましたが、最初はとても苦労しました。

デザイナー中南さんが
服作りにおいて意識すること


───ここからは、服作りとブランドについてお聞きします。洋服に込めるこだわりを教えてください。

中南 :
概念的にはなりますが、大胆な始まりと繊細な最後の一押し、それぞれに妥協しないこと。
トレンドに寄りすぎず、自分の提案する人間像を大切にすること。
そして、ヨーロッパと日本、両方の空気感を汲むことを大切にしています。ヨーロッパのコピーになっても、ガラパゴスなコレクションになってもダメで、それぞれが持つ要素をフラットに捉えてデザインに落とし込むようにしています。

2023年春夏コレクション

───着る人にとって、どんな服を提案したいですか?

中南 :
HIBIKI NAKAMINAMIの洋服は、一言でお伝えすると「張り詰めた空気を纏う」ことができるものです。着ることで背筋が伸びて、気持ちが整う1着を提案しています。


───ECメインということを踏まえて、服作りで意識することはありますか?

中南 :
品質には特に注意して生産管理を行なっています。
ECでオーダーしていただいたお客様には、期待以上の商品をお届けするべきだと考えています。


───ちなみに、ブランドの運営は、お一人でされているのですか?

中南 :
運営やデザインは自分1人で行っています。加えて、シーズンごとに1-2名のアシスタントがスタジオ周りの業務に関わってくれています。


───今はECでの展開ですが、今後はどのようにお考えですか?

中南 :
ECでの展開も続けていきますが、今後は小売店様とも良いお取り組みが出来ればと考えています。
24年春夏の展示会よりパリ・東京にて本格的にセールスをスタートしており、徐々にお取引が始まる予定です。


───ここのアトリエの雰囲気、私も初めてということもあり、なかなかに圧倒されます。こちらのアトリエには、どんな人が来たりするのでしょうか?

中南 :
ショールームとアトリエを兼ねていますので、スタイリストさんがリサーチにいらっしゃることが多いです。その他の商談なども全てここで行いますので、様々な人が出入りしています。


───スタイリストだと、もしかしてテレビ衣装とか?

中南 :
はい。テレビやライブの衣装はもちろんですが、雑誌の衣装選びにお越しいただくことも少なくありません。

実物を拝見して感じたこと。
「ありそうで、なかったものの提案」

───それでは早速、試着をさせてください。
まずは、1番気になっていた「SCHEDAR ZIPPED TROUSERS」から。色は、ネイビーで。


中南 :
ブランドではベーシックなウール生地を使用しており、サイドのファスナーが特徴です。開けるとワイドストレート、閉めるとフレアの様なシルエットになります。ファスナーの位置を上下することでタックの始まり位置を調整できる仕様です。

SCHEDAR ZIPPED WOOL TROUSERS IN DARK NAVY

───ウール素材で光沢感のあるネイビーですね。ですが、光沢感の主張はそこまで強すぎず、明るすぎないネイビーなので、黒との相性も抜群そう。これ、ウエスト細めですよね?

中南 :
黒色との相性は常に意識しています。ネイビーはトラッドな印象を与えてしまいがちなので、濃度の高いパープル系ネイビーのスーツ地を使用しています。
ウィメンズのパターンから派生させることも多く、このアイテムについてもウエストは細めの作りになっています。

───いつもパンツはウエストのサイズが大きくて断念することが多いのですが、かなり細身の私として、これは有難いです。他にこだわりのポイントはありますか?

中南 :
YKKのエクセラファスナーを使っているのですが、特注で引き手を変更してロゴを消しています。また、肌当たりを考慮して膝下までキュプラ裏地を付けています。

定番で展開される「SCHEDAR ZIPPED WOOL TROUSERS」のブラック

───本当ですね。細かいところにも気を配っているということが目に見えて分かります。そして、ウールなのにチクチクしないこととか、軽い履き心地とかは裏地の工夫なんですね。

中南 :
同じ形でデニム生地を使用した品番も展開しています。ぜひそちらも履いてみてください。


───デニムはデニムでかっこいいですね。ブルーの方は可愛らしい。女性も履きやすそうな気がする。

中南 :
デニムの方がファスナーのムシ部分が生地に馴染むため、ウール生地のものと比べて柔らかな印象になり履きやすいデザインに仕上がっています。ブルーはやはり可愛いですよね。アタリが出るように洗い加工を入れてあるので、カジュアルな雰囲気でご着用いただけます。春夏の品番はライトオンスデニムで作っているので、夏場でも軽く履ける点もポイントです。

SCHEDAR ZIPPED DENIM TROUSERS IN INDIGO

───確かに、生地が薄くて履きやすい。軽さもあるし、なにより夏に涼しそうですね。これは、とっても嬉しいポイントかも。

中南 :
この「SCHEDAR ZIPPED TROUSERS」は定番として素材違いで今後も展開します。
デニム生地については、別の品番でも使用しています。こちらは細身のテーパードシルエットで、コレクションの中ではベーシックなアイテムです。

TAPERED DENIM TROUSERS IN BLACK

───こちらもライトオンス!スタンダードだけど、夏に欲しいかも。夏のデニムは暑くてなかなか履く気にならないけれど、これなら履きたい。

中南 :
ありがとうございます。
あくまでベーシックなアイテムではありますので、ディテールでブランドらしさを表現しています。
洗いを施した後に裾を解いたり、膝部分のダーツやタック上部のリベット、後ろの二重ポケット仕様など、小さい部分で遊びを入れています。


───本当ですね。なんか、「ありそうで、なかったものの提案」というのが多くて素晴らしいです。シルエットも綺麗で、そういったところにもやはりこだわりはありますか?

中南 :
洋服における要素の中で、洋服そのもののシルエット、そして洋服が生み出すスタイリング全体のシルエットが最も大切だと考えています。デザイナーとして良い素材を使用すること、最高の品質を提供することは当然のスタートラインで、その上でどのようなシルエットやコレクション全体の表現に繋げるかに重きを置いています。

SCHEDAR ZIPPED WOOL TROUSERS IN BLACK
後ろから見た姿も、綺麗なシルエットで完成されている。

───(その後も色々なアイテムを見て)
やはり、どのアイテムも「ありそうで、なかったものの提案」というものが素晴らしいです。しっかりと私たちはイメージ出来ていないけれど、心の奥深くで思っている、欲しているようなものを中南さんが上手に形にしてくれている、そんな風に感じました。


中南 :
ありがとうございます。
例えば、このスウェットパンツには前開きのファスナーが付いています。通常布帛製品とカットソー製品は縫い工程が異なるため、スラックスのような前開き仕様のスウェットパンツはあまり見かけません。ですが、我々はデザインから逆算して、どのようにしたら理想の形を実現できるかを考えて生産に取り組んでいます。そのようなプロセスを経ているため、結果的にありそうでなかったアイテムに仕上がっているのかもしれません。

───本当だ。私もスウェットパンツ持ってますが、確かにジップは無いですよね。そういえば、ジップデザインが多い気がします。ジップがお好きなんですか?

中南 :
ファスナーはムシやテープのバリエーションの多さはもちろん、組み合わせる生地によっても大きく表情が変わるため、デザインポイントとして使用することが多いです。ヴィンテージアイテムのディテールをリファレンスにすることが主ですが、ボディにファスナーをランダムに乗せてドレーピングを行い、実験的な配置やシルエットを探すこともあります。定番のZIPPED TROUSERS シリーズは後者の方法で生まれたデザインです。

───パーカー、スウェットも個性的ですね。面白みがあります。

中南 :
ラウンジウェアシリーズについてもブランドの定番として展開しています。背面のテープのディテールや裾部分のズレ、切りっぱなしの脇線、フェイクの肩線ダーツなど独自の仕様を入れつつ、着やすい緩やかなバルーンシルエットで仕上げています。

2023春夏コレクション
トップスは、GARMENT DYE LOUNGE HOODIE

───(ジャケットも試着させていただきました)めちゃくちゃモードでかっこいい!このSCHEDAR ZIPPED TROUSERSとの組み合わせが凄く良いですね。

中南 :
テーラードブレザーはブランドの中心になるアイテムです。ラペルの返りや生地本来の風合いを大切にするために、胸には毛芯を使用しています。また、ボタン付けやまつり部分はできる限りハンドで仕上げています。

METHUSELAH Ⅱ FITTED BLAZER IN DUST

───そうなんですね!見えないところですが、人の手作業の大切さというものは、温かみがありますよね。そのものを手に取ったからこそ分かる、そのものの良さや価値。ぜひ皆さんにも手に取って欲しいです。
お時間が来てしまいました。短い時間でしたが、実物を見て得られたもの、実際に中南さんとお話を出来たからこそ学べたことが凄く多かったです。貴重なお時間をありがとうございました。また機会があれば、ぜひよろしくお願いします!


中南 :
こちらこそ、ありがとうございました。

編集後記(感想)

 まずは中南響さんへ、貴重なお時間をありがとうございました。HIBIKI NAKAMINAMIというブランドは、インスタグラムをきっかけて知り、いつか実物を見たいと思っていましたが、こんなにも早く、そしてこんな機会を設けて見れるとは思ってもいませんでした。アトリエに伺えると決まったとき、心の底から嬉しくなりました。

実際に手に取る洋服からは、予想以上の素晴らしさを、中南さんのお話からは、洋服への熱量のエネルギーをとても感じました。「ありそうで、なかったものの提案」が多く感じられ、かっこいいデザイン、そして便利な実用性を兼ね揃える洋服には、とても新鮮味を感じ魅了されました。一見、一般的に見れば、そんなところまでこだわる必要がある?と感じる部分もあるように思いますが、それこそがHIBIKI NAKAMINAMIというブランドの個性(価値)であり、中南さんらしさ。

 デザイン、素材、そしてシルエットのひとつひとつに込める強いこだわりには、始終圧倒され、ECの展開だけではもったいないと思うほどでした。

 中南さんの熱量というものに深く共感し、刺激を受けたHIBIKI NAKAMINAMIというブランド。ぜひ、皆さんも一度袖を通してみてください。そして、今後のご活躍も注目です。


【HIBIKI NAKAMINAMI】
Instagram : @hibikinakaminami

ONLINE STORE : https://hibikinakaminami.com

画像引用元 :
HIBIKI NAKAMINAMI オンラインストアより
https://hibikinakaminami.com

(デビューコレクションの画像のみ、FASHION PRESSより引用(キャプション参照))

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