【お試し初投稿】2020年映画ベスト備忘録

2020年に鑑賞した映画、劇場公開作品+配信作品、計80作品くらいの中から個人的に刺さった映画20作品を挙げていきます。尚、厳密には2020年の日本公開作品ではないものも一部含まれています。


🥇 シカゴ7裁判  (Netflix)

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 実話題材モノとしてここまで面白く胸アツ展開にしてしまっていいのか、と冷静になりたくなるほどに脚本・演出・編集・音楽など、すべての要素が超ハイレベル。近年監督業に進んだ名脚本家、アーロン・ソーキンの今後の代表作となることは確実でしょう。しかも配信されたタイミングが米国大統領選シーズンにぶち当たる。題材は過去のものですが、その神髄は民主主義社会の現在・未来までをも痛烈に貫いています。ラストは思わず、登場人物たちと共に拳を高く突き上げたくなりました


🥈 ザ・ライダー  (Netflix)

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 SNSで偶然知った本作。リアリティが尋常ではなかったのですが、調べてみると、本作に登場する人物たちはほぼ設定同様の生活をしている、つまりほぼ本人役である、とのこと。素朴でありながら、異様に説得力ある佇まいに感情移入を激しく促されます。少年と馬、少年と父親、少年と世界…この現代に絵空事ではない西部劇が存在していたとは。監督クロエ・ジャオの新作『ノマド・ランド』は今度のオスカー大本命なので否が応でも期待が高まります


🥉 レ・ミゼラブル

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 かの有名なミュージカルではありません。現在進行形で渦巻く欧州先進国の差別・分断の問題を極めてスリリングに描いた群像劇。社会派作品としての鋭利さと、(少々不謹慎ですが)娯楽性をも兼ね備えた作品の強度に唸らされました。無論、ここで描かれる現象は日本とて対岸の火事では済まされません。私個人として、本作の掲げるレ・ミゼラブル=”哀れな人々”とは誰のことを指すのか、できるだけ考えていきたいと思います


④ ブルータル・ジャスティス

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 約160分と比較的長尺な本作。ある程度のイベントをテンポよく詰めていなければこのご時世に不向きでは…と思われるところを、S・クレイグ・ザラー監督は、実にじっくりゆっくり丹精込めて(?)描いていきます。何気なくも時に反時代的な、オッサン刑事たちの日常描写に漂う静かな可笑しみ。その延長線上に無骨に現れる泥臭く血腥い暴力の数々。お決まりの勧善懲悪やハッピーエンドから完全に逸脱した、ポリコレ全盛のいま、逆に観ておくべき傑作です


⑤ ランボー ラスト・ブラッド

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 本来であればシリーズ4作目の前作『ランボー 最後の戦場』が適切な”ラスト”だったのかもしれませんが、スタローンはどういうつもりか、5作目をつくってしまいました。彼の真意は図りかねますが、これはこれで非常に痛みを伴う、もうひとつの暗い”最後”として全然アリなのだと思います。最近のゲームによくある、分岐エンディングのひとつ的なアレです。アクション映画における暴力の陽性なエンタメ的消費のされ方に、同じアクション映画の枠内から本作のような痛みや悲しみを提示することは大切だと思います


⑥ 本気のしるし

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 元のドラマシリーズを編集して制作された劇場版。前後編あわせて4時間程度になりますが、まったく疲れず飽きの来ない無類の面白さに圧倒されます。自分がこれからどんな異世界へ連れていかれるのか、まさに本作の主人公が謎の女性にどんどん魅了され引込まれていくように、ハラハラしながら心から楽しめました。日本でこんなに上質なTVドラマが放送されていたなんて……その後の深田晃司監督のトークショーもあわせて、トータルで素晴らしい思い出になりました


⑦ 彼らは生きていた

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 『ロード・オブ・ザリング』のピーター・ジャクソン監督が戦争映画史を更新する偉業を成し遂げました。それもドキュメンタリーで。第一次世界大戦の記録映像を最新技術でカラー&クリアに復元し、大戦経験者の膨大なインタビュー音声を織り交ぜながら、完全に「今ここにある物語」として構築されています。単なる100年以上過去の昔話、記録映像集ではありません。本作の制作に関わったすべての人たちの崇高な意識と大変な労苦にひたすらリスペクトを表します


⑧ ようこそ映画音響の世界へ

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 映画史を「映画音響」の視点から概観するドキュメンタリーですが、なかなかスポットライトが当たらない業界の話だけに興味深いエピソードが満載でした。「映像メディア」としての側面に加えて「音響メディア」としても捉えてみることで、映画の観方・世界を見る視座だけでなく、いわば「映画や世界の聴き方」にまで影響を与えてくれる非常にありがたい逸品です。本作は「映画館内音響」をリアルに体感させるシーンもあるため、映画館で鑑賞するのがマスト。自宅鑑賞など論外でしょう


⑨ フォードvsフェラーリ

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 コロナ禍とかは関係なく、本作のように大作とまではいかず、少し古風で男臭いハリウッド映画に出会える機会がすっかり減ってしまいました。だから、ということだけではなく、素直に映画としてのルック、端々から溢れる芳醇な雰囲気に終始うっとりさせられます。多彩なジャンルを手掛けてきた職人監督、ジェームズ・マンゴールドの新たな傑作。自動車やレース競技に詳しくなくても、オトナ社会を生きる人全員に堂々とお勧めできる、実に熱く切なく、少しチャーミングな男たちのドラマでした


⑩ はちどり

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 これが初の長編監督作だと聞いて驚きました。監督キム・ボラを、今後が楽しみな新鋭監督の筆頭格に挙げる方も多いでしょう。一人の少女の視点から垣間見える社会の生々しい窮屈さや歪みが、普遍的に共感でき得る少年少女の青春の切ない香りと実にナチュラルに並列して描かれています。文字通りの“芸術的”手腕から、派手な大作映画が齎すものとはまた異なる豊かさを存分に味わうことができます。映画という芸術分野の裾野の広さ・奥行きの深さに改めて感銘を受けました


━━以上が、私が選んだ上位10作品です。毎年のことながら、今年は特に順位付けに悩みました(と言っても個人の匙加減なのですが)。理由としてはやはり、コロナ禍により本来劇場公開される予定だった洋画の大作映画が次々に公開延期となってしまったことで、どこか決定打に欠ける印象があったからです。一応、ランキング形式には拘りましたが、上位10作品はほとんど順不同で同率1位と言っても差し支えないかなと思っています。

劇場公開が危ぶまれる状況は2021年中も当面続くと思われます。痺れを切らしたディズニーが、『ムーラン』を土壇場で配信に切替え、映画館業界を混乱させたように、今後もこうした動きは他社も含めて加速しそうです(というか既にそうなっています)。今、パッと思いつく限りでも、ぜひとも劇場で鑑賞したい・しなければならない、と心に決めている作品が何本かありますが、それらの運命が心配で仕方ありません。勿論、配信サービスの恩恵もますます受けるようになっていますので、どちらかに優劣をつけたり取捨選択することはしません。理想は、どちらもあった方がいい。選択肢は原則多ければ多い方がいいと思います(配信サービスの多すぎる選択肢はなかなか困りものですが…)。


[以下、ついでに11~20位の作品タイトルのみ挙げておきます]

⑪ 燃ゆる女の肖像

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⑫ ロング・ウェイ・ノース

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⑬ タイラー・レイク 命の奪還 (Netflix)

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⑭ ザ・レポート (Amazon Prime Video)

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⑮ 37セカンズ

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⑯ Mank/マンク (Netflix)

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⑰ The Lighthouse (輸入Blu-ray)

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⑱ FUNAN フナン

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⑲ ブックスマート

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⑳囚われた国家

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━━お読み頂きありがとうございました。

本年もステキな映画と、可能な限り映画館で、出会えますように(切実)。

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