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移住ストーリーはなぜオープンソースにはなりにくいのか?理由を考えてみた。

米国のポートランドに移住をして約半年が経ちました。私たち家族が海外移住した話が誰かの役に立つならと思い、noteでも少しずつ発信しています。一方で、移住の事業(SMOUT)もやっているため、国内外問わず、移住について詳しくなった2019年でした。

移住三昧の1年を過ごした私のリサーチからしても、移住ストーリー、つまり移住の体験談をインターネット上で発信している人はそんなに多くはありません。

テレビや新聞などでは見かけますが、自主的に情報発信をしている人は多くはない。日本国内は微増してはいますが、海外移住はとにかく少ない。海外生活ブログとして検索すると出てくるのは、海外駐在により海外で暮らすことになった、駐在帯同者による発信がほとんどです。昨今は駐在や転勤ではなくとも海外移住、地方移住を志す人も増えているため、自力移住(ここではそう呼ぶことにします)の事例を探している人は少なくはないはずです。でも、このインターネットの大海原に多くは転がっていません。

海外滞在者の統計データもそうです。外務省が毎年行っている「海外在留邦人数調査統計」があります。増えている事はわかります。アジア圏の増加などを見ると海外駐在者の増加が読み取れても、自力移住者のデータはほぼ読み取る事はできません。つまりデータからも傾向がわからない。国内地域移住については、認定NPO法人ふるさと回帰支援センター「2018移住希望者の動向プレスリリース」は参考になるかもしれません。志す人は確実に増えています。が、実際に自主的(転勤ではなく)の移住数を日本全国の自治体が抑えるのは難しい現状です(地方都市は転勤と自主移住を分離してカウントするのが難しい)。

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(自力移住の)移住ストーリーはオープンソースになりづらい。

これは自身が移住する前から持っているひとつの仮説でした。

それは移住すると忘れちゃうから?ーそれもあると思います。

発信する必要性がないから?得がないから?ーそれもあると思います。

移住ストーリーがオープンソースにならない理由

移住してわかったことがあります。

このいちばんの理由は、非常にプライベート色の強い話になるからです。自分が発信をしようと試みつつも「難しい!」と途中でストップしたものが多くありました。

駐在の場合には生活水準は一定レベルを保つために会社が補助をします。引越や住居、交通手段となる車、社会保険(医療保険)となど生活のライフラインについては、自分の基準というよりも会社の基準で決まります。自力移住の場合には、すべてが自由ゆえに個人の基準での決定事項になります。仕事ありきの移住地での暮らしのスタートではなく、暮らしありきの新しい暮らしのスタートとなるため、プライベートな情報が赤裸々になります。

プライベートがすぎる事。それが移住ストーリーがオープンソースになりづらい、いちばんの理由ではないでしょうか。

具体的に言うなら、自分たちの暮らし(たとえば住居、たとえば保険)選択を発信すれば経済状況が丸わかりになります。教育の話を書けば(これは国内でも一緒ですが)子供の通う学校も公開することになるのです。

家族で移住の場合には、また発信が困難になる

もうひとつの理由は、家族移住の場合に起こります。それは、巻き込む個人がとても多くなる事。つまり、家族は私ひとりではない。暮らしは家族でつくるものです。個々人が集まっているのが家族であり、配偶者である夫にも、子どもたちにもプライバシーがあります。

移住したあとの子どもの変化。それは本当にたくさんあって、親として日々考えさせられる事ばかりです。でも、その変化をパブリックに発信する事は、少なくとも私はしたくない。それは私ではなく、子どもに公開の権利がある情報です。

私は広報を長くやっていますが、社内での社員の発言や立ち居振る舞い、すべて基本的には個人に属するものゆえ、個人の権利を大切にしてきました。その感覚を持っていることもあり、2歳と6歳の子どもたちがその許諾判断ができる年齢になっていない以上、SNSやWebといった検索が可能な場所でパブリックには発信できません。今も取材を受けた時や家族のことに触れる執筆をした時には、必ず夫に事前確認をしています。家族の話は、夫という一個人も巻き込む話になりますから。

取材を受けた時に、自分の話が中心になりがちな理由はここにあります。でも、みんなもっと子どもの話とか、家族の話が聞きたいんですよね。

でも、移住ストーリーを聞く方法はある。

まず、断片的、エピソードで伝えるというのは移住者ができるひとつできる事だと思います。特にこのベルリン移住の漫画は面白いから必見です!

そして、知り合いになったり信頼する知人からの紹介で会ったりして個別に話せる事はたくさんあります。私がポートランドに移住した時にも、たくさん助けてもらいました。その時に、「なんでこんなにいい情報持っているのに、みんな発信しないの〜!?」なんて安易に思っていた私ですが、したくても難しかったんだ、と今になってわかった愚か者です。

移住の流れや手引きは役に立つのか?

これは自戒の念も込めて書きます。移住のサービスやメディアをやっていると(これは移住に限らず、家づくりも、結婚も、ライフステージ変化系はすべてでしょうが)つくりたくなりますよね、手引き的なコンテンツ。これでわかる!移住までのステップ解説 とか。

が、そこに移住したい人が知りたい本当の情報は、ほぼありません。本気度が少し高ければ、自分で調べられる情報しかそういうコンテンツには載せられませんから。人は、その王道から外れた時に困って、事例収集をしたくなって人を頼ったりするものです。その先が本当に価値ある情報だから。

移住ストーリーはオープンソースにはならない。

本当に知りたい情報はパブリックにWebメディアとかから拾う事は難しい。

だとしたら、移住したいときは、どうやって情報を引き寄せるのか?

移住したい時に有効な情報にアクセスする方法は?

私が今思う結論は、自分に似た(生活スタイル、家族構成、価値観)あるいは気になる先駆者を見つけること。それに勝るものはありません。多くはありませんが、探せばこの世の中、きっと見つかります。

そして、そうは言っても、生活も移住も千差万別なので、ぴったり一致する人はいないという前提のもとで、少なくとも3人、頑張れるなら5人ぐらいその場所で暮らす人(できれば今住んでいる日本や都市部の生活を知っている人)の話を聞けると選択肢が広がるでしょう。

地域への移住をしたい人で誰かに聞きたい場合には、私のやっているSMOUTで「地域の人に質問する」というコーナーも開設したので覗いてみてください。

私自身は断片的でも少しずつ、移住の話を伝えていきたいとは思っています。個別に聞きたいことがあれば、声をかけてください。

最後に、移住した今だから思う事は、私が移住前に提供してもらった情報は、その人たちのとても大事な、個人的な情報であったということです。本当にありがとうございました。

そしてこのnoteを移住に興味がある人が読んでくれているとしたら、その土地の話を、その土地で暮らす人や移住した人に聞くときは、彼らのとてもプライベートな領域に、大切な領域に足を踏み入れているということを頭の片隅にでもいいので置いておいていただけると嬉しいです。きっとその方が良い関係性を築くことができますから!

移住したい人と地域の人を繋ぐサービスをしている私なので、前者から後者へと移動したいま、伝えておきたいと思ったのでした。





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