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みんなは何に対してお金を払ってる?それが、消費や浪費からメッセージになるとき。

ポートランドに移住して以降つい最近まで、商品の購買と消費活動について考えることが増えた。

そんな2020年の年末にあるメールが届いた。アパレルブランド「ALL YOURS」からのアーカイブストアのお知らせだった。簡単に紹介すると、いわゆるセール的な告知ではあったのだが、このアーカイブストアはちょっと違った。過去に販売していた自信を持って届けた商品、でも在庫が少なくなってオンラインストアで売れなかった商品を復刻させるこの企画。普通なら、過去の商品だから少し値引きして販売するところ、この企画は、上代をあげて販売するというものだったのだ。

お金の払い方、払う意味が変わると、消費の仕方は変わる。安いから買う、はそれがいい物であったとしても浪費でお金を使っていることもあるだろう(中にはそうではない人もいるだろうが)。上代が上がった商品を買う。これは、つくり手への敬意とつくり手への感謝が、消費する際に支払ったお金に宿ると思った。

日々、必要なものを買っている。それは浪費なのか、単なる消費なのか、はたまた異なるものなのか。そして、その購買活動とモノを増やす行為は自分の暮らしにとって本当に必要なものなのか、を立ち止まって考えたいと常日頃思っている。

私の場合、この原点には米国に引っ越した際に賃貸だった鎌倉の家を引き払った時の経験がある。

これまで住んでいた家が不要なモノだらけだったと気づいた日

4人家族で住んでいたテラスハウス。入居した時には夫婦2人だったところに子どもが2人増えて、庭もありわりと広めで収納も十分な家だったこともあり、あれよあれよと気づかぬまにモノが増えていた。忙しいことにかまけて、都度自分たちの所有物を整理することなく、増え続けた。

そして引越しの2ヶ月ほど前。海外移住だから極力モノを減らし、送るものは本当に大事なものだけ(楽器とか着物とか入手できないもの)にして、どうしても捨てられないものは実家に送り、他は何かしらの形で処分することになった。そうして「処分」対象になったものは想像以上の多さだった。極力、友人知人に譲ったが。が、それでも大量に残ったのだった。モノを所有するために設けた箱(収納というやつだ)の多さ、それもプラスチックの多さに愕然としたのだった。

それ以来、私はモノを買う、増やす行為に億劫になった。購入する意味、所有する意味を考えるようになった。この流れは、COVID-19を経て暮らしのスタイルが変わった多くの人たちにも訪れているように思う。少なくとも自分を着飾るモノの消費の意味を考え直した人が多いのではないか。

季節はずれな話題ではあるが、11月末日のセール ブラック・フライデーもここ数年変わってきていることにもちょっと触れたい。

パタゴニア が仕掛け始めた「ブラック・フライデー」と消費への問いかけ

ブラック・フライデーの消費のあり方に疑問符を投げた、最初の有名な企業はパタゴニアだろう。2011年、NY Timesに「DON'T BUY THIS JACKET」の広告を出した。そして、2016年、店舗を閉鎖し、そこに環境に対する自分たちのメッセージを掲げた。その1週間の売上は100%環境保護団体への寄付を明言した。以来、毎年この日の周辺に、パタゴニア は消費者に対して強いメッセージを発信している。

また同ブランドは、近年(まだ日本には上陸していないが)自分たちの商品を回収しリメイクした「WORN WEAR」というストアを公式サイト内に持っている。オンラインストアのトップページのかなり特等席から飛べるようになっている。

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2020年のブラック・フライデーは「消費する日」から「消費を考える日」になった。

パタゴニア以外のアウトドアメーカーも次々と行動を起こしている近年のブラック・フライデー。アウトドア・ブランドのREI、EVERLANEなどはここ数年継続して店舗を閉鎖している。今年は、EARTH BREEZEは、ブラック・フライデーに用意していたマーケティング予算を100%寄付に当てたらしい。小商向けのECプラットフォームshopifyもその日の売上の一部を寄付すると発表していた(参考記事)。

ブラック・フライデーは、これらのブランドにとっては、消費を促す日ではなく、消費の意味を生活者と一緒に考える日だ。ブランドが行動をして、そのメッセージを発信・共有することで、生活者の消費を浪費ではなく、別の意味するところに変える、そんな日にブレック・フライデーはなりつつある。

2021年はどこへ向かう?

そして2021年。どんな買い物をするだろうか?
まず、買うか。買わないか。の選択がある。
そしてどこで買うか。何を買うか。の選択がある。
その物自体に対してだけではなく、そこに宿る意思や思想への応援や支持の意味でお金を払う人が増えてくるといいなと個人的には思っている。

つまり消費活動は、単なる消費でも浪費でもなく、意思表示であり、メッセージだ。自分を取り巻く人たち、これからの家族と自分の暮らし、そして購入するブランドに対しての。

まだ先だけど今年の11月最終金曜日はどうなるだろうか?ショップはセールを実施し、その月の売上増加を狙うだろうか?そして私たち生活者は?

私も「バンブーロール」というトイレットペーパーストアを運営しているので最後に紹介しておく。

なぜなら、トイレットペーパーは消費する商品の代表格だから。だからこそ、つくっているものの責任として、消費の仕方に向き合っていきたいと思っている。


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