根本佳代子|Kayoko Nemoto

photographer @JAPAN / TOKYO キヤノンギャラリー銀座・大阪「…

根本佳代子|Kayoko Nemoto

photographer @JAPAN / TOKYO キヤノンギャラリー銀座・大阪「光を紡ぐ」 川風のガーデン「光を紡ぐ-薄陽-」 CO-CO PHOTO SALON「仄灯り」 https://kayokophotography.myportfolio.com

最近の記事

いつかもまたも

また行きたいと思っていた場所が、いつの間にかクローズしていました。その知らせを聞いたとき、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。人生の中で、「また」訪れるはずだった期待も、希望に満ちた「いつか」も、すべてが不確実であることを改めて感じました。 不確実性に満ちたこの世界で、私たちは何を頼りに生きていけば良いのでしょうか。その不確実性こそが人生の本質なのかもしれません、そう理解しているつもりでも、いつも心は揺れる。

    • 傘と紫陽花

      雨が降りしきる日でした。なかなかやまない雨の中、私は近所の美味しいお豆腐屋さんに足を運んでいました。軒先には鮮やかな紫陽花が咲き誇り、その美しさに見惚れてしまいました。「紫陽花が綺麗ですね」と声をかけると、お店の方は微笑んで「紫陽花にはやっぱり雨が似合いますよね」と返してくれました。 私たちはしばし軒先の紫陽花に目をやり、その色彩に心を奪われていました。ふと気づくと、買ったおあげを預かっていてくださいとお願いし、快諾してくださったお店の方に感謝を述べつつ、まだ雨がザーザーと

      • 東京は雨

        雨の匂いがしました。 昨晩のこと、気温は下がり、その後、突然の雷雨が降り始めました。街のノイズは消え、一気に雨音のサウンドに変わりました。フットサルをしていた人たちは一目散にクラブハウスに駆け込んでいきました。雨の中でもフットサルは続けられることが多いので、雷雨の激しさがよく伝わると思います(フットサルは中断されたようでした、危ないもの)。雷が轟き雨が集中的に降り、ウェザーニュースの5分毎の予報を見てみると、濃紺の雨マークに「ゴォーー」と表記されていました。雷に怯えてしまった

        • 福島の祖母のこと

          数年前、行動制限が解除されてからしばらくして、地元の福島に帰省したら、祖母の右目が見えなくなっていました。おそらく近い将来、左目も見えなくなります。コロナ禍での不要不急の言葉に囚われて、田舎への帰省をずっと自粛していましたが、私は大切なものが見えていませんでした。人生において、そういう間違いをたまにしてしまう… もはや、私が見ている解像度で世界を見ることができないし、私の顔も果たして見えているのでしょうか。泣いているよ、笑っているよ。 せめて、自宅から見える名もなき山々に映る

          KYOTOGRAPHIE 2024

          今年も春の京都へ。 目的は、KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭。 KYOTOGRAPHIE 2024のテーマは「Source(源)」。2023年の「Border」が内外の境界線や関係性をテーマにしていたのに対し、今年はより内側、全ての源や始まりに焦点を当てることで、より深い核心に触れたいという意図が込められているそう。 今年も二条城を出発点にして、一筆書きのように周ります(以下の記録はKYOTOGRAPHIE 2024のプログラム順) 00 Information

          東京と桜

          なかなか咲かない春でした。 東京の桜は、今年も早いと言われていましたが、統計を取り始めて以来、最も遅い開花でした。東京ではすでに落ちた花びらさえ跡形もなく消えてしまいましたが(子供の頃から、あの花びらたちはどこに行ってしまったのだろうと毎年思っています)桜前線は東北地方から札幌までぐんぐん北上しているようです。いいな、桜をまだ愛でることができて。 桜の花びらが落ちる速度は、秒速5センチメートルだそうです(そう、あの映画です)。花びらに手を伸ばしてみましたが、今年もつかむこと

          3月のおわりに

          3月31日。まるで夏のような陽気でした。 花粉対策で空気清浄機をずっと稼働させていますが、窓を開けずにはいられません。思い切り窓を開けてみると、ふわりと心地よい風が舞い込んできました(鼻はむずむず、喉はいがいがする)。冬の間ずっと気になっていた何足ものコンバースのスニーカーをしっかりとオキシクリーンのようなものでつけ置き洗いして、ベランダに干した靴たちは陽光を浴びてぴかぴかに輝いていました。 Spotifyからは、最近観た映画の主題歌、藤井風さんの「満ちていく」がリピート再

          サクラ記念日

          写真を始めた時に、大好きだったものをいくつもやめました。 ヒールは全部捨ててスニーカーに替えて、ひらりワンピースも全部捨ててデニムに履き替えました。小さい頃に「サウンドオブミュージック」のマリア先生の揺れるスカートに憧れ、ずっとスカートっ子だったのに。お料理は時短ばかりを意識するようになり、あれほど持っていたリップだって今の流行りがマットなのかグロスなのかさえ分からない。こんな風に写真に全振りしてきたけれど、本当に正しかったのかな。私の人生はそれで満たされているのかな。 こ

          煌夜

          2011年、東日本大震災が起こった日。その日の天気も、空のことも、私は何一つ覚えていませんでした。空に思いを馳せるなんて、もちろんできなかった。10年の時を経て、友人があの日は星が綺麗だったと教えてくれました。星が瞬いていたことで、少しでも救いを感じた人がいたのかもしれない、そう思うと胸がぎゅ…っとなりました。 変わり果てた福島の地元を見た時のこと、その時、シャッターを一枚も切れなかったこと、それでも残さなきゃ、と思って、のちに写真を始めたこと、写真は愛だと信じたこと。それ

          2月29日

          4年に一度の今日。4年前の自分は何をしていたのだろうって写真を見返してみたら、写真展に行って、珈琲を飲んで、あいもかわらず、一日中写真を撮っていました。そこに自分の姿は一枚もないけれど、撮っている私は楽しそうでした。その’日々’は変わらないのに、街も人も、色々と変わってしまいました、きっと私も…。そういえば、毎年見事な近所の椿が今年は満開になりませんでした。万物は、過ぎゆく時間とともに変わりゆく。 4年前にはまだ戦争も始まっていなかったし、今はあの頃よりも世界は混沌としてい

          冬の煌めき

          冬の寂寥と夏のような煌めきが交錯する日々。 心の破片を優しく拾いあげてくれるのは、微かな光や風のそよぎ、小さな言葉などの些細なものたち。それらのものは、他愛もないことや他愛もない時間が、人生にとってはどれほど愛おしいものかを思い出させてくれる。 私は今日も、いつも、を、ここ、で繰り返す。

          安否確認

          友人から「安否確認!」と連絡がきたので。 見たいもの見たくないもの見えてしまうもののバランスが崩れてきていたので、SNSをそっと閉じて、暫く距離を置いていました。誰に言われるでもなく、毎日投稿を課していた時期もあったのに1ヵ月以上投稿しなかったのは初めてかもしれない(夕陽は相変わらず撮り続けていました) 謎の頭痛と腹痛に悩まされ、体調が思わしくない日が続いています。そんな中、声をかけてくれたり、誘ってくれたり、きっと何も言わずに見守ってくれている友もいて、心の強ばりを解き

          2024年1月1日

          こちらの海は穏やかでした。 東日本大震災で、地元福島が地震と津波と火災で被災しました。警報がなるたびに震え、映像を見るたびに、胸が張り裂けてしまいそうになります。どうかあちらの海も穏やかに凪いでくれますように、心から心から、本当に心から祈っています。そして、被災地の方も、被災地以外の方も、あたたかく過ごせていますように。

          多摩川の仄灯り

          多摩川に仄かな灯りが見えました。自分の2023年の終わりにふさわしい気がしています。 2023年のまとめをしたかったけれど、思いは募るのに言葉が全然出てこない…文章を書くのが実はすごく苦手で、展示のステートメントやあとがきは、半年くらい推敲しています。まとめは諦めて、このまま紅白の結果を見届け、ゆく年くる年で締めようと思います。 おわりとはじまり、いつでもあたたかい夜を。

          2023年12月28日

          私の故郷は福島県いわき市。実家は田んぼと山に囲まれていました。最寄りのコンビニまでは徒歩で1時間、電車やバスは1時間に一本(バスは後に廃線)、小学校の全校生徒はいつでも55人位で全員友達でした。 そんな環境で育ったからか、目にうつるもの、耳で聞くもの、匂い、東京の全てが情報で溢れすぎていて(思えば、上京してすぐに東京に面食らって高熱で倒れ数日間入院したこともありました)。たまに東京から抜け出したくなって、そんな時は多摩川に足を運びます。年に何回かはレンボーブリッジに行ったり。

          仄灯りを終えて

          根本佳代子 写真展「仄灯り」 CO-CO PHOTO SALONでの会期を終えました。皆様、本当にありがとうございました。 https://coco-ps.jp/exhibition/2023/10/1392/ 会場奥の1000×1500の写真。1秒にも満たない1/160秒で切り取った世界は、低照度の時間帯なので会場では見えづらかったかもしれません。でも、見えすぎることで疲れてしまい見なくなることや、見えづらいからこそじっと目を凝らすから見えてくることって日々の生活の中でも