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【お客様の不便を解決する プログラミング】

〜マイルストーン 2 〜
(写真:テーブルに飾ってあった花の名前は?という質問が来ることも・・)

こんなに小さな、10部屋程度の宿に、プログラミングとか、正直いらないんじゃないかな。そんなデジタルな世界とは無縁だろう。なんて思っている人も多いかもしれない。実際に、開業した頃は、メールで予約だなんて怖いわあ・・電話で話したこともないお客様から、知らない間に予約が入るなんて無理むり〜などと私達も口にしていたのだ。

1994年の開業時には、まだパソコンもなく、重たい携帯電話を得意げに持っていたくらいだったと記憶している、予約は全て電話で受けていた時代だった。

1995年のある日、夜中にジャパネットタカタの番組を見ていて、ものすごい決断だ!と言いながら衝動買いしたのが、Windows95のフルセットだった。数日後、プリンターや専用の台を含む大きな箱が運ばれてきた。たぶん、ダンボール5個以上はあったと思う。その箱を玄関に積み上げたまま、説明書を見て夫と2人途方にくれた日のことをよく覚えている。

なんといっても、インターネットにつなげるまでが大騒ぎだった。
URLの概念もわからないし、調べようもない。
アカウントの設定では、住所を入力すればいいんじゃない?と思い込み、
naganoken suzakashi・・・(長野県 須坂市・・・)なんて、実際の現住所をローマ字で打ち込むという騒ぎ。今では笑い話だが、本当にそんな状態だった。

ピーヒョロロロ・・トゥルルル・・・
ビヨーンビヨーン・・ジジジー・・・

と言いながら回線がつながり、Windows 95の、あの画像が現れた時の感激と言ったら、それはもう素晴らしかった。


自社に予約をしてみたら、ショックな事実が待っていた

Windows 95との格闘が始まってから、独学でホームページを作ってみたり、
顧客管理のソフトを使ってみたり、色々な挑戦は続いた。
それでも、予約はまだまだアナログ時代。雑誌じゃらん、るるぶ等を見た方からの電話が全てだった。

旅の窓口という会社サービスから、じゃらんネット、楽天トラベルなど、送客手数料を取りながら運営するOTA と呼ばれるシステムが主流になってきて、予約の経路もどんどん変わっていった。

時代は1人1台のスマートフォンが主流となった。
今、お客様が当館に予約を入れてくださるルートは、どのようになっているか。
入口は把握はしているが、予約しようとされているお客様目線で、その全てを常に試していたかどうか。実際に、どのような便利な機能が増えていて、逆に不便な点はどこなのか、それらを体感しておくことは重要だ。

さっそく、予約ルートから整理をしてみる。

・直接宿への電話(リピーター様に多い)
・直接宿へのメール(予約確定にはならないのでメール返信など)
・FAX(意外とまだある!予約確定にはならないので電話返信など)
・手紙(これも結構ある!予約確定にはならないので電話返信など)
・自社ホームページの予約システムから
・OTA から(主に、じゃらん・楽天・JTBるるぶ・マイナビ・・諸々)
・Facebookなどのメッセンジャー
・公式LINEから
・Googleマイビジネスのページからのメッセージ
・旅行会社経由(電話またはメール)
・オーナーや、スタッフへの直接電話
・オーナーやスタッフへの直接メッセージ
・その他

これらが日々混在しているから、予約帳を使ったアナログ管理だけではミスが多発してしまう。
そこで最近は、サイトコントローラーを使って、部屋やプランの出し入れ、
リアルタイムの状況を、場所や時間に関係なく把握できるようにクラウド管理をしている。電話も、宿にかかった電話を転送する機能もあるから、実際に予約電話がかかってくるから留守にできない。というようなこともなくなった。

何て便利になったことか。と思うと同時に、なんと複雑になったことか、と嘆く同業者さんがあるのも事実である。
これだけの道筋でお客様からのアプローチがある中で、では、その受け答えはどうなっているのか。というところは、ここ何年も手を入れていなかった。

自社サイトから予約した場合、キャンセルはどこからするのか?
OTAで事前決済したけれど、人数が変更になった時の変更方法は?
予約ルートが違うお客様に対して、こちらからのご案内方法は?
などなど、気にしはじめたらキリがない。
しかしこれは、その気になる部分というのは明らかに『お客様にとっての不便な点』であったりする。ここは手を入れないわけにはいかないだろう。

実際に、親戚の名前と住所を借りて、自社に予約をしてみた。
いくつか予約をしていくうちに、
『けしからん!なんて不親切な宿なんだ!』
『わかりづらいなぁ』
『面倒だなあ・・』
というようなサイトもあることが発覚した。

サービス内容は日々進化をしている。こちらはプランを出す一方で、お客様の立場に立った予約の成立までの流れを細かく検証していなかったことを猛省した。
確かに、これなら電話の方が楽だし速いわ。という意見まで出た。
予約の時点で、こんなに手間をかけていただいてしまっているのか・・
これは実にショックだったし、改善すべき点だ。


質問に答えている時間は、年間何時間になるのか

そこで、ふと考えた。そういえば、予約に至るまではどうか。
様々な質問を、何度も何度もやりとりして、やっと予約となるケースも珍しくはない。そこには、どんな質問があるのか、今一度スタッフで内容を出し合ってみた。
ざっと書き出すだけで、300個くらいが出てきた。
よくある質問が300だなんて、どれだけ表に出している情報が不足してるんだ!と怒りたくもなるが、その実際は、どこかに既に書いてあったり調べればわかるようなものも多いのが実際のところなのである。

お客様が必要とされているのは、その質問のその先にあるものは何か。
どんな未来を望むからこその質問なのか。
そこをしっかりと観る必要がある。

お客様からの質問の電話の平均時間を測ると、1件で約8分。
メールでの回答にかかる時間も、10分以上かかることも多い。
こんなに小さな宿でありながら、質問の電話は多い時は15本以上きたりする。
その後の記録も含めると、1本12分の時間を要したとして、その日は180分も質問に答えていたことになる。なんと!3時間だ!
SNS経由の回答もメールの場合も、誰がいつ、どう回答したかという情報管理も、クラウドを活用したとしても追いきることは困難だ。

顧客カルテに書き込むか、クラウド管理の台帳に記入するか。
その手間も時間も合算したら、年間にどれほどの時間数になることだろう。

『ゲレンデまで100メートルって書いてありますけど、
ゲレンデまでどれくらいですか?』

えっ? 1メートルが100個分ですけど・・なんて答えは怒りをかうだろう。
この、最も多い冬の質問の背景にあるものは大きい。

お客様からの質問にどんな回答を用意できるかというのは、お客様の「旅」を成功へとサポートできるかどうかの大切な鍵となる。
これが、お客様に時間と労力を使っていただくことなく、こちらで用意できていれば本当に素晴らしい。
そこを、プログラムの力で充実させることはできないだろうか。

小さな店舗でも、素人でもできるプログラミング

専門家でもないのにプログラミングなんて、わけのわからないこと、できるわけがない。本当にそうだろうか。
もちろん、専門家なしではかなわない内容のものもある。しかし、ちょっとした学びと工夫で、多くの予算をかけなくても私たちにもできることは沢山ある。

・FAQのページや動画をつくる
・OTAのチャットボットのシステムを利用する
・質問ページが自動的に更新できるように、Googleフォームで入力してスプレッドシートに反映させて蓄積していく
・顧客ごと、プランごとによくある質問を盛り込んだページや動画を作成していつでも閲覧できるようにしておく
・Googleフォームの条件分岐を設定した質問に答えることで、「あなた」におすすめのプランへ導く

短時間でこんなアイディアが出てきた。
これはもう、ゲーム感覚で作り込んでいけることばかりだ。
なぜかといえば、3人の息子達にとっては、これらは難しいことでもなんでもない日常の操作に過ぎないからだ。

彼らは、自分たちが参戦したパソコンゲームを動画で録り、AIを使った音声で会話を入力し、音楽までつけて対話スタイルの実況中継番組に仕上げてYouTubeにアップしていたりする。宿の仕事でも、ネタを提供する大人達の準備が整えば、たちまち成果物を出してくるスピード感だ。誰か1人が苦労して徹夜して、というようなスタイルではなく、楽しそうにサクサクと分業しているから驚きだ。

この2日間だけでも、やるべきことがいっぱいで、うーん、となってしまいそうだが、言ってみれば基本中のキホン。
ここができて、はじめて次へと進めるというものだろう。
これまでの市場、宿の顧客の実態、お客様にかけている不便なこと。
これを調査したり改善したり、細かい仕事をやらずして新しさだけを追求しても無意味であると、あらためて痛感している。
さて、さっそくFAQ動画の作成にとりかかろう。

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