2024/04/30『長いお別れ』

火曜日 くもり

アレクサが今日で4月が終わり、と言った。
反射的に今年も3分の1が終わったと計算してしまう。
だから何だというのだ。

中島京子『長いお別れ』読了。
おなじ著者のエッセイ『小日向でお茶を』で知った本。
認知症の父親を家族で介護した経験をもとにした連作短編集というので読んでみたくなった。
図書館で見つけた大活字本がちょうど読みやすいのがうれしいような寂しいような。

一篇ごとに時間は進み、すなわち、父親の認知症も進んでいくのがせつない。
気丈な母親、なにやかやありながらも力を合わせて支える3姉妹の様子を、ユーモラスに描いている。
構成がよく、関係ないと思われたエピソードが、ピリリと効いている。
特に、ラストの孫と校長のやりとりが素晴らしい。
間接的に、父親も同様の人格ある教職者だったことを思わせる。

しかし、母のことで、まさに今、足を踏み入れた領域なので、興味深く読んだが、そんな事情なので手放しでは楽しめない。
では、母のことがなかったら手放しで楽しめたのかと思うと、それも少し違うように思う。
こういう、病気や障害を扱った小説は、興味深く読みはするけど、後で必ず思う。
当事者やその家族がこれを読んだらどう感じるだろうか。
著者は認知症の父を看取る経験をした人だから、ただ題材のために描いたわけではないだろう。
でも、と思う。
ユーモラスに描く必要はあったろうか。
いや、ユーモラスに描かれなければ救いのない闘病記になってしまう。
小説だからこれでいいのだろう。
が。
映画化された方は見ない方がいいみたい。