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2023/11/14 『こぐこぐ自転車』

火曜日 くもり時々雨

お店で食事をしていたら向かいの倉庫風の楽器店のようなイベントスペースのようなところで、ホイッスルの販売会があり、試奏もできるという。
行ってみたら、試奏しているのはプロ?というような達人ばかりで、とても参加できなかった。
このあと、初心者参加OKのゆるゆるセッションがあるとかないとか、そのあたりで目が覚めた。
願望丸出しの夢だったが、夢の中でも意気地なしだ。

***

伊藤礼『こぐこぐ自転車』をkindleで読了。
これも宮田珠己さんの講演でおすすめ本リストにあったもので、文庫版あとがきによると「古希を過ぎていた人間が、勇躍自転車を駆って日本中を走り回っている話」だ。
何よりまず、題名がいい、スキスキ。

伊藤礼は伊藤整のご子息で、Wikiによると、英文学者、エッセイスト、翻訳家で元日本大学芸術学部教授、伊藤整の著書をまとめたという功績もあるそうだ。

67歳で自転車を始めた著者は、事故で鎖骨を折ったり、歯を折ったり、トラブルを繰り返しても懲りることなく自転車を増やし、行動範囲を広げ…
もう老後の趣味のレベルでない。
でも、楽しそうで、ちょっとうらやましい。
人は、先が見えてきたあたりで思い残したことを数えるのかもしれない。

初めは、自転車?とそれほど興味が持てなかったけど、だんだん面白くなった。
ユーモアと天然のスレスレの感じの文章がくせになるのだ。
自転車の話が分かればもっと面白いのだろうな。

宮田珠己さんの講演では、『崩れ』の幸田文と同じく、何歳からでもその気になれば何でもできるという例として取り上げられていたけれど、こっちの方がよほど楽しそうだ。
一番の違いは天真爛漫なこと、それはオタクまたは何かに常軌を逸して夢中になれる人の共通点だ。
天真爛漫に思ったことを書くあまり、箱根の山中で声をかけてきた自転車好きの人を「ゴマのハエ」呼ばわりするなど暴走気味のところも含め、愛すべき無邪気さだ。

伊藤礼さんのことは、宮田珠己さんの話を聞くまでまったく存じ上げず、今年、亡くなったことも同時に宮田珠己さんに聞いて残念。
ネットで写真を見ると、実直な学者先生という風貌の伊藤センセイ、実生活では礼節ある人だったのではないかと想像するが、この本の中では、周りにもいる、思ったことを後先考えず、次々全部言葉にしてしまうタイプのご老人と大きな違いがないようにも思う。

…ん? あれ?
この日記もそうか。