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2024/04/28 『ボクの音楽武者修行』

日曜日 晴れ

体調は昨日よりは上向き。
そうなると気持ちも上向きになり、予定がないということは趣味に没頭できるということではないかと考え直し、図書館に予約の本を取りに行く。
いつもの休日よりも格段に静かな閲覧室の壁際のソファに読書に没頭している高校生がひとり。
同志、とひそかにほくそ笑む。
雑誌の部屋で『本の雑誌』の最新号を読み、読みたい本リストが長くなったのは悩ましいけれど楽しい。

小澤征爾『ボクの音楽武者修行』読了。
26歳の時の著作だそうで、私が生まれる前の刊行だけど、最初に読んだのは20歳前後かな。
その文庫本はどこかへ行ってしまったので後年買いなおして、でもその時は読んだかどうか。

小澤征爾の亡き後の今読むと格別の感慨がある。
初めてヨーロッパに渡り、スクーターを乗り回し、コンクールで受賞、指揮者人生を歩み始めた著者は、あとがきにも「まだ音楽家としてはかけ出し」と書いている。
真っ正直な記録は何の衒いもなく、読んでいて気持ちがいい。

終盤の、フランス、ドイツ、アメリカのオーケストラの気質の違い、さらには日本のオーケストラのこれからについて書いたところは特に興味深く読んだ。
それ以降の時代の変化を小澤さんはずっと見てこられたわけだ。

写真も多く載っていて、ニュースか何かで見た最晩年のステージでの様子や、少し前の追悼番組で見た20年ほど前の堂々の指揮の様子と頭の中で並べて思う。
偉大なマエストロも、それ以外の人も、ひとしく人生の時間には限りがあるのだ、ということを。
その持ち時間を余すところなく使った人だけが、たどり着ける境地というのがあるのだろうな、きっと。