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新型コロナウィルスの発生源について④原子力科学者会報(BAS)の記事抄訳その3(ラスト)

最後の章では、自然発生説と人工説の二つのシナリオをテクニカルに考察します。

二つのシナリオの比較

①発生場所

最も近い種のコロナウィルスが雲南市の洞窟から見つかり、それが自然発生説の最も重要な根拠になっている。

しかし問題は、パンデミックは1500キロ離れた武漢で起きたという事だ。ホースシューコウモリの行動半径は50キロで、武漢まで移動する事はない。中間宿主との頻回なコンタクトも確認できない。途中で誰も、何も感染させずに突然1500キロジャンプしている。

研究所からの流出の場合、何の矛盾も起きない。

②自然発生と進化

ウィルスは一気に他の形にジャンプする事はない。コウモリに合う形に作られたスパイクタンパク質は、繰り返し他の種に感染するようになる為には何度も繰り返しジャンプしなければならない。


SARS1の場合、コウモリからジャコウネコに感染する形にスパイクタンパク質が作られるまで、6回のRNAの変換が起きていた。

それから14回の変異で人間に徐々に感染しやすくなり、最後の4回の変異で、エピデミックが起きた。

しかしSARS2の驚くべきところは、このウィルスは、少なくとも最近までは全く変異していないのだ。

最初に現れた段階で、すでに「人間に結合しやすい」タンパク質を持っていた。

ブロードインスティチュートのアリーナチャンは

「SARS1が人間に感染しやすくなるように変化した最終段階と同じような形をSARS2は初めから持っていた。」


と書いている。

自然発生説を唱える人ですら、SARS2のゲノムは一つしかない事に同意している。バリックは

「武漢で確定された品種は、単一の発生源のものである事を示す」


と話した。(※2021年6月にバリックは人工説について調査を要求するメンバーになりました)。

SARS2のゲノムが一種類しかないという事は、中間宿主の存在に繋がるヒントが何もないという事だ。

人工的に作られたウィルスと仮定すると、人間に結合しやすい単一のゲノムを持ったウィルスが存在する事に何の矛盾もない。

③フリン切断部位

フリン切断部位というのは、ウィルスの表面に沢山ついたスパイクタンパク質の真ん中にある小さな部位で、感染性に大きく影響し、しばしばウィルスの起源特定に用いられる。

スパイクタンパクには2つの異なる働きをするサブユニットがある。

S1と呼ばれる部位はウィルスのターゲットを認識する。人間の軌道上にあるACE2タンパク質と呼ばれる酵素だ

次にS2は、細胞に取り付いた被膜内に入り込む酵素だ。いったんウィルスの被膜が細胞に結合すると、ウィルスのゲノムは細胞内に注入され、タンパク合成組織はハイジャックされ、ウィルス製造に使われてしまう。

ところが、この侵入はS1とS2のサブユニットは切り離されていないと侵入を開始できない。

そこで、S1S2の結合部位にあるのがフリンという裂け目で、スパイクタンパク質が正しい場所に位置するよう溝を作っている。

ウィルスは経済的にデザインされているので、元々は裂け目を持っておらず、これは細胞が割いてくれる。

人間の細胞の場合はフリンという、タンパク質に切れ目を入れるツールを持っている。フリンはターゲットとなる部位を示す情報があれば、どんなタンパク質でも切れ目を入れる。

その情報というのはPRRAというプロリン、アルギニン、アルギニン、アラニンのアミノ酸配列であり、SARS2のフリン部位の中心となる部分だ。

ウィルスというのは皆トリックを使うが、何故フリン結合部位が際立っているのか。

というのは、すべてのSARS関連ベータコロナウィルスの中で、SARS2だけが唯一フリン切断部位を持っているからだ。

他の全てのウィルスは他のサイト、他のメカニズムでS2タンパクを切り離すのだ。

それならばどうやってSARS2はフリン切断部位を獲得したのか?自然に進化したのか?それとも研究者によってGain of function リサーチの手法で獲得したのか?

自然発生の場合、ウィルスは変異又は再結合によって進化する。RNAをコードするアミノ酸が一つずつ入れ替わっていくうちに自然選択により新しいコードを獲得する。

SARS2の場合は、完全に可能性は無いとは言えないものの、S1、S2の結合部位にピッタリと4つのアミノ酸の変異が同時に起きた事になる。

変異というのはRNAをコピーする間にまれに起こるエラーのため、再結合の方が可能性は高いだろう。

再結合というのは、二つのウィルスがたまたま一つの細胞に同時に侵入してしまった場合に起こる不慮の遺伝子交換だ。

2つのウィルスの子孫はお互いの遺伝子の欠片を持ち合う事がある。ベータコロナウィルスは同時に侵入した他のベータコロナウィルスといかなる情報でも交換しあえる。

しかし問題は、他のコロナウィルスは、誰もフリン切断部位を持っていないのだ。

自然発生説支持者は、きっと知らないだけでフリン切断部位を持っていたコロナウィルスがあるのだろう、と説明する。

しかし、フリン切断部位はコウモリへの感染にとって全く無用なので持つ必要もなく、また実際に見つかっていないのだ。

自然発生説支持者は、フリン切断部位は、人間からもたらされたのかもしれない、と説明する。

もしそれが実際に起きた事ならば、病院調査の段階で、患者に進化の途中にあるウィルスが見つかるはずである。

しかしそのような事実は全く見つかっていない。

WHOレポートによれば、2020年12月以前には潜在的にSarsCov2に感染したとみられる症例は見られない、のである。

という訳で、SARS2がどのようにして、フリン切断部位を拾ってきたのかは、変異でも、再結合でも説明がつかない。

そこでゲインオブファンクションについて考えると、フリン切断部位の説明は全く問題ない。

バイオテックを起業したスティーブンクエイはこう書いている。

「少なくともフリン切断部位をウィルスにつけて感染性を上げるゲインオブファンクションの実験は少なくとも11回公開文献として出版されている、その中には武漢ウィルス研究所の石正麗によって書かれたものもある。」


④コドンへの疑問

フリン切断部位からは自然発生説を考えるもう一つの論点がある。DNAというのは3つのDNAが一つのタンパク質をコードしている。3つのグループを読むと、4種類のDNAユニットで64種類の並び方をコードする、これをコドンと呼ぶ。

アミノ酸は20種類しかないので、一つのアミノ酸が複数のコドンを司る事もある。

例えば、アルギニンは、CGU,CGC,CGAなど6種類のコードが司っている。

興味深いのは、器官によってコドンの好みが違うのだ。

人間の細胞はアルギニンをCGT、CGCまたはCGGでコードする事を好む一方で、CGGはコロナウィルスには最も人気のないアルギニンのコドンである。

SARS2ゲノムのフリン切断部位のアミノ酸配列を思い出してほしい。

現在見つかっている最も近い遺伝子配列を持っているのはRaTG13だが、SARS2はRaTG13と比較するとちょうどS1とS2の結合部位に、12のヌクレオチドが挿入されている。

T-CCT-CGG-CGG-GC


CCTはプロリン、CGGはアルギニン、GCはアラニンの開始コードだ。

最も奇妙なのはCGGが二つ並んでいる点だ。

CGG自体SARS2のアルギニンをコードしているのは5%であり、二回続けてコードしている作りはあらゆるベータコロナウィルスに見られない特徴である。

「そうですね。しかしあなたの言い方では、それは起こりにくいと言っているようですーウィルスというものは、あり得ない出来事のスペシャリストですよ。再結合というのは自然界で、とてもとても、頻繁に起こるのです。私たちがサンプルを十分に集めていないのでしょう。」


グラスゴー大学のウィルス学者デビットロバートソンはこう話す。確かにウィルスの変異というのは起こりえないような結果につながる事がよくある。

しかし、生き残る変異は10億にひとつだ。フリン切断部位がSARS2で自然におこる可能性を説明するにはあまりにも強引だ。

人工説であれば、こちらも簡単である。

つまりCGGは人間でアルギニンをコードする為、頻繁に使われるのだ。

「ウィルスのシークエンスから最初にフリン切断部位を見つけた時、あのアルギニンのコードを見た時、私は妻に、これが、銃口から出た煙だよ、と話した。」
「この特徴は、ウィルス自然説派にとっては強烈な試練になるだろう。」


著名なウィルス学者でCal Techの前代表のデビットバルチモアはこう話した。

第三のシナリオ

自然発生説を牽引するデビット ロバートソンは、SARS2は人間以外の動物にも感染する事を指摘し、それがウィルスがコウモリから直接人間に感染力を持つ事になった理由だという。

中間宿主も、人での調査でも変異途中のウィルスが見つからない理由は、コウモリの体内ですべてが完了した為だ、とする。

一つ問題点は、もしSARS2がコウモリから直接人間にジャンプしたのであれば、コウモリにおいてもSARS2の感染が見られるはずだが、そうした事は無い。

「コウモリのテストの結果、SarsCov2には感染が認められなかった。」

自然説に懐疑的な科学者グループの発表である。

しかし雲南の洞窟で見つかったRaTG13がSARS2に最も近い種である事から石正麗が採取した8種類のウィルスの発表は大きな知見になるに違いない、しかしながら論文は発表される事が無かった。

コウモリの体内でSARS2が作られていたとしたら、最初の罹患者は8年間で1300種類のサンプルを採取した研究者になるだろう。武漢と雲南のミッシングリングはここでつながる。

デビットロバートソンの説は自然説、研究所流出説を合わせたものなのだ、そして前述したように、フリン切断部位の獲得については説明が難しい。

今まで分かったこと

どちらの仮説も、直接の証拠が無い為除外が出来ない、しかし自然説よりも人工ウィルス説の方が説明が容易である。

★武漢ウィルス研究所はSARS2を作るのに必要なゲインオブファンクションリサーチをしていた。

★研究者はワクチン接種を行わず、BSL2という最小限の設備で実験を行っていた、従って、ウィルスの漏出は起こりえる事だった。

★中国全土で、パンデミックが起きたのは武漢ウィルス研究所のすぐそばだけだった。

★ウィルスはまるで人間型マウスで実験した場合のように、人間に高い感染性を持っていた。

★ウィルスは他のベータコロナウィルスに一切見られない、フリン切断部位を持っていた。

一方で自然発生説は、一つの仮説で平行線を辿っている、しかし裏付ける証拠は何もない。SARS2に感染したコウモリすら見つからない。

8万もの動物をしらみつぶしに調査しても見つからない。中間宿主を持たずにいきなり人間にジャンプする証拠はない。

何故武漢でだけこのようなアウトブレイクが起きて他の場所では一切起きなかったのかも説明できない。

どのようにしてフリン切断部位を獲得したのかも説明できない。

従って、我々は武漢ウィルス研究所の情報にアクセスする必要がある、しかし中国当局の協力を得る事が出来ないでいる。

次のパンデミックの発生を抑えるためには、発生源の特定は必要不可欠なのだ。

1中国の研究者 2中国当局 3危険な実験を放置したウィルス学者 4武漢ウィルス研究所に技術と資金を提供したアメリカNIH

は、ゲインオブファンクションリサーチについて説明する責任がある。

NIH所長のファウチは5月11日のヒアリングで

「NIHとNIADは武漢ウィルス研究所のゲインオブファンクションリサーチに資金供与をしていない。」

と話しました。

これは山のように積みあがった証拠から見て驚くべきことで、ゲインオブファンクションリサーチを「疾患を引き起こす能力を開発する全てのリサーチ」とは”定義””しないという、モラトリアムの象徴のような話法の表明です。

ファクトチェックに対してダスザック率いるエコヘルスアライアンスは

「ゲインオブファンクションリサーチは人間のウィルスの感染性を上げたり、感染性を悪化させ広める事に特化した研究です。」

と回答しました。

ゲインオブファンクションリサーチが人間のウィルスに対してだけ行われる実験だったのであれば、どうやってファウチは武漢に対して資金供与を行っていない事を確信できたのでしょうか。

定義を置いておくと、NIHは、監査の目の届かない外国の安全性の低い研究所で、SARS2を製造できたかもしれない何かしらに、資金を提供していたというのがボトムラインになります。

エキスパート達は、政治的なリスクにボートを漕ぎだしたりはしません。

そして何故ダスザックやアンダーセンが、自分のキャリアの汚点になるような発表をしたのかを疑問に思った時には、NIADから2020年支払われた8200万ドルの受取先リストを確認してみてください。

アメリカ政府は、中国当局と、奇妙にも利害が一致しています。

「この研究がそんなにも危険ならば、何故ファンドを出したのだ、しかも我が国の領土で?」
「漏出させたのは、どうやらそちらの国のようだ。しかしながら、このディスカッションは公衆の面前で行う事だろうか」

ファウチは長年公衆衛生に努めてきた人物であり、周りの人物が資金提供が明らかになって彼が非難にさらされる事から守りたいと思うのは理解できる。

また、トランプ大統領は、言っている内容に嘘が多かったので、左派メディアは逆に研究所流出説を除外してしまった経緯もある。

おそらく将来、ウィルス学者達は誤った、自己保身の輩とみられるだろう。武漢ウィルス研究所からの流出説は、いずれトランプの言ったことは全て嘘、といったイデオロギー的な主張に取って代わる事になるだろう。





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