タイトル前編

見て!触って!学ぶ!「生理カップ」イベントレポート~前編

「生理カップ」を知っていますか?

生理用ナプキン、タンポン、に次いで「第三の生理用品」と言われるものです。しかし、生理カップの歴史は古く、ナプキンよりも以前から使われています。

「アンネの日記(完訳版)」で初潮を迎えたアンネが生理カップについて述べています。「ママが使っているカップ(生理カップ)はとても便利そうだけど、出産経験がないと使えない…」という記述を見つけた時、私は歓喜と同時にびっくりしました。

私は10年前から生理カップユーザーです。まだ代理店もなくて、ヤフオクで探して見つけて、勇気を出して買った日から、その快適さに完敗。日本では「最も新しい生理用品」と扱われているのに、それが「アンネの日記」の中にある!同志を見つけた気分。

同時に驚きと共に疑問も湧きました。現在のようなコンパクトで高性能の生理用ナプキンが開発されたのは第二次世界大戦後。それ以前からヨーロッパで一般に使われてきた生理カップは、「“第一“の生理用品」なんじゃないの?

日本は一周回って遅れている??

きっと遅れているとまでは言わないまでも、世界の常識とズレているのは確かなのです。10年間生理カップユーザーをしてきましたが、「私も使っているよ」という女性に出会えたのは皆無。

そろそろ新しいカップも欲しい、それよりもユーザー仲間がほしい、生理カップの素晴らしさを語り合える仲間がほしい。そんなことを考えていた私にぴったりのイベントがあることを知りました。

インテグロ株式会社が主催する「大人の月経講座&はじめての生理カップワークショップ」

わくわくと乗り込んだ東京都中央区勝どきの素敵な会場で、予想以上に素敵な語り合いと新しい情報、新しい生理カップを手に入れることができました。

<目次>
始まりの挨拶~
大人の月経教室~
・解剖学的に生理カップの位置は?
・そもそも生理カップの安全性は?
・生理に伴うつらい症状①~月経困難症
・生理に伴うつらい症状⑵~月経前症候群(PMS)
・生理は個人差が大きいもの

ワークショップは、代表の神林さんの挨拶から始まりました。

神林さんの挨拶~

新聞を手にした神林さん「皆さん、生理についてオープンに語られる時代がやってきました。日経新聞夕刊に「女性の生理に広がる理解」という記事が出ています。夕刊とは言え、新聞の一面を使って生理の特集が組まれる時代です。嬉しいですね。

この記事は、女性の社会進出と生理による労働生産性の低下について述べています。女性の生理に伴う不快症状や困りごとなどによる経済損失は、なんと6828億円とも言われるそうです。生理とうまく付き合うことが、女性自身にも社会にも大切なこととして考え始められ ています。

そんな日本社会ですが、やはり保守的な面が目立ちます。海外ではタンポン使用者が8割という中で、日本はナプキンが8割、タンポンですら2割。そんな中で生理カップを使ってみようという皆さんは、なんて勇気のある女性なのでしょうか。

生理カップは特に生理の悩みの深い女性に採り入れられている生理用品です。ナプキンかぶれやトイレに長時間行けない状況を助けてくれます。アスリートやバリバリ働く女性、子育て中の女性など、幅広い女性の、生活を変えたい!というチャレンジを後押ししてきました。

今日は前半が「大人の月経講座」、後半が「生理カップ講座」です。生理をオープンに語れる時代がようやく来ました。皆さんの悩みも知識も共有して、より良い生活と、大げさかもしれないけれどより良い社会を作っていきましょう。どうか楽しんで学んでいってください!」

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大人の月経講座~

講師 後 未央(うしろ みお)さん
フリー助産師、神奈川県在住。大学院修士課程にて月経をテーマに研究中。「大人の月経教室」「大人の月経女子会」を主催。月経カップユーザー。

後さん「こんにちは。「大人の月経講座」となっていますが、皆さん大人になってから生理や体の仕組みについて学んだこと、あるでしょうか。意外に少ないんですよね。なので、今日は改めて学び直してみるつもりでお聞きください。

今回は生理カップとつながりの深いことを中心に話していこうと思います。

まずは解剖学的なことから。

<解剖学的に生理カップの位置は?>

腟って尿道と腸の間にありますが、真上ではなく結構後傾しています。だから、生理カップに限らずタンポンなども、真上に押し込んでも入りません。少し後ろの方へ向かって入れるとスムーズに入ります。引き出す時も真下ではなく、前方へ引き出すと楽に出ます。

腸と腟の距離には個人差が大きいです。生理カップを入れると腸が押される感じがするひとも多いです。

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<そもそも生理カップの安全性は?>

よく寄せられる疑問①カップや指を腟に入れて大丈夫なの?

菌が入ってしまうんじゃないか?と心配される方が多いのですが、そもそも腟は無菌状態ではありません。乳酸菌を中心に、常在菌がいくつもいます。酸性に保たれていて子宮内に菌が侵入しないようにバリアを張っています。

だから、きれいに洗ったカップや指を腟に入れても何も問題はありません。

よく寄せられる疑問②カップはどこまで入れていいの?

腟の奥には硬く締まった子宮口があって、指を入れたら届くことが多いです(子宮頸部の長さには個人差があります)。子宮口は出産の時以外開かないので、間違っても「子宮内にカップが入ってしまった!」なんてことにはなりません。

よく寄せられる疑問③カップが取れなくなったらどうしよう?

腟の長さには個人差がありますが、生理カップは子宮口で突き当り、そこまでしか入りません。ですから、取り出せなくなるはずがない、とまず安心してください。

それでも取り出せなくなってしまう時は、パニックを起こして緊張し、腟周りの筋肉が収縮してしまっています。落ち着いて深呼吸し、ちょっといきんでみてください。カップが下りてくるので力を抜いて引き出してください。

どうしても取り出せない時は婦人科に行って説明すれば、難しいことはなにもなく取り出してくれます。まずは落ち着いてくださいね。

生理に伴うつらい症状にもいろいろあります。まずは月経困難症。

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<生理に伴うつらい症状①~月経困難症>

これは生理中、出血中に起こる症状です。主な症状は、

・下腹痛
・腰痛
・吐き気
・嘔吐
・下痢
・頭痛

これらの症状は、生理のあるほとんどの女性が経験しているものですが、これらの痛みなどで生活に支障が出る場合、診断名として「月経困難症」が付きます。

月経困難症は、大きく2つの種類に分けられます。「機能性月経困難症」と「器質性月経困難症」。

機能性月経困難症=排卵のある正常な生理に伴って起きる。10~20代の若年に多く、ホルモンバランスの未熟さが原因のひとつと言われている。
器質性月経困難症=他の病気(例えば子宮筋腫、子宮内膜症など)を原因として起こる。無排卵の生理時にも起こる。ホルモンバランスが整った30代以降に多い。

この場合も、「生理の様子が急に変わったら婦人科へ」とおすすめしています。婦人科ではどんな治療を行うかと言うと、

治療法
・鎮痛剤=痛みを軽減し、活動や生活をしやすくする
・ホルモン剤=ホルモンバランスを整える
・ピル=子宮内膜の増殖や子宮収縮を抑制して、月経痛が軽減する
・漢方=東洋医学では血液や血液循環の異常と捉えて、全身状態に合わせて処方

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<生理に伴うつらい症状②~月経前症候群(PMS)>

こちらは生理前の3~10日ほど続いて、生理開始とともに症状が無くなります。主な症状は、

精神症状=情緒不安定、イライラ、抑うつ、睡眠障害など
自律神経症状=倦怠感、食欲不振・過食、めまい、のぼせなど
身体症状=腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹や乳房の張りなど

PMSは、ホルモンバランスが整ってきた30代頃の女性に多く、また症状が重いことが分かっています。

生理前のイライラや不安などは、個人差がほんとうに大きいです。また年齢やホルモンの状態で生理の状態は変化していくものです。つらい場合は自己判断しないで婦人科に相談しましょう。

PMSの治療はこんなことを行います。

治療法
・薬物療法=ピルやホルモン剤、抗うつ薬や向精神薬で症状を軽減する
・漢方=気、血、水の全身バランスを整える漢方薬で症状を軽減する
・認知行動療法=記録をつけるなど、心身の変化に気づいてできる対策を考える

<生理は個人差が大きいもの>

生理は個人差が大きいものです。

・初潮年齢=10∼15才
・周期=25∼38日
・経血量=20∼140㏄
・閉経年齢=45∼55才

周期は幅がありますが、どちらも問題なしです。ただ、普段25日で来ていたひとが、突然33日で来るとか、普段35日周期で来ていたひとが28日で来た、という場合に問題が起こっていることがあります。生理の様子がいつもと違う、という場合は婦人科に気軽にかかりましょう。

また、10代、20代、30代と年を重ねていくとホルモンバランスも変化します。ライフサイクルによっても生理の様子は変化します。いつもいつまでも同じではないことを心にとめて、自分の身体と付き合っていきましょう。

生理が軽いひとも重いひともいます。みんな違います。お互いのつらさをちょっと想像して思いやり、社会全体がやさしくなれたらいいですね。

そのためにはまず、自分の生理を知ることが大切です。知ったことを語り合える場所も少しずつ増えてきています。お役立ち情報などを共有し合って、ちょっと身軽な生理ライフを送れるようになるといいですね」

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小学校以来の生理の授業は、なんだかほっこりと終わりました。あの時は「これから起きる知らないこと」だったのに、今は「嫌になるほど付き合っている腐れ縁」のような生理。年を重ねるって、そんな縁に新鮮味とユーモアを足して、新しい生活を作り出せる余裕を生み出してくれるのだなあと思いました。

参加している女性たちは、これから生活を変えてやるぞ!という意気込みと期待が見え隠れして、明るく前向きな雰囲気が満ちています。

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