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香水選びの話(※積極的に脱線します。)

この四年ほど、ペンハリガンに一途に愛を注いできました。職人が紡ぐ、ロンドンの歴史あふれる香り。それがペンハリガンです。今までずっと同じ商品、シプレ調と呼ばれるマダムっぽい香りのものを愛用していましたが、時折どうしようもなく香りを変えたい衝動にかられていました。

たぶんこれ、生き物の本能に近いんです。
固定したところに居すぎると煮詰まってくる。もとから固い頭がさらに固くなりそうというか。ペンハリガンは悪くないんです。だけどそこに座ったままでいたら尿意を忘れちゃうよ、みたいなことです(ごめんなさい)。
本能に従って、とうとう香水のイメチェンに踏み切りました。

香り選びには、その人の動物性がもろに絡むと思います。
街を歩くと慕わしい香りがする。すれ違った人を振り返る。見覚えはない。だが向こうもこちらを振り返る。互いに熱い視線を注ぎ合う。
攻「お前が俺の運命か……」
受「え、なんのこと……(ドクンと心臓が早鐘を打つ)」
はい、オメガバース(BL)の読みすぎですね。わたくし一介の主婦ではございますが、フェロモンというものには魂すら含まれるのではないかという妄想を抱いております。アルファがオメガを選ぶように選べばいい。よし、分かった。抱けばいいんだ。(おかしい)

香水。年に一度、買うか買わないかですが、そのぶん本気で攻めます。お店には足を運べませんので、公式通販を利用します。お高いけど気合いでメゾン系を選びます。「メゾン」っちゅう響きが好きなので。
「お、なんかこれ、シュッとしててクールだ」
新作商品の中から見た目で選びました。もはや博打です。サンプルが付いてくるし、商品がハズレても、サンプルでリカバリーできるはず。そんな心意気でポチりました。勝負師にならないとネットで香水は買えません。

商品はそう何日もかからず家に届きました。置き配をお願いしました(ヤマトさんありがとう)。
メゾン フランシス・クルジャン
アクアシリーズのオードトワレ。ちょうどミニサイズが出ていました。わたしは紙箱を見た時点で正気を失いかけました。小瓶を包む箱がえもいわれぬほどゴージャスです。開けた瞬間、清水のようなやさしい香りが、キラキラの箱の内側からするすると漏れ出します。聖水だ、まさしく神の御技だ……。あと、蓋が重い。

アクアシリーズのユニセックスな商品なのですが、ベースはせっけんの香りかなと思います。複雑なのに空気になじみ、押し付けがない。なんていうか、香りの迫り方が「こってり」じゃなくて「あっさり」なのです。天下一品(ラーメン)では、だいたい「こってり」しか頼んだことがないのですが、もしかするとわたしに合うのは「あっさり」のほうなのかも……。
タオルに吹きかけてたんすにしまったところ、無印良品のたんすがマッツ・ミケルセンに変身しました。ありがとうクルジャン。

香水自体は、あとにはなにも残りません。シュッとひと吹きするとあっという間に揮発して見えなくなります。香りもやがて消えていきます。
儚いものをボトルに詰めて売る。香水は小説に似てる気がします。わたしは香水と小説がないと、生きていけません。
ネットで見つけた記事をいちばん最後に貼りましたが、クルジャンは香水のタイトルをまず先に決めるんだそうです。ああ、この人は小説を書くように調香をされるのだな。香りも小説も、本当に繊細です。

メゾンのものは総じて容赦無く高いのが難ですが、香水より手が届きやすいヘアミストやハンドクリームにチャレンジするのもアリだと思います。わたしも香水とは違う香りのものを併せて買いました。ぶち上がります。ささくれ立った手がヒュー・ダンシーに変貌しました。ありがとうフランシス。

わたし分かった。香水選びに大事なこと。調香師萌えだ。

※通販でもらったサンプルは、ペンハリガンの新作でした。なんと女王陛下のお気に入り(?)サッチャーをイメージした香り。これもいい。

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