1年間北京に子連れ留学した私だからわかる中国人の懐の深さ
中国や中国人に対してどんなイメージがありますか?きっと「よくわからない」「怖そう」「危なそう」というイメージが多いのではないでしょうか。しかし実際は中国の人たちはとても懐の深い人たちです。
当時小学1年だった子どもを連れて1年間北京に留学した私が体験したことを紹介します。これで中国人の温かさが伝わり、少しでも中国に興味を持ってくれれば嬉しいです。
なんと9割が中国に「良くない」印象を持っている
日本の民間非営利団体「言論NPO」と中国国際出版集団が2020年に調査した共同世論調査の結果は以下の通りです。
隣の国なのに約9割の人が良くない印象を持っているのは、ある意味驚きですよね。しかし、本当に中国には「良くない」人たちが住んでいるのでしょうか?
本当に知っているから怖いのか、知らないから怖いのか
中国に住んでいるAさんもBさんもCさんも「良くない人」と知っているからこそ、そう言えるのでしょうか?そうではなく、私たちは「知らない」「興味がない」から、「よくわからず」「理解できず」その結果「なんだかよくわからないけど怖い国」という印象になっているのです。
その「なんだかよくわからないけど怖い国」という気持ちがあるのは私も理解できます。マスコミの報道を見ているとそう思ってしまいますよね。私も中国に興味がなければ、隣の国だけれども「よくわからない国」以上の感想を持たなかったかもしれません。
しかし、例えば職場のとっつきにくい人でも、良く知ってみるといい人だったということは多々あります。よく知らないから怖かっただけの話。興味を持って知ろうとすることは、仲良くなる第一歩なので、中国にも少し興味を持ってもらえたらと思います。
実際に体験した中国人の懐の深さ
私は2009年から2010年の1年間、当時小学1年だった娘を連れて北京に留学しています。「子どもを連れて留学するのは大変だったでしょ?」とよく聞かれますが、確かに面倒なこともありました。しかし子どもを連れて留学したからこそ経験できたことが多く、娘を連れて行って本当によかったと思います。
特に中国の人の子どもに対する配慮に何度も心が温かくなりました。子連れ留学をした私だからこそ実感できた中国人の懐の深さをお伝えします。
実例1:お年寄りと子どもに席を譲るバスの乗客
バスでお年寄りと子どもに席を譲る確率100%です。娘とバスに乗って、娘が座れなかったことは、ただの一度もありません。必ず誰かが席を立って娘を座らせてくれます。たまにとても混んでいるとき、座っている人が娘の存在に気づかないときもあります。
しかしそんなときでも大丈夫。バスの中には車掌さんがいて、必ず座っている人に「ほら、立って」と声をかけて、お年寄りや子どもを座らせてくれます。
果たして日本ではお年寄りと子どもに席を100%譲っているでしょうか?
実例2:とても親身にお世話してくださった先生方
留学という形だったので、私は大学に通いました。特にお世話になったのは留学生を受け持つ主任の楊先生です。先生の実家の餃子パーティーに招いてもらったり、先生の娘さんの学校で行われる成人の儀式(中国では18歳が成人)に招いてもらったり、大学の授業を超えていろいろと面倒を見てくれました。
ほかの先生方も、「何かあれば連絡してね」と携帯を教えてくれることも。特に私が子どもを連れての留学だったので、そのことを話すと担当ではない先生も「何かあれば連絡して」と言ってくださったり、住んでいた学生寮の近くに住んでいるおじいさんからも、そんな風に声をかけてもらったりしました。
日本人もそういうこと、言うと思います。しかし、それって社交辞令がまじっていますよね。中国の場合、このようなことをわざわざ社交辞令では言いません。何かあれば力になるつもりだからこそ言ってくれます。
しかし、私が一人で留学していたとしたら、私にこのように声をかけてくれる人はいなかったでしょう。娘がいたからこそ、声をかけてくれて、それだからこそ、私が中国人の温かさをより理解できたのです。
実例3:私たち親子を快く受けいれてくれた王さん夫婦
留学の前に思いました。「普段の時は私も娘も学校に行くからいいけれど、例えば休みの日に私が何かの用事があれば、娘は一人になる。そんなときに中国で娘をあずかってくれる人がいたら」と。
そう思って、当時中国語を教えてもらっていた先生のつてをたより、紹介してもらったのが北京に住んでいる王さん夫婦です。知り合いの知り合いですので王さん夫婦とはもちろん面識はなく、それなのにとても快く私たちを迎えてくれました。
北京に行った最初の週末、王さんの家に行きました。王さん宅は一人息子がすでに独立して夫婦2人と犬5匹暮らし。この犬たちの存在も大きかったのです。娘が言葉も通じない王さん宅に行くのを嫌がらなかったのは、犬たちに会いたかったからでした。
最初に訪問した次の週末、娘に「王さんの家に行く?」と聞くと「行く!」と。そのあとは、毎週末王さんの家で過ごすようになりました。
土曜日か日曜日に王さん夫婦が車で迎えに来てくれます。そして一緒に市場へ買い物に行き、お肉や野菜を買って王さんの家へ。お昼ご飯をいただくと、昼寝の時間です。今の若い世代の中国人は昼寝をしないでしょうけれど、王さんたちはまだ昼寝の習慣がありました。郷に入れば郷に従えで私ももちろん昼寝です。昼寝から起きた後は一緒にテレビを見ながらおしゃべりしたり、家の周りを散歩したりしました。夕飯は大体ご主人の王さんが作ってくれて、美味しくいただいた後、寮まで送ってもらうというパターン。
これが、毎週です。本当に家族同然に受け入れてもらいました。王さんの親戚の結婚式に参加させてもらったり、春節(旧正月)を王さん宅で過ごしたりもしています。初めは娘をあずかってくれるところと思って紹介してもらった王さんですが、いつの間にかすっかりなじんでしまいました。王さんたちとは娘がいたからこそ出会えた人たちなのです。
しかし、もしこれが逆の立場なら私はそこまで見知らぬ外国人親子を受け入れられるかどうか、自信はありません。
もっと興味を持って隣の国のことを知ってほしい
もちろん中国での1年間はすべて良いことではありませんでした。中国語で話しかけても平気で無視する人もいますし、表面的に愛想のない人が多いのも事実です。しかし、一度彼らの「テリトリー」の中に入ってしまうと、とことん深いお付き合いができます。
マスコミで報道される中国人は集団になった、一人ひとりの顔が見えない、いわゆる典型的な「中国人」です。日本に団体で観光にくる中国人も、集団のひとかたまりの「中国人」。どうしてもそういう「中国人」の印象が強くなってしまいがちです。しかし、当たり前ですが、彼らには一人ひとり違う個性があります。きっとその中の誰かと友だちになると、いい人たちだねと思うでしょう。
国の体制を見て、マスコミの報道だけを見て判断するのではなく、できればもっと具体的に一人の隣人として、興味を持って知ろうとすることが大切ではないでしょうか。
よく知って、わかってくると怖くなくなります。お隣の国なのでいつまでも「わからない」「怖い」ではなく、わかろうとしてもらえると嬉しいです。興味を持って知ろうとするその意識が、大げさに言えば世界平和につながっていくと信じています。