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BTSと失恋と少し語学の話

コロナ自粛が始まって間もなく、私はBTSにはまった。
最初はやや拒否感。でもちょっと気になって検索したらおしまいだ。気づけば夜な夜な無限に存在する動画コンテンツを見続ける日々が続いていた。
ジャニーズにもバックストリートボーイズにもはまらずに生きてきた私は、アイドルというものに免疫がなかった。優しい沼にどっぷりと浸かってしまった。
一時は二度と戻って来られないかと思ったが、幸い病気は自然治癒した。今も彼らのことは大好きだが、当時のような熱はもうない。
ところが数ヶ月前、高校時代の友人からラインがあり「BTSにはまってしまった」という。第7波でコロナに感染し、隔離中に韓国ドラマを見まくっていたら、いつの間にか…ということらしい。リサーチ力に優れた彼女のこと、堕ちるのも早かった。すでに生活は崩壊気味だと言う。恐るべしBTS。
彼女の話を聞くうち私もリラプスしそうになった。恐るべしBTS。
実は彼女にとってBTS は新しい存在ではない。彼女には10代の娘さん(Sちゃん)がいて、SちゃんはBTS がワールドスターになる前から何年も大ファンだったそうだ。しかし最近はBTSの話を全くしなくなり、完全に卒業したようだった。
友人は自分がBTSファンになったことをSちゃんに言わなかった。子持ちのBTS ファンには家族も巻き込んで明るくArmyする人もいれば、家族に内緒でひっそりと愉しむタイプもいる。友人も私も後者だ。理由は子供に自分の乙女な一面を見られるのが恥ずかしいから。特に友人は元ファンの娘にどんな反応をされるかと思うと怖くて言えなかった。
しかし先日、二重生活に疲れ果てた友人は、ついにSちゃんに告白したという。あからさまに嫌悪されるかと思いきや、Sちゃんの反応は意外なほど大人で、隠れた名曲などを教えてくれたそうだ。
友人は安心し、もうひとつ、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
なぜ不自然なほど突然に、BTS を聴かなくなってしまったのか。
その質問はSちゃんのデリケートな部分に踏み込むもののような気がして、それまで何となく口に出せなかったそうだ。Sちゃんは饒舌ではなかったが、冷静に質問に答えてくれたと言う。
要は、富と名声を手にいれて、彼らは変わってしまったと。そして、あんなに好きだった彼らの曲を聞いてももう良いと思えない自分が許せず、辛かったと。でももうどうしようもない、受け入れるしかない、という心境に至ったそうだ。
これを聞いた友人は、娘の失恋話を聞いているようで切なくなってしまったと言っていた。
本当に、失恋だ。
一方的に振られたわけではなく、相手に幻滅して恋心を失うことも失恋なのだ。そして、どちらも辛い。
友人は母親として何か言わなくてはと思い、「変わらないことは難しい。でも彼らを好きで幸せな時間があったことは本当だよ。だからそれを大切にして」と伝えたが、分かった風な口をきくなと突き放されたらしい。

さて、翻訳者ブログなので少し語学にも触れたいと思う。
Sちゃんは数年間BTS動画を見続けて、韓国語の聞き取りはそこそこできるようになってしまったらしい。ハングルも大体読めると。
私も根が語学好きなのでちょっとトライしたが、結局ヨロブンとケンチャナくらいしか聞き取れなかった。こんなに入ってこないのは、やはり年齢なんだろうな、とも思う。
Sちゃんのお勧め勉強法は、歌詞カードを見ながら曲を聞くことだ。
歌詞カード…
思えば私も遠い昔、歌詞カードを片手にマドンナやデュランデュランを聞いていたではないか。
何だか懐かしく、変わらないな、と思って笑ってしまった。

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