恋バナ

「I don’t want to hurt you.」
いつもは日本語で喋りたい彼だけど、こと恋愛に関しては英語になる。

「僕はあなたを傷つけたくない。」
そう言われて、ただ頷く私。

ありがとう。ぜひそうして。優しい人でよかった。
などと心の中でつぶやいている。

出会ったばかりで、初めて二人でランチをしたという段階なのに、
彼は私との今後について語り始めていた。

「傷つけたくないから最初に話しておきたい。」と。

う、、、うん。
私たち、そういうのじゃないよね?
心の中でまたつぶやく。


私たちは知人の紹介で知り合った。

後に気づいたのだが、
まずここからがすれ違っていた模様。

彼的には、日本人のガールフレンド(日本でいうところの彼女)が欲しい
という前提で私を紹介されていた。(と思う)

かたや私は、
彼氏やパートナーに興味はない=男いらない。
のスタンス。
男はめんどくさくて邪魔になるとさえ思っている。

だから、
友達ならいいよ。の状態。

その二人が紹介されて会ってしまっているからすれ違いが生じる。


ある日知人から
「みんなでランチしました〜」と、
彼が写っている写真が「彼女募集中です」の文字とともに送られてきた。

意味がわからない。

とりあえずスルーした。

誰だろう?
この言い方って私の知ってる人ってことだよね?
じゃあ何か返信しとかなきゃな。
誰だっけ?
あ、一回会ったことのなるイギリス人の英語の先生だ。
こんなんだっけ?
髪の毛黒じゃなかったっけ?
いや、そのくらいしか心当たりない。
きっとそう。

そう思いつつ放置してしまっていた翌日、
「今、かよさんにパートナーがいないなら、彼どうかなと思って。」
とメッセージ。


・・・いないけどさ。
てか、探してないし。

てか、いらないし。

友達に話す時だったら、
「てか、男いらねーし。」と言ってしまうであろう違和感。
人に話す時はおもしろくしたくていつもちょっと盛りがち。

なぜだろう。
パートナーがいる方がいいよね感。
パートナーがいない人はパートナーを探しているはず前提で言われている感。
相手はそんなことないのだろうが、そう感じてしまう。

「パートナー?なんなんだこれは、、、」
と思いつつも、
常識人の私は丁重にお返事をしなきゃと考える。


とはいえ、相手は欧米人。
これがだたの友達でいいのであれが、実はグッドタイミング。

というのも、
この2年くらい英語を話す環境が全くなくて、
ちょうどエクスチェンジパートナーが欲しかったところ。
オンラインレッスンのフリートークしかないかなぁと思っていたところに渡りに船。
日本語がカタコトだというのも好都合。
日本語が流暢に話せる外国人では意味がない。
まぁ、男ではあるが、欧米人とは「男との友情は成り立つ」という経験もある。
友達でOKならむしろラッキー。

イェーイ!私ってやっぱりラッキーガール!
くらいに変わった。


今、英語を話せる環境がなく、話せなくなって困っていること。
ちょうどランゲージエクスチェンジパートナーを探そうと思っていた。
を、明記した上で、
「パートナーはさておき、お友達になりたいです。」
と返信した。
(ここで、「パートナーはいらないです。」と明記しておくべきだったとこれを書きながら気づく。。。)


「ぜひ一緒にランチかディナーしましょう。もちろんお友達で。」
と返事がきて、
「ぜひぜひ、ランチしましょー。」
と、ランチ一択で返信。

夜はにゃんこと過ごす大切な時間。
そもそも、私は夜の外出が嫌い。

そして、知人と知人のパートナー、そして彼。
4人でランチをすることになった。

知人からは、
「かよさんヴィーガンですよね?」の確認があり、
ありがたいことにヴィーガン対応カフェでランチ。
彼が予約をしてくれたとのこと。

「とにかくお友達が欲しいんだって。」
だから安心して、的なフォローも入った。

めっちゃいい感じ。


久しぶりに英語が話せるとウキウキして待ち合わせのカフェに行った。

駐車場に到着したところで知人から電話が入り、ちょっと遅れるからそのまま車で待っていてとのこと。
車の中で待っていたら写真で見た男の人が私の前を横切って行った。

あ、来ちゃった。
そう思い、私もカフェの中へ。

私の顔とかわかんないよね。と思っていたが、
すぐにわかった様子。
後に知ったが、私の仕事のHPを見ていた模様。

すぐに椅子から立ち上がり、
「はじめまして。」
と、名前を名乗って笑顔で彼の手が差し出された。
「はじめまして。かよです。Nice to meet you.」
私も笑顔で、差し出された手を取り握手をする。

そうそう、この感じ。
うん、うん、いいよね。
と、久しぶりの欧米感覚にご機嫌な私。

彼は今年の2月に知人の家を購入。
それからこちらに引っ越してきたそう。
職場は北海道。
完全リモートワーク。
よくもまぁこんな西の端までいらしたものだ。

知人からは、「バカンスだけこちらで過ごす人。」と聞いていたが、
もうこっちに住むことにしたとのこと。

日本語で話しながら、
少しなら英語が話せることを伝え、英語で話そうとした。
すると、速攻「日本語で話して大丈夫。」と。
まだ日本語が流暢ではない彼は、日本語でコミュニケーションを取りたいそうだ。

日本語を上達したいから、英語で話をしたくない。
だから、今の環境はとてもいい。
誰も英語を話せる人が周りにいない。
と言っていた。


めちゃくちゃよくわかる。その気持ち。
大きく頷く私。

私もそうだった。

スコットランドに住んでいた時と、
ハワイ島に住んでいた時では、
明らかに英語のスキルアップのスピードが違った。

日本人で固まりたくない。

そう思っていたからだろうか。
ハワイ島の日本人だらけの語学学校では、変わり者として扱われていたし、
仲間外れだった。
いつも一人で辛かった。

このこともまた今度書こう。


周りに日本人がいるとつい日本語でばかり話してしまって、
全く英語が上達しない。
日本人同士でも英語を話せばいいのだろうけど、ついつい楽な日本語で話してしまう。
それに、日本人同士でカタコトの英語で話すのはなんだか小っ恥ずかしい。
それは、地元の友達と標準語で話すのに似ている。
はず!て感じ。

彼は私と同じではないだろうけれど、
職場環境が英語の彼が、日本語を話す機会を増やしたいという気持ちはとてもよくわかる。


よーくわかるが故に、
「じゃあそうしましょう。」となってしまう私。

「残念。」と心の中で呟いて、ちょっとがっかり。

とはいえ、
すぐにポジティブになる私でもある。

「いやいやいや。とはいえ、しゃべるっしょ。英語www」
と、心の中で期待。

結果、
ランチから数日後、
彼が私に会いに来て、ランチをして、そしてお茶しながらなぜかこの話になっている。
・・・英語で。

英語やんか。
今、これを書いていて、なんか笑える。


「ごめんなさい。今英語使ってる。」
と申し訳なさそう。
「でもちゃんと話したいから。」
「日本語でどう言えばいいかわからない。」
などと、カタコトで言いながら、
流暢な英語でリレーションシップについてトクトクと話す。

そして、
「What do you think?」

結局英語なんかーい!

面白すぎて大爆笑する私。


英語を話すとき、
声も変わるし、姿勢も変わる。

日本語で話すときはなんだか可愛いくて、
英語で話すときは”男”になる。な感じ。

あくまでも私の感覚だけど。

単にナチュラルになるだろうな。
自然体。
そりゃそうだ。
母国語だから。


とは言え、
ペラペラ、ペラペラ、
と、言いたいことをネイティブスピードで話されて、
もともと英語力が低い上に、英語に全く触れていない私だから所々が抜け落ちる。
そもそも、
英語力のなさ故にスコットランドから帰国した私だ。

ポイントを確認しつつ、回答しなければ。
とは言え、私もいきなりのシチュエーションと、
想定外の話で頭が追いついていない。

そして、かなり気になっているのが多様された”Cat's”と”Travel”のワード。

「猫を置いて旅行できるか?って言った?」
頭の中で???状態。

「信じらんなーい。するわけないじゃーん。」と即答なのだが、
一応確認しなくちゃ。

ついでに言うなら、
シッターに頼めるかとか言ってなかった???
「あり得ないっすぅー」これも即答だけど、まぁまずは確認してから。


彼がこの質問をする意図もよくわかる。

なぜなら、
皆でランチをしている時、私の出不精は露呈されていたから。

それは、
彼の来週の予定がきっかけ。
来週は香港に出張で、その後はオーストラリア。という話題になり、
知人カップル二人が、
「いいな〜。」と。

旅行はいいものだけど、
私的には興味がない話。
「まんちゃんどうしてるかなぁ。」
と、家にいる猫のことを考えていた。

とはいえ、私もそれなりに社交性のある大人。
「ふーん。そうなんですね〜。」
と、ちゃんと話は聞いていたし、頷いていたけどね。


一通り旅行ネタが落ち着いた頃、彼が私に聞いてきた。

「行きたい?」
可愛い笑顔だった。

「行きたくない。」
笑顔で、さらっと答えた。
笑顔返し(笑)

「なんで?」
と、彼。
「猫いるから。ずっと離れたくない。」
と、またにっこり。
「・・・」

ゆる〜いジャブを入れてしまったようだ。

会話が終わった。

ランチの後、私たちはカフェを出て彼の自宅にお邪魔した。
彼の家で彼の犬にご挨拶する。
そういうプランだったようだ。


彼の家に移動してからも、
旅行話しは続いていた。

知人カップルは今度バリに行くらしい。

そして、次は彼の仕事の話に。
北海道の話で盛り上がる中、
私は床に座っているわんわんに手を伸ばして撫でていた。

知人が「北海道に行きたい。」
といい始め、
「かよさん、彼のところに一緒に行こう。」
と提案。

「そうですねぇ。」と
にっこり。

全身から”興味ありません”オーラを出していたせいか、
「猫、お姉さんでもだめなの?」と、こっそり聞かれた。

だめでーす!
心の中で即答する。

そう。だめなのです。
私じゃないとまんちゃんは隠れちゃう。
超絶怖がりのまんちゃんは、他人が入ってくると隠れてしまって出てこない。
そんな怖い思いをさせたくない。

それに、
私自身も猫たちの側にいたい。

「そうなんですよぉ。他の人だと怖がっちゃって。」
と、残念そうに答えた。


この前提が繰り広げられていたので、
彼の「一緒に旅行に行けるのか?」の質問につながったのだろう。


他にも、
一緒に住むとか、結婚しようではない。
パートナーではない。

そんなことを諸々言っていて、
他にも「ん?」というのはあったのだが、
とりあえず今はそこはスルー。


「なんで?旅行?友達として?」
「ボーイフレンド?」
「なにをもってボーイフレンド?」

諸々聞いてみた。

ちょっと逸れるが、ここで触れておきたいのが三番目の
”なにをもってボーイフレンド?”
いわゆる友達とボーイフレンドの境界って何?
について。

普通に考えれば、基準はセックスなのだろう。
(その後の友人への調べで判明)

だけど、
私の場合、セックスはしたけれど「彼氏」と思った人は少ない。

高校生の時の
「付き合ってください♡」
「はい♡」
みたいなやつは一応彼氏とするが、
大人になってからの恋愛で、元彼と呼ぶのはただ一人だけだ。
私にとって、
”つきあっている=彼氏”
ではない。

この、
”つきあっている=彼氏”ではない。
というのは、以前書いた記事以降に私の中で折り合いのついた概念。
「ちょっとの間一緒にいて、ご飯食べたりセックスしたりした人」という立場を概念化できた。

そして今、
一般的には、
パートナー=ボーイフレンド(彼氏)
ではない。
という感覚なのではなかろうかという仮説がある。
ぜひ今度誰かに聞いて検証してみたい。

そして、
私の中では、
”一般ではパートナーレベル=ボーイフレンド(彼氏)”
なのだろう。

付き合うだけの人はいらないのだ。

なんとも新しい発見。

ありがとう、欧米人。
ありがとう、知人。

こういう気づきは本当に楽しい。

人によっての恋愛の概念について論文が書けそうな気分だ。


もとい、
話がそれまくりなので、会話に戻ろう。


「なんで?旅行?」

「そう。旅行したり、うちに泊まったりしてほしい。」

「ボーイフレンドって言った?」

「そう。最初に言っておかないと、後でこんなはずじゃなかったってなったら傷つくから。」

なるほど。
さっき言ってた結婚とか同棲してパートナーシップを深めるではないってことね。
聞きたいのはそこじゃないけど、まぁいいか。

「なんで欲しい?ガールフレンド。」
なぜか私の方もカタコトの日本語になる。

「楽しみたい。
誰かを愛したいし、愛されたい。」

うん。そこは同意。
私も人生を楽しみたいし、人生を愛で満たしたい。

でもそれって恋愛じゃなくてもできるよね。

「なんでガールフレンド?」

あれ?キョトンとしてる?
じゃあ質問を変えよう。

「なにが違う?ボーイフレンドと友達。」

また一瞬固まる彼。
そして
「一緒に旅行したり、食事したり。
家に泊まったり。」

うん。それさっき聞いた。
そう思いながら
「うん。」と頷く。

ちょっと困った顔して彼が続ける。

「友達に紹介したり、
周りも知っている。
家族とか。」

うん。
それも友達でもできる。
そう思いながら
「うん。」とまた頷く。

あと、”Pay”を何回も言ってたから、
友達だと割り勘で、ガールフレンドだと払うってことだね。

「わかるでしょ?」的な顔をされている気がするが、
恋愛にはたいそうご無沙汰な私はカンが鈍っていて、
なにを言いたいのかピンとこない。

そして私が聞きたい肝心なことが彼から聞こえてこない。


「セックスするしないっていうのはどうなん?」
心の中で思っているがなかなか口にできない。

ここを確認しようとするのは、
私の中ではセックスをしたからといってボーイフレンドではないからだろう。


そこそこぶりっ子な私は言葉にできずに困ってしまった。
これだけセックスセックスと書いているが、
セックスと堂々と口にするキャラでもない。

なんとか、
「How about make love?」
遠慮がちに聞いてみた。

ぶりっ子でもいける便利な単語、make loveを思い出した。
神様、便利な言葉をありがとう。


答えは、
ガールフレンドとはする。
友達とはしない。

なるほど。
と思っていたら、

「make loveはもちろんしたいし、
旅行にも行きたい。
かよにとって猫たちは子供のようなものなんだよね。
とてもよくわかるよ。
でもさ、、、」
話は続く。

早いって。
ネイティブスピード。


一通り聞いたところで、私の回答がはじまる。


「まず前提として、私はボーイフレンドを探してないよ。」
これを英語で伝えた時の彼が一瞬見せた
「え?」という顔。

いや、
私も「え?」だよ。

これは紹介された時点、
すなわち初動段階で食い違っているのだとなんとなく気づいた。

あちゃ、、、と思い、言葉につまる。

とはいえ、もう一度。
「I don't find a boyfriend, so I don't know what's happning.」

また固まっている。

やば、ここは
”find boyfriend"ではなく”I wasn't looking for someone special."だし、
”I don't know”ではなく”I'm not sure”
がよかったな。と気づく。
その前に彼が言っていた”find”というワードをそのまま使ってしまった。

いや、そもそも、
この時点ではそうなんだから
"I'm not looking for someone"
現在形使わなきゃ。

って、
彼が黙ってしまったのは、私の言い間違いが原因ではないだろう。

そのまま続けた。

「But, I've met you, so…」
言葉に詰まる私。

でも、それを聞いた彼の表情が緩んだ。
笑顔でまたネイティブスピードで話しはじめた。


本来なら、
「someone specialはいらないよ。だからお門違いだよ。」と言えるのだが、
今日の私はちょっと違う。

なんかこの感じは悪くない。
二人でいる感じが嫌じゃない。
なぜはっきりとお門違いだと断言できないのかわからないのだが、
なんだか曖昧にしておきたい。


ちょっと食指が動いてしまっていたようだ。
いや、かなり動いていたね。

その後も少し話たが、あまり詳細を覚えていない。

とにかく、
猫よりも男を愛せるか?
とか、
犬はシッターに預ける。
とか、
子供は成長して自分のことを必要としなくなる。
とか、
とくとくと、そういったことを言われていた。

あんまり内容を覚えていないのは、
猫の方が大事なことがよくないことのように感じてしまい、
辛くなってしまったから。

あなたは自由になんでもできるでしょ。
外にも行けるし、友達もいる。
家族もいる。
まんちゃんには私しかいないの。
私だけなの。

そう言いたいのに、
英語で言えないことが悲しくて泣きそうになってしまった。

そんな私の様子をみて、
「ごめんね。動揺させるつもりはなかった。自分が恥ずかしい。」
的なことを言って、話題を変えてくれた。



最初に
”これを書きたい”と思って書き始めたのに、
書きたかったことから遠ざかりすぎて、
なにを書こうと思っていたのかも怪しいくらい。

そうだ。
”傷つけたくない”についてだ。

傷つく。ということが私にとってどういうものなのか、
恋愛に対する価値観など、
私の思っていることを書き溜めておきたかったんだった。


書こうと思っていたことを書く前に、
6000文字を超えている。
なのに、まだまだ別の書きたいことが溢れ出てくる。


彼と出会ってからまだ一週間なのだが、
私の中でたくさんの気づきが起きている。

過去のことをとにかく思い出す。
思い出しては、過去が癒されていく。


ありがとう、欧米人。


これからも彼とのやり取りはたくさん書きたくなる気がする。
すでに、
今日までのことを書き留めておかなきゃという気持ちになっている。

この続きをしばらく書いてみようと思う。


タイトルも変えなきゃ。
悪いがこれはシリーズ化させてもらうよ。


ここまで書いてわかったことがある。


新しい恋がはじまったみたいだ。


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