聞きたい言葉
私は「すごいね」を聞きたがる。
自分が「すごい」と人に言ってもらいたいのだと知ったのは半年ほど前。
私の過去を話したら「すごい」と言われる機会があった。
多分だけど、
私は普通ならあまりしないであろう経験をしてきている。
(なにをもって普通というのかはさておき)
家業の倒産にまつわるすったもんだはまさにそれで、
ドラマの中で起きるような出来事を自分ごととして体験した。
平和に暮らせている今、
それをわざわざ人に話すということはなく、思い出すこともほとんどない。
たまーに、
姉と「あの頃はこうだったね〜」と笑い話になる程度。
人生で一番苦しかったはずのあの時間は、
今では姉妹の大爆笑ネタとなっている。
そんななか、
昨年、過去について語る機会がちょこちょこあった。
私の中では、「実家の倒産にまつわるエトセトラ」は爆笑ネタなので、
笑いの欲しい私はついそのネタを何人かに話してしまった。
人によって反応は様々で、
ただただ驚いていたり
一緒に笑ってくれたり
嘘でしょ、、、と驚きすぎて言葉にならなかったり。
そして、ほぼ毎回、
「すごい」
という言葉が聞こえてきた。
はじめての”すごい”の時、
私は「え?」となっていて、
どう反応していいかわからなかった。
「すごいですね。」
その言葉で私に何が起きているのか一瞬わからなくて、
なんだかちょっと恥ずかしくて、
でも私の中でなにかが浮かれていて。
「あぁ、私って”すごい”って言われると嬉しいんだ。」
しばらくたってからそう気づいた。
ある日、
「私、すごいって言われたいみたい。」と姉に言った。
「わかる〜」
と即座に姉が答える。
「しかもさ、
1回じゃ満足しなくておかわりするんだよね。
”え?”とか言って。聞こえなかった感じで。」
と私。
「そう。聞こえてるのにね。」
二人で爆笑。
ここにもいた。
「すごい」を欲しがる人。
それ以降、
耳に手を当てて、
聞こえないようなジェスチャーをして
”すごいね”をおねだりをするのがしばらくブームだった。
「すー、、、ばらしいね。」
お互いわざと”すごいね”を言わずに粘って笑う。
本当に”すごい”のおかわりが欲しくて
「ん?」とか「え?」とか意識して使っていたわけではないのだけど、
そんな風に自分を見ると滑稽でおもしろい。
それに、
私の発していた「え?」とか「ん?」は、
言葉にならない「え?今すごいって言った?」が続いていて、
そこには、
”もっと聞きたい”
が、入っている気がする。
以前から、
姉や友人との会話で、
「ね、すごくない?」
と、よくつけていたことにも気づいた。
私は”すごい”という言葉が好きらしい。
私、褒められたいんだな。
そう思った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?