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無くてもいい会話で生まれるもの

温度のあることが好きだ。
テクノロジーがどんどん発達して、いろんなことがオンラインで済ませられるようになってきたけれど。どうしたってロボットにはない、血の通った人間のあいだにこそある、生っぽさが好きだ。

手紙を出したかった。でも、切手が家になかった。84円の切手を買いにコンビニに行った。ペイペイ、メルペイ、楽天ペイ、ペイペイペイ……スマホでペイできる時代を生きていると、ほとんどもう財布を出さない日々だけれど、その日はたまたま(ほんとうに気まぐれで)現金で支払った。

店員さんの手のひらに渡そうとすると「すみません、こちらで。」と。そうだ、時代は令和。2022年。なんでもオートメーションだ。わたしもいつもならペイペイペイ!じゃないか。

「どこも自動になってきましたね。」
「ええ、ほんとそうですね。」
やさしく目尻を下げる店員さん。
「こちらもどうぞ。使ってくださいね。」
切手を貼るための、のりを差し出してくれる。
「よかったら外にポストもありますので。」
「ありがとうございます。」
最後にまた、微笑んでくれた。

ほんの数十秒の会話。短い時間だったけれど、わたしは店員さんの笑顔を見てうれしかったし、ポストの有無も教えてくれる親切に触れてまあるい気持ちになれた。

ぽんっと心が弾んだり、ほわあっと温かくなったり。ハッと気付いたり、なるほどと学んだり。どんどん自動化されている便利なこの時代に、コミュニケーションなんて無くてもいいのかもしれない。けれど、無くてもいい会話で生まれるものがある。

だからわたしはやっぱり好きで。
温度のあることが好きだな。
そんなことを、今日も。

いただいたお気持ちはあたらしい本に使わせていただきます。よい言葉にふれて、よい言葉を紡げるように。ありがとうございます。