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煮干醤油ラーメン

世田谷の桜新町に魚介の出汁を使ったラーメン屋さん『大八車』がありました。一時期魚介スープのつけ麺がブレイクし、いつも満席で人気のお店でした。


カウンターが5~6席、4人掛のテーブル席が2つの小さなラーメン屋さんです。隣に焼き肉屋さんと蕎麦屋さんがあり、そこがオーナーで残念ながら大八車だけ3~4年前には閉店しています。

家までの通り道、毎日お店の前を通るのですが、食べたいのにいつもチラ見して通り過ぎる毎日でした。

理由はレトロなタイプの券売機だったからです。


以前同じタイプの券売機のあるお店に初めて一人で入って、小さな文字で書かれたメニューボタンに戸惑って迷ってしまい、一人うろたえる私の後ろに並んでいるおじさんに「チッ」と舌打ちをされ、忙しいお店の人にも手間を取らせ迷惑をかけてしまいました。

そもそも券売機に並んだらゆっくりメニューを選んではいけないのが券売機の掟、食べたい物が明確でなければ券売機に並ぶ資格はなかったのだ、とその時はじめて学んだのです。
勝手な思い込みですけど。

以来券売機のお店がとても苦手というより恐怖でした。

今はほとんどタッチパネルですね、何を選んでポチるのか次々に誘導され、望んでいなかったサイドメニューやトッピングまで、まんまと注文する事となり最後にスマホでタッチ決算で終わり!
いい時代になりましたね~
なったのか?(*´・ω・)?


いつもの帰り道、大八車のお店の中をチラ見すると、テーブル席にお客さんが2人いるだけでカウンターには誰もいないではないですか!!
一旦通り過ぎて、よしっと気合いを入れて戻りました。
今なら券売機でつまずいてもきっと大丈夫、中の人も忙しくないだろうし、「チッ」なんてされない、大丈夫!行こう!!

お店に入り、いざ券販売機を前にするとボタンにはラーメンの種類、量、トッピング、飲み物、色々なボタンが小さな文字でずらり、何を選んだらいいのか一瞬恐怖がよみがえりました。

ですが私の後ろに並ぶ人はおらず、厨房のお兄さん2人も私の存在にはどうでもよさそうに話をしていたので、ゆっくりメニューを見て結局一番無難な「煮干醤油ラーメン」だけをポチっとしました。

ここのお店はカウンターに座ると厨房のお兄さんは全く見えず一人黙々と食べる事ができます。隣の椅子との間も適度な距離間があり、ラーメン屋さんに一人で入った事がなかった私はこのカウンターもとても気に入りました。

こってり系が苦手な私には大八車の魚介の煮干しスープは大変好みでした、上に刻んだ柚子がのっているのですが、このちょっとだけ乗せた柚子が煮干しのスープを品よく際立たせていてとても美味しかったです。

柚子が魚介スープに合う事をはじめて知って
冬の和風スープによく使うようになりました。

一人で券売機を克服した事も重なり、超絶ご機嫌でお店を後にしました。

私は一度好きになった物は飽きるまで毎日食べ続ける性質故に、券売機の恐怖を克服した私にもう行かない理由はどこにもなく、次の日もそしてまた次の日も大八車に通う事になったのです。

そして食べるのはいつも煮干醤油ラーメン。
だけ。

通いはじめて1ヶ月位経ったある日、珍しくお店にはお客さんが一人いるだけで厨房のお兄さん2人も暇そうでした。

私がお店に入ったそのとき、

「はい~煮干し醤油~」と小声で厨房のお兄さんがもう一人のお兄さんに指示を出したのが聞こえてしまいました。
私まだポチっとしてないのに、、

一人いるお客さんはもう食べているし、間違いなくその「煮干醤油~」は私の事。

彼らにとって私は、必ず煮干醤油ラーメンだけを注文する「煮干醤油ラーメンの女」と認識されていたのです。

毎回いつも同じ時間に現れ、煮干醤油ラーメンだけを注文、顔も注文する物も覚えられてあたり前、なのに私はとても動揺し、すごくすごーく恥ずかしかったのです。
券売機で舌打ちされるより動揺しました。

次の日職場の同僚に昨日の話をすると笑われました、私は笑いが欲しくて話した訳ではなかったのです、恥ずかしかった私を慰めて欲しかっただけなのです。

それ以来一度も行く事なく大八車は閉店してしまいました。。

年齢と共に私の自意識過剰病はだいぶ落ち着き、だいぶ図々しくなりました。
煮干醤油ラーメン、もう一度食べたかったです。



今よく行くパン屋さんに、特に特徴のない私の好きなタイプのチーズのパンがあるのですが、そのパン屋さんではそのチーズパンだけを買っています。

もしかしたら「チーズパンの女」と言われているのかな、いや「チーズパンのおばちゃん」かな…

ま、いっか。

チーズついでに。
私のレシピの中でほとんどアクセス数がない地下深くに眠るクリップ一桁レシピ ↓↓↓↓↓
もちろん私は大好きなレシピ
たまには人目に出しましょ♪︎よかったら覗いてみてね♡


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