1980年代後半のその先を夢見る極上のポップス mabanuaのアルバムBlurredを聞いて

よいメロディーと音の作りがとっても人懐っこく心にすっと入ってきて、またあまりにその音がすごすぎて時たまゾクッとするような瞬間もたびたび。うわぁこんなアルバムが世にあるんだなぁと聞き惚れてしまいました。

1980年代の後半、ポップス、ロックやソウル、AOR、フュージョンの隆盛もひと段落、さてこの先どこへという爛熟や飽和状態の時期。そんな時期によいメロディーをじっくり丹念に磨き上げてポップスやソウル等でひそやかに聞かせてくれたアーティストがふっとその次代から消え、タイムスリップして現在にひょっこり現れて作り上げたんじゃ、なんて考えてしまうほど。このアルバムには80年代後半のポップスの音を今のサウンドに繋げて発展させたらどうなるんだろうという魅力、夢の先がいっぱい詰まっている感じがしました。

ヒップホップやハウス等クラブやフロアー感覚を通ってきたからこその音やリズム感ももちろんそこかしこに感じられ、ファットな低音にもその感じはバッチリ出ており、昔の音を再現してみましたというのとは全然違う質感はやっぱ今生み出された作品としての魅力を湛えています。

しかしそれをまとめあげた全体の音像に、街のショッピングモールでいい感じの音がなんとなく流れてるなぁというような耳なじみの良い響き、さりげない心地よさ。ちょっとしたキーボードの音色やリズム処理に80's後半のポップやブギーファンクの感じもまたちらほらあってたまらなかったり。今回本腰を入れて歌ったというmabanuaさん本人の歌がまたスィートに気だるくハスキーで大好きな声色だったりと(ZombiesのColin Blunstoneっぽいといったら褒めすぎかな)、惹かれる魅力を挙げだしたらキリがありません。

mabanuaさんはOvallというトリオのヒップホップやジャズ等をやるバンドのドラマー。ソングライターでもあり歌もちょろちょろやったり。アジカンからnegiccoやiri、Michael Kaneko等参加作品を追っかけていくだけでもワクワクな感じに活躍しているお方だそう。そんな彼がインタビューで曰く自分の中から沸きあがるものを大事にメロディーやコード先にありきでその後にオケを作っていったと。それで作られた音がこれなら、やっぱ彼はメロディーメイカーとして本当に素晴しく、80'sを知ってるかどうかはどうでも良いところで自然にこの音に仕上がったことは、聞いてるほうは好きになる想いでいっぱいになるなぁと。

80's後半のポップのその先を繋いで生み出された今の音に宿る桃源郷。これからも愛聴していきたいなぁと思います。


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