現代のペン回し
"ペン回し"
皆様一度はどこかで見かけたことがる、もしくは出来るという人がいるかと思います。
「学生がやる暇つぶし」なんていう見られ方をされがちですが、今ではペン回しも進化を重ね、立派な競技として成り立っています!
この記事ではそんなペン回しの現在の姿を書き連ねようと思います。
ペン回しの技
ペン回しと一口に言っても、色々な回し方を見たことがあると思います。
親指を一回転する技、中指から人差し指へ移動する技など様々ですが、現在の技数はなんと500種類以上、細かく分ければ1000を越えると言われています。
しかもそのほとんどに技名がついています。
代表的な技をいくつかご紹介しましょう。
・親指を一回転する代表技 "ノーマル"
・中指から人差し指へすばやく移動する "ソニック"
・階段のように指を昇っていく "ドラマー"
この技名は勝手に付けていいわけではなく、しっかりした命名規則があります。
基本的には基礎となる技に接頭語・接尾語を付けてその技を修飾していくことで動きを表現します。
●接頭語
基礎となる技の対称の軌道を通る動き - シメトリカル
連続して同じ技を繰り返す動き - コンティニュアス
軸を変えて同じ技を連続する動き - フルーエント など
●接尾語
基礎となる技の逆回転の動き - リバース
また、使う指は番号によって表されます。
●親指=1 人差し指=2 中指=3 薬指=4 小指=5
これらの命名規則に従うことによってほとんどの技は表記することが可能です。
例:中指で行う対称軌道・逆回転のソニック → 3-シメトリカルソニックリバース
ただ、この命名では表現出来ないような新しい動きも日々生まれており、そういった技には考案者が独自に名前をつけるか、考案者の名前が技名に付けられることもあります。
この命名法は1997年に「ペン回しの父」と呼ばれる近藤 英章氏が自身のWEBサイト「私のペン回しの歴史」にて発表したものです。
同氏は「いたずらに技名を増やさないように」という目的で有機化学の命名法を元にこの命名法を発案したと述べていました。
ペン回しの技が広がり始めたのは1990年代後半。インターネットの発達により、全国各地に散らばっていた独自の回し方がネットを介して一つに集約されたことから始まります。
2000年代前半にはペン回しの技を動画付きで解説するサイトが数多く存在しました。
そういった解説サイトで技を覚えて次の世代が育っていったという形です。
現在ではYouTubeで技を解説するチャンネルも増えています。
競技としてのペン回し
ペン回しには日本大会・世界大会があります!
これをお話すると大抵「どうやって競うの?」という返答を頂けます。誰でもそう思いますよね笑
何度も言いますが、ペン回しはネットと共に発達してきた文化です。大会も基本的にはネット上で行われます。
ペン回しの技を滑らかに繋いでいき、10~15秒程度の流れを動画に収めます。これをフリースタイル(以下FS)と呼び、現在のペン回し界ではこのFSを一つの作品とし、その良し悪しで競い合います。
評価は主に
・難易度 - 使われている技の難しさ
・構成 - 構成がまとまっているか
・滑らかさ - つっかかりなどがなく、滑らかに技が繋がっているか
・独創性 - 技やスタイルが創造的で新しいか
このあたりの項目が見られます。また、撮影環境なども評価の対象になったりします。
あまりにもごちゃごちゃした机の上で撮ったり、フレームアウトしていると評価が下がることもあります。
また、編集は基本的にNGで、大会では編集した形跡があると失格になることもあります。
ペン回しという技は非常に不安定な技であり、難易度を上げれば上げるほどその成功率は落ちてきます。良いFSを撮るのは一筋縄ではいかず、納得がいくまで何時間でも撮影します。
15秒のFS一つ撮るのに100時間かける、なんてこともある世界です。
書道のように最強の1本が撮れるまで撮り続ける、自分との戦いです。
日本大会は2008年に初めてペン回し全国大会が行われ、優勝者がメディアに出たりなど、この時期は大きな盛り上がりをみせました。この大会はネット上・オンラインで予選が行われ、決勝大会は会場に集まってオフラインで行われました。
翌年からは「ナランハ」というジャグリングのお店が年に一度"ナランハペン回しフェスティバル"というオフラインイベントを開催し、ここで行われるフリースタイルコンテストが事実上の全国大会という位置づけになっています。
世界大会は2007年から始まり、基本的にネット上でのオンライン大会になります。主催はやる気がある個人がやるというなんとも曖昧なもので、主催者が現れずに結局開催できなかったなんて年もあります。世界のペン回しをまとめる組織がないことが原因ですね。
世界大会には個人戦と団体戦があります。
個人戦はその名の通り個人個人で戦うトーナメント。団体戦は各国6名の代表者が1チームとなって国単位で競い合う大会になっています。
団体戦は予選で決定された代表6名から、1ラウンドごとに4名が出場し、3つのマッチで勝負します。
●第一試合 シングルス - テクニカルテーマ(難易度重視)
●第二試合 シングルス - アーティスティックテーマ(独創性重視)
●第三試合 ダブルス(二人で一つの動画作品を作り、その質で競う)
この3つのマッチがあり、この勝敗数でそのラウンドの勝負が決まります。
シングルスのテーマは毎年微妙に変わり、変わったテーマになる年もあります。
ちなみに日本はかなり強いです笑
中国やタイなど、アジア系が強い傾向があります。フランスは数年に1度それまでの常識を覆すような怪物が現れたりします。
日本は他の国に比べて完成度や構成を重視したり、フランスは個性的なスタイルが多いなど、お国柄が出るのも面白いところですね笑
ペン回しの競技的文化は大会だけではありません。
複数人のFSを集め、音に合わせた編集をつけて一つの動画作品"コラボレーションビデオ(以下CV)"を作る文化があります。
●主催者がCV製作の発表・出演者の募集
→参加希望者が自分のFSを提出
→主催者がそれぞれのFSを審査
→審査に合格したFSのみが採用され、CV公開
というフローで大抵行われ、CVに出演したかどうか、はたまたどのようなCVに出演したかが一つの評価の指標となっています。
ただ必ずしもこの形式が取られるわけではなく、主催者が出て欲しい人だけに声をかける招待制や、提出した人が全員出られる全員参加型などもあります。
昨今のCVは編集技術も非常に高く、動画作品として単純に楽しむこともできます。
ちなみに表示されるアルファベットの文字列は回している人の名前です。
ペン回しはネットと共に発達してきた文化であるため、本名で活動する人はほとんどいません。みんなそれぞれペン回し界での名前を持ち、大会などでもその名前で出場します。
まわしやすいペン
ペン回しをする人(ペンスピナー)が使用するペンは普通のペンではありません。
より高難易度の技を実行するため、ペンを回しやすく改造しています。
一つのペンを元に、他のペンのパーツを継ぎ足してゆき、自分好みの長さや重さ・デザインのペンを作ることができます。
上記のようにボールペンのようなペン先とキャップがあるタイプや、サインペンを元にした左右対称のペンなど、形状も様々です。
改造方はある程度確立されたものがあり、ネット上に多く公開されています。
有名なペンスピナーの改造を真似したり、新たな改造法を編み出したりと、一つの文化になっています。
もちろん改造せずに、未改造にこだわりを持って回しているスピナーもいます。
未改造で回しやすいペンとして代表的なのはPILOTのDr.GripやニトムズのSTALOGY 低粘度油性ボールペンなどが上げられます。
改造ペンだけでなく、専用に開発されたペンもあります。
国内では2008年にタカラトミーから「PEN'Z GEAR(ペンズギア)」、メガハウスから「PENMAWASHI」が発売されました(現在はいずれも廃盤)。
海外ではペンズギア等と同時期に「Spinz」や「Spinsticks」という専用ペンが発売されました。
現在では中国のZhigaoというおもちゃメーカーが30パターンを越える専用ペンを展開しています。また、中国では個人ブランドも複数存在し、文化として進んでいることが伺えます。
現在のペン回し界
現在、日本では「日本ペン回し連盟」が2017年に発足し、月に一度のペン回し教室など精力的に活動しています。
また、この文章の筆者 Kay はペン回しのプロパフォーマーとして活動しており、メディア出演やペン回しのパフォーマンスショー・ワークショップの実施などの活動をしています。
世界では2017年にWorld Pen Spinning Alliance (世界ペン回し連盟) が中国のペンスピナーを中心に発足し、2018年には史上初となるオフラインの国際大会が中国で行われました。
2008年のブームから一度落ち込んだものの、今さらなる発展の兆しが見えています!
私 Kay はこのような発信活動も含めて、これからも幅広く活動していきます!
私の活動を応援してるよ! これからも頑張って欲しい! そんなお気持ちがございましたら是非 "分かりやすい形" でサポートをお願い致します!